カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

右翼と左翼、どっちがつおい?

AMI19歳「右翼と左翼って何?」
カマヤン「いきなりどうしたんだい?」
AMI19歳「2chってところを見てたら、ウヨがどうのこうの、サヨがどうのこうのと、互いに罵り合ってたの」
カマヤン「ふむ。右翼・左翼ってのは色んな意味で使われているから、日本政治をマジメに考えるときには、少なくとも日常の延長では使わないほうがむしろ無難なんだけど…。
 説明してみよう。まず、現在の民主政治の原点は1789年のフランス革命にある。この議会で、議席の左翼に革新派が、議席の右翼に保守派が座った。これが右翼・左翼という言葉のスタートだ。
 左翼は人間の理性を信じている。社会は人間の理性によって良い方向に変更可能だと考える。
 右翼は人間の理性をあまり信じない。理性なんてものはしょっちゅう間違える。それよりは長い年月を経て洗練された伝統のほうが信頼できる」
AMI19歳「どっちも一理あるね」
カマヤン「経済学のほうでは、より平等を志向するのが左翼。そうではないのが右翼。
 左翼の典型が社会主義共産主義だ。冷戦の頃は、左翼は社会主義、右翼が資本主義だった。左翼社会主義と右翼資本主義の闘争はだいたい150年くらい続いたかな」
AMI19歳「今はもう社会主義の国ってほとんどないんでしょ? ソ連がなくなって、ベルリンの壁が崩壊して」
カマヤン「冷戦が終わった時点で『右翼』『左翼』という言葉は再定義を迫られた。イギリスのブレア、アメリカのクリントンなどリベラル政権が『第三の道』路線を打ち出したりした*1
AMI19歳「第1と第2は? 右翼と左翼が第1と第2?」
カマヤン 「ちょっと違う。イギリスの場合、第二次大戦後、労働党政権によってケインズ政策が行なわれた。資本主義のまま社会主義国家に負けない福祉政策を行なう、という路線だった。これが第1の道。政府が国民の面倒を看るため税金を使い過ぎてあっちもこっちもムダだらけになった。
 サッチャーの保守党政権では政府の機能をスリム化し、市場競争原理により委ねた。同時期にアメリカではレーガン共和党政権が似た政策を行なった。これが第2の道」
AMI19歳「ケインズ政策って、右翼なの? 左翼なの?」
カマヤン「ソ連共産党から見たら右翼。イギリス保守党アメリカ共和党から見たら左翼」
AMI19歳「ややこしいね。…日本の場合だとどうなるの?」
カマヤン「日本はまたちょっと独特な歴史があって…どの時点から話せばいいかな…。
 1955年に、それまでの保守政党が合体して自由民主党が生まれた。一方、革新政党が合体して日本社会党が生まれた。これ以降を55年体制と言う。一応、自民党が右翼、社会党が左翼になる。共産党はもっと左翼」
AMI19歳「なぜ『一応』なの?」
カマヤン「自民党の経済政策は主にケインズ政策だったから、イギリス労働党程度には左翼政党だったという評価もできる。
 また、日本の右翼左翼はむしろ政党以外の院外での活動にエネルギーを注いだ。
 60年安保の全学連とか、70年安保の全共闘とか。学生運動ってやつだね。これが戦後左翼の主流だった。学生運動は、とくに全共闘は選挙にはあまり力を注がなかった。ブルジョア体制を是認することになってしまうから選挙は拒絶する、それよりも直接行動を、つまりデモとかそういうのを尊んだ。これが暴力主義に変質していくと『極左』となる。
 一方、左翼学生運動に対抗する右翼側の…学生運動って呼ぶべきかどうかちょっと判らないけど、動きもあった。国粋主義系の学生組織・複数の暴力団・『生長の家』などの新興宗教、これらが右翼側の集団として、左翼学生運動に対抗した。彼らを集めたのは児玉誉士夫笹川良一といった人々だ。
 右翼の思想は、国粋主義、伝統主義、愛国主義保守主義。日本の場合はこれにプラスして親米主義。
 左翼の思想は、国際主義、平等主義。日本の場合はこれにプラス反戦平和、護憲主義」
AMI19歳「国粋愛国だと自動的に親米主義なの?」
カマヤン「戦後右翼の黒幕である児玉誉士夫笹川良一のスポンサーはアメリカだったからね。まあ思想的には変な話だけど。
 冷戦期には左翼のスポンサーは中国やソ連だったみたいだ。自分は左翼のほうはあまり詳しくないんだが」
AMI19歳「冷戦が終わった後の日本の右翼左翼は?」
カマヤン「右翼も左翼も戦後ずっと分裂が続いていたんだけど、右翼のほうは1997年に『日本会議』という日本最大の右翼組織が発足した。『新しい教科書をつくる会』とか『北朝鮮拉致家族を救う会』をバックアップしている組織だ。『キリストの幕屋』や『神社本庁』といった宗教団体が複数参加している。憲法改正教育基本法撤廃、『自虐的ではない、誇りを持てる日本史の教科書の作成と採択』といったことを目標にしている」
AMI19歳「なぜ教育基本法を撤廃したいの?」
カマヤン「『教育勅語』を復活させたいみたいだ。『教育勅語』を経典にしている新興宗教もあるしね…。『教育勅語』は、戦前、道徳の手引きとして作られた」
AMI19歳「道徳教育は必要なんじゃないの?」
カマヤン「そうかな? 天皇のために死ぬことが美徳だ、と教えることが、望ましい道徳かな? 天皇は神の子孫で日本は神の国だと自惚れさせることが望ましい道徳教育かな? 国家のために犠牲になることが美徳だと教えることが、望ましい道徳かな?」
AMI19歳「え…道徳ってそういうものなの? あたしの考える道徳とはだいぶ違うんだけど…」
カマヤン「そもそも、学校教育に道徳教育は必要かな? 学校は知識を効率的に伝授する、学問することに徹底するべきで、道徳規範は別なところが受け持つべきじゃないかな?」
AMI19歳「左翼はそう主張しているの? 学問することに徹底するべきって」
カマヤン「いや。全然。知識偏重教育はよくないとか、習熟別学習はよくないとか。教師が名札をつけるのはよくないとか」
AMI19歳「右翼も左翼も脳味噌腐ってんじゃないの?」
  補足 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050218/1108669062

*1:

第三の道―効率と公正の新たな同盟

第三の道―効率と公正の新たな同盟