カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

『マスコミ市民』へ載せた文章

『マスコミ市民』へ載せた文章

「エネルギー問題」という補助線から見る「北朝鮮問題」
     鎌倉圭悟
 二〇〇二年九月一七日以来、北朝鮮を巡る言説は「異様な論理」に満ちている。対北朝鮮強硬論は明らかに論理性を欠いている。客観的には拉致問題を解決させないよう動いている。情緒的な言葉の連呼が無理矢理その不整合を押し隠している。理性を欠いた行為には、その奥に合理的背景があるはずだ。その背景を想像してみたいと思う。
 キーワードの一つは「エネルギー問題」だ。田中角栄の失脚の原因は、アメリカを介さず中東へエネルギー外交をしたためだとも、中国へ接近しすぎたからだとも言われている。世界の全ての地域が中東に石油を依存しているかのように私たちは錯覚しがちだが、数字で見てみよう。輸入原油の中東依存度は、日本八五・七%、フランス二八・六%、アメリカ二二・八%、ドイツ一〇・七%〔一〕。日本の中東石油依存は先進国中、突出している。中東からの原油は、「石油メジャーズ」すなわち英米資本の大手石油会社を介して日本へ売られている。日本への原油供給者は送主別で見ると、「石油メジャーズ」二四・二%、産油国政府国営会社二六・七%〔二〕。日本のエネルギーは英米資本に今でも首根っこを掴まれているわけだ。これは国防的には最も重要な論点の一つだと私は考える。
 歴史を振り返ろう。戦前から日本はアメリカに石油依存していた。日本海軍は軍艦を維持するのに石油が必要だった。民衆生活には石油は使われていなかった。軍艦は港に浮かべておくのにすら石油が要る。日本の軍事はアメリカに依存していた。太平洋戦争でのアメリカの勝因は第一にこれに求めることができる。太平洋戦争で米軍が沖縄を占領したのは、沖縄は、東京を含む東アジアの主要都市への爆撃基地として重要だからだ。沖縄を制した者が東アジアの制空権を得ると言っていい。余談ながら日中戦争当時、英米は日本と中国と双方に軍事物資を輸出してた。日本が「戦時」になると、アメリカは「中立法」という国内法を発動し、日本への輸出が止まる。日中戦争で日本が中国へ宣戦布告をしなかったのは、それを恐れたからだ。日本をエネルギー的に独立させない政策は、アメリカにとって国防戦略の基本だろう。
アメリカからの横槍さえなければ、資源のない日本のエネルギー問題は、実は解決の目処がある。ロシアからの天然ガスパイプラインが朝鮮半島を通って日本にまで達すると、日本のエネルギー問題はほぼ解決する〔三〕。ロシアは世界に冠たる石油産出国だ〔四〕。アメリカからエネルギー的に独立できるようになる。原子力発電所も存在名目を完全に失う。
 「家族会」の蓮池透東京電力の関連会社「動燃」の職員で、プルサーマル計画にも関係している。蓮池透の「家族会」活動のスポンサーは、東京電力だ〔五〕。ブッシュ政権は、北朝鮮と日本との回路を断ち切り、両者の関係を険悪にし臨戦体制にすることを望んだのだろう。アメリカ製兵器を高価で買わせる口実ができる。アメリカにとって世界一安価な基地である在日米軍基地を置き続ける口実も得ることができる。
安倍晋三の主張する北朝鮮への《日本だけ》「経済制裁」は、国防上、愚策中の愚策だ。日本が北朝鮮へ対し一切影響力を行使できなくすることを意味する。安倍晋三の後ろの勢力北朝鮮へ日本が影響力を行使することを望んでいないのだろう。
 原子力発電は「多様なエネルギー源を」という名目で建設されたが、実際には潜在的核武装能力保持のために存在する〔六〕。核武装論は、現実的には全くナンセンスだ。第一に核戦争は国土の広い者勝ちだ。第二に自然界の風は原則的に西から東に吹いている。中国や北朝鮮と核戦争をした場合、日本は核に侵される。第三にヒロシマナガサキを経験していない欧米の軍事専門家は案外に核汚染の現実を知らないで核戦略・核戦術を練っている。第四に、実戦では「敵」は核ミサイルを使う必要がない。日本の大量にある原子力発電所の近所にラーメン屋を作ればそれでいい。原発職員が出前を注文した時に内部に入り込み、職員を殺し炉心を暴走させれば、核兵器を使用したのとほぼ同じ効果を得ることができる。リアルな戦争を考えた場合、「敵」は高価な核兵器なんか作る必要は全くない。日本の原発を暴走させれば日本に存在する米軍基地も使用不可能になる〔七〕。原子力発電所は国防上全く無意味ばかりか有害だ。日本の軍事予算は世界二位、年間五兆円だ。この予算は杜撰な運用で、アメリカ軍需産業に横流しになっている〔八〕。そして第五に、核兵器はブラフとしては高価に過ぎるし実効性も乏し過ぎ、そもそも国防に使えない。
