カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

海外に同盟者をつくることを全くしようとしない亡国的日本政府/それはまるで王莽王朝のような

内田樹の研究室」から

http://blog.tatsuru.com/2006/11/29_1116.php
〔略〕翻って、わが国政府はこれまでそのような広報・文化交流のための機関を設立するために何をしてきたのであろう。私は寡聞にして「国際松下村塾」とか「適塾インターナショナル」とか「漱石インスティチュート」とかいうものがあることを知らない。あるいは文科省はすでにそのような海外機関を設置しており〔略〕広報活動を全世界的に展開しているのかもしれない。いや、当然、そういう活動があるに違いない。なくては困る。単に私ひとりがその名称も活動内容も知らなかっただけであろう。
だが、私が知らなかったということは、たぶん日本人の80%くらいは、そのような広報機関の活動について十分な知識を持っていないということである。自国民の80%にその機関の活動について周知徹底させることのできない広報機関が外国民に対してのみ選択的に活発な広報活動をしていると推論することは困難である。
日本政府は日本文化や日本の国際関係論的立場について海外の方々に理解していだくことにははあまり(ぜんぜん)熱意がないようである。だが、海外の若い世代への教育投資はきわめてコスト・パフォーマンスのよい「国防」戦略なのである。ジェット機一機、イージス艦一隻を買う金があれば、アジアの全域に「日本語日本文化を学ぶ機関」を設立することは可能である。そこで育った日本語を読み、日本文化に親しみ、日本に知己を持つ人々の世代が将来の外交関係にどれほどのメリットをもたらすか、そういう計算に日本の政治家たちも官僚もまるで興味がないようである。
この点ではイギリス、フランス、ドイツといったかつての帝国主義国家の植民地経営の「狡猾さ」には歯が立たない。台湾、朝鮮、インドシナ、南太平洋での植民地経営の経験から日本人は何も学ばなかったのである。
中国人は1840年から110年にわたる帝国主義列強による国土の植民地化経験から、いくつかの重大な歴史的教訓を得た。この差はおそらく私たちが考えている以上に大きい。それは「アセッツ」というものの力の評価の差である。中国人はかつて「買弁資本家」というかたちで植民地宗主国の「アセッツ」となった売国奴たちによって国力を致命的に殺がれた。その恨みは骨身にしみているはずである。だから中国に親和的な「アセッツ」を全世界に配備することにどれほど戦略上の重要性があるか、彼らは熟知している。
かつて中国はロシア社会主義圏と世界各国の「毛沢東主義者」という巨大な同盟者を持っていた。それがどれくらい強力な支援者であったのか、そのようなものを持ったことのない私たちには想像がつかない。現に私たちは「天皇陛下(あるいは安倍晋三)の名において自国政府の対日政策を批判する中国人」というものを決して想像することができない。だから、私たちは「毛沢東」がどういうイコンとして中国人の眼に映っていたのかを構造的に想像することができないのである。中国人は毛沢東社会主義圏の同盟者を失った。それに代わるものを再構築しなければならない。「孔子学院」はその「新しいタイプのアセッツ再構築戦略」の一環であると私は思っている。
日本政府はこのような戦略の重要性をほとんど理解していない。それは日本が本当の意味での「同盟国」も「自国政府よりも日本を支援する海外盟友」も持ったことがないということにたぶん関係している(アメリカは「同盟国」ではない、「宗主国」である)。このビハインドはアジアにおける日本と中国のヘゲモニー争いに致命的な影響をもたらしつつある(というか、もう勝負はついているのかも知れないが)。しかし、そのことを真剣に憂慮している政治家を私は知らないし、メディアもほとんど関心を示さない。

内田樹氏のこの言説は、私の「国防論」http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050129#1107020504と全く合致する。日本は国内の情報統制にだけ病的に熱心であり、国外へのメディア戦略は全く幼児のごとき痴呆である。日露戦争以降の日本の為政者は痴呆ぞろいだったようだ。安倍晋三の痴呆ぶり売国ぶり亡国ぶりはわけても群を抜いているが。
日本の為政者達は日露戦争とはつまりメディア戦であったhttp://d.hatena.ne.jp/kamayan/20051206#1133810677という歴史的事実すら忘れている。というより知らんのかもしれん。
そして日本が世界に日本ファンを作るための重要な知的資源であるオタク文化を日本は潰しすり減らし磨耗させている。アホか。
その一方で「防衛庁」を「防衛省」にするなんていう、2000年ほど前に中華大陸で「新」帝国の王莽という痴呆君主がしたのと似た政策をしている。念のため解説すると、王莽という奴は国内情報戦だけに特化した能力を持った政治家で、「予言」を捏造して国内世論を盛り上げて漢王朝から帝位を簒奪した。王莽は儒教原理主義者で、改名マニアで、官職名や外国の呼称を儒教思想の序列解釈でもって改名するということだけにエネルギーを注いだ。そんなことにだけ熱中して、政治能力は全くの無能だったので王朝は混乱しまくり、あっという間に亡んだ。
たぶん末期自民党王朝もそう遠からず亡ぶだろうけど、どこまでが道連れにされるのかが問題である。こいつらの父親だの祖父だのは揃いも揃って60年ほど前に自分達の地位を温存するために日本国民を大量に殺戮した連中で(少なくともサイパン陥落時点で戦争は敗戦が決定したので、それ以後の戦死は全て当時の為政者に責任がある。東京大空襲被災もその一つ)、しかも70年前の愚行を再演しているのに、このボケ倒しにツッコミがほとんど入っていない。
関連
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20061020#1161294466
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060708#1152293970
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060430#1146379685
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060920#1158688652
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20061006#1160074967

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