島泰三『はだかの起源』『サルの社会とヒトの社会』
島泰三は名文家だ。『はだかの起源』は、人類がいつなぜ毛皮を捨てたかについての考察。アクア説への反論がリアルで面白い。…とはいえ、「いつなぜ毛皮を捨てたのか」の結論、若干読み取りにくい。リンクを見たら誤読している人も見かけた。筆者の下した結論は後期旧石器時代(20万年前以降、5万年前以前?)になってから、火・家といったものを作ってから、環境に不適な「毛皮のない」人類が生き延びることが可能になった、というもの。筆者の結論ではネアンデルタール人は毛皮に覆われ、言葉を持たなかった。「毛皮のない」突然変異と「声を出す」突然変異はともに環境に不適だが、重複する偶然により不適者の生存が可能になった、と筆者は結論している。
『サルの社会とヒトの社会』は同族殺しの観察と考察。サルの「子殺し」は人間がサル社会に介入することで発生する。では人間の社会の「子殺し」は? この本は日本の霊長類研究史にもなっている。「『テキストブック〔教科書〕・オブ・ニホンザル』はまだか?」が島泰三の抱える課題。それに習うなら、「『テキストブック・オブ・表現規制』はまだか?」
- 作者: 島泰三
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- 作者: 島泰三
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『ローマ人の物語』
枝野幸男議員が『ローマ人の物語』を読んで面白かったと、たしか講演で以前話していたので、読む。現在文庫版の19巻目。
17・18巻の主役、2代皇帝ティベリウスに感情移入する。色んな意味で。ちょっとだけ雍正帝を連想した。全然違うけど。
8巻から13巻の主役がユリウス・カエサルなのだが、こういう人物を欧米人はロールモデル(御手本)にしているんだなあ、と、感じ入る。中国史や日本史には類型のいない人物だ。
カエサルの一世代前のスッラなら中国史にも登場しそうだが。信じられないほどの大英雄として。スッラが主役な6巻をなぜか何回も紛失している。
5巻までの戦史、ローマ軍がひたすら補給線確保しているのが印象的。戦争とは補給である、というのがローマ軍の強さらしい。この発想が第二次大戦での日米の明暗に繋がる。
以上、メモ。
枝野議員の名前を書いてしまった連想で以下書く。政治には図々しさとしつこさ、分かっていると思うことでも改めて確認する作業と、それに相手を付き合わせる図太さが必要。私にはそれが足りない。
ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)
- 作者: 塩野七生
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