 日朝平壌宣言は「日米二国間主義症候群」から脱却し、他国間外交政策に日本が転換するきっかけとなりえた〔九〕。日本が「独自外交」をしないようアメリカが後ろで動いたのが北朝鮮バッシングだと考えていいだろう〔十〕。折り悪く冷戦後、外交選択肢が増えた時点で、小泉政権は親米追従以外の選択肢を排斥してしまった〔十一〕。もちろんアメリカと利害が一致する日本国内勢力との合作の側面も大きいだろう。「救う会」「つくる会」の実体は、改憲団体「日本会議」だ〔十二〕。「救う会」新潟を牛耳る水野孝吉は、広域暴力団住吉会系右翼「日本青年社」の幹部だ〔十三〕。北朝鮮をめぐる利権を独占したい右翼勢力朝鮮総連などを排斥した、というのも一つの側面だろう。
 「日本青年社」や「日本会議」は尖閣諸島でも名前を散見する。尖閣諸島も油田などの有望な天然資源が埋蔵されていると言われている。中国による天然ガス採掘は、中国企業二社と米国ユノカル社と、「ロイヤル・ダッチ・シェル」の合計四社が請け負った〔十四〕。尖閣諸島問題が「エネルギー問題」であることが明らかになったのは、ごく最近のことだ。だが「日本青年社」は以前から「エネルギー問題」関連の利権を狙って行動していたように私には思える。
 北朝鮮や中国を巡る言説は、多くの事柄が国民の目から隠されたまま、情報はそれぞれ無関係であるかのように情緒的に加工され断片的に配信されている。断片的情報も有機的に繋ぎ直せば、ワイドショーが連呼しているのとは全く異なる姿が見えてくる。
 ロシア極東天然ガスパイプラインは、北朝鮮、韓国を通じ、日本へ至る計画になっている。支線として中国・大慶へ至る。エネルギーを通じ、東アジア世界が一つになる大イベントだ。おそらくは日本の多くの企業も関わっているだろう。このルートはかつて日中戦争時・日露戦争時に日本が侵略を行った土地でもある。「北朝鮮」問題は、瀋陽奉天)の脱北者事件が始まりの一つだった。日中戦争当時の地名が不思議なほどニュースに近年登場する。日中戦争当時からの日・中・朝・韓の人脈が世襲され受継がれているとも聞く。「彼ら」が日中戦争当時のごとく自作自演と謀略を行っている可能性を、私たちは真剣に警戒をする必要があるだろう。今度こそ「彼ら」の謀略に負けぬよう、私たちは勇気を持って情報戦に対峙する必要があると考える。同じ間違いをするほど、私たちは愚かではないはずだ。

〔一〕『日本国勢図会 二〇〇四/〇五』一一五頁。
〔二〕同前、一一一頁。「石油メジャーズ」は、ロイヤル・ダッチ・シェル(英・蘭)、エクソン・モービル(米)、シェブロン・テキサコ(米)、BPカルテックス(英)、トタール(仏)、の合計である。
〔三〕針生若人「『天然資源戦争』の行方」『SPA!』(扶桑社)二〇〇五年一月二五日号。一一三頁〜一一五頁。朝鮮半島を経由せずサハリンから日本へ天然ガスを送るルートもある。鈴木宗男が政治的に潰されたのも、サハリン天然ガスパイプラインが背景にあったのかもしれない。
〔四〕世界の天然ガス生産量は、一位ロシア(二一・九%)、二位アメリカ(二一・六%)、三位カナダ(七・一%)、四位イギリス(四・五%)、五位アルジェリア(三・五%)。ロシアは世界有数の原油輸出国でもある。『日本国勢図会 二〇〇四/〇五』一一三頁、一一七頁。
〔五〕蓮池透東京電力については『噂の真相1月別冊 日本のタブー』(噂の真相、二〇〇四年)二一頁。拉致家族には原発関係者が多いようだ。〈拉致問題〉には原発問題、原子力問題が関係しているようだ。
〔六〕山口俊明「防衛庁サイドの極秘レポートが報告する『東海原発で原爆二十発』の恐怖!」『別冊宝島八一 原発大論争』JICC出版局、1988年。この中で昭和五十六年三月三十日参議院決算委員会で社会党野田哲議員が暴露した、『わが国における自主防衛とその潜在能力について』という文書が紹介され、以下の引用がある。「現在の東海炉の運転方法を変えるだけで、毎年二〇発程度のプルトニウム型原爆の材料は入手できるのである」
〔七〕テリー伊藤青山繁晴『お笑い日本の防衛戦略』飛鳥新社、2001年。
〔八〕天木直人のサイトhttp://amaki.cocolog-nifty.com/ 1月24日 05年第17号 「自衛隊装備のブラックボックス」より以下引用。「世界で最も高価な戦闘機であるF-15を日本は約31億円のところを約108億円で買わされている。〔略〕戦闘ヘリコプター「アパッチ」は米軍だと約16億円だが、自衛隊はこれをなんと約72億円も払っているというのだ。〔略〕米国は日本に兵器開発費を転嫁させているのだ。そして日本の防衛企業は防衛庁から儲けさせてもらっているのだ。その見返りに防衛庁はこれらの企業に天下りのポストを要求しているのだ。言い換えれば天下り官僚の人件費を税金を使って兵器の代金に上乗せしているのだ。兵器の輸出入は機密保持を理由に政府間で一方的に決定される。」
現実的な防衛論は、仮想敵国へメディア進出し、日本製の娯楽映像をガンガンに流すことだと私は考える。アメリカはハリウッドでそれを行っている。日本のメディアはCIE以来、アメリカ戦略に従属しているようだ。
〔九〕姜尚中『日朝関係の克服』集英社新書、二〇〇三年。一七九頁。
〔十〕「日韓の北への接近を阻止するための米のウソ」『田中宇の国際ニュース解説』http://tanakanews.com/f0125axis.htm「日本政府は拉致問題を解決しようと小泉訪朝を挙行したものの、その後米朝間で核問題が持ち上がった後、急速に北朝鮮に対して再び敵対的な態度をとっている。日本政府の態度の変化に合わせるように、日本のマスコミに北を敵視する論調が急増し、国民の多くもこれに乗せられた結果、日本では北朝鮮に対するヒステリックな敵視が支配的になった。これはどうやら米中枢のタカ派勢力が好戦的な政策を行うための誇張戦略の影響だったらしいということは、私〔田中宇〕も最近になって分かってきた」。神浦元彰(軍事アナリスト)の五月十二日記事も参照。http://www.kamiura.com/new.html
〔十一〕佐藤優国家の罠』(新潮社、二〇〇五年)によると、九一年冷戦終了後、外務省は「親米派」「チャイナスルール」「ロシアンスクール」に派閥が分かれた。田中真紀子外相により「ロシアンスクール」が排除され、田中真紀子更迭により「チャイナスクール」が排除され、日本の外交選択肢が客観的には豊かになった「ポスト冷戦後」の外交を日本は、限りなく「冷戦の論理」に近い外交理念で対処することになった。五四〜六〇頁。一一八〜一一九頁。二九二〜二九九頁。
〔十二〕「日本会議」については以下参照。http://www.h2.dion.ne.jp/~kyokasho/0_conb07.htm (「日本の戦争責任資料センター」事務局長・上杉聰) 「日本における〈宗教右翼〉の台頭と〈つくる会〉〈日本会議〉」。「つくる会」「救う会」「北朝鮮拉致家族を救うブルーリボンキャンペーン」の支部住所は、「日本会議支部と重なる。多くは「神社本庁」を支部としている。「日本会議」は新興宗教団体と旧軍関係者団体が合流し、九七年に発足した。「日本会議」の現会長・三好達は、最高裁判所長官時代に司法予算を横領し、タイ・フィリピン・韓国出張の観光費に使った人物だ。「日本会議」の有力構成団体としては、「神社本庁」のほかに、毎週サンケイプラザで集会を行っている「キリストの幕屋」、「生長の家」系の「日本青年協議会」、九〇年にマンガ規制運動を起こした仏教系新興宗教「念法真教」などが数えられる。
〔十三〕水野孝吉と「日本青年社」については『フラッシュ』二〇〇四年八月一七・二四日合併号。「日本青年社」と住吉会については、第一三六回国会参議院地方行政委員会 平成八年六月六日共産党有働正治の質問への植松信一の答弁「日本青年社最高顧問西口茂男と住吉会会長の西口茂男については同一人物と見ております。」、第一五〇回国会国家基本政策委員会合同審査会第二号平成十二年十一月一日共産党不破哲三の質問。「この日本青年社というのは、政府公安調査庁が提供した資料によりますと、暴力団住吉会小林会を母体とする典型的な暴力団右翼団体だと、そう規定をされています。」
〔十四〕http://www.tokyo-np.co.jp/00/kei/20040528/mng_____kei_____004.shtml