カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

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『下流社会』と『不平等社会日本』

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会』を読み終えた。読んでいる間は面白かった。学術的深みはない。「SPA!」に載っていたらその記事を受け売りすると職場で受けがいい、という内容だと思う。そう悪い本ではないが、ベストセラーになるべきほどの本ではない。いわゆる便乗本の一つと言っていいと思う。
「意識調査」を元にした階層論は、昔「総中流社会」という「幻想」(偽りのリアリティ*1・「バーチャルリアリティ」)を浸透させることで、リアルな社会論を阻害した先例があるが、それと同じ傾向の本だと言えるかもしれない。
新「階層」論は、佐藤俊樹『不平等社会日本』から始まった。佐藤俊樹『不平等社会日本』はそれまであった「総中流社会」という「幻想」を崩した。SSM調査から親の学歴・収入・職歴と、子供の学歴・収入・職歴の相関関係を抽出し、団塊世代から階層の「固定化」が再び始まった、という事実を佐藤俊樹は発見した。そこから新たな「階層」論が生まれた。
が、「階層」に着目せず、自己責任論的「下流」論にそれを変質させたいという意志がかつて「偽りのリアリティ」を吹聴していたところから働き、この三浦展下流社会』もそのような役割を果たそうとしているように思える。
繰り返すが、佐藤俊樹が発見した「階層の固定化」は、若年世代の努力では階層間落差を解消できない、ということを意味する。自分の努力では階層間格差を解消できない社会で、「下層」「下流」に生まれたものに「意欲」がない(ように見える)のは当然なのに、「本人の努力では解消できない」ことを「本人の意欲」の問題に回収している点で、三浦展のこの本は悪質かもしれない。
宮台先生についての言及もあるので、宮台先生が「反応」したのはそこのところになんだろうね。で、三浦展による宮台批判は辛辣だが、正鵠を射ている。
この本で、「団塊ジュニア」世代の親が団塊世代ではなく、団塊世代の子供は第二次ベビーブームが終わった後の世代だ、ということを知って、それには「へー」と思った。日本最大のボリュームを持った世代は半分程度しか子供を作らなかったのかな。むしろそこのところを調査した報告を読みたいところだ。どんな自己イメージを持っているかなんて意識調査なんてどうでもいいから。

まとめ

佐藤俊樹『不平等社会日本』を読むべきである。

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)

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*1:

人間を幸福にしない日本というシステム (新潮OH!文庫)

人間を幸福にしない日本というシステム (新潮OH!文庫)

   『人間を幸福にしない日本というシステム』毎日新聞社 19-20p から「われわれがもっと活用すべきもう一つの概念 concept を紹介する。『偽りのリアリティ false reality 』という概念である。〔略〕偽りのリアリティは、大多数の人に、たいへんもっともらしく見える。一見つじつまが合っていると思わせるからだ。独裁国家全体主義国家は、つね日頃から一連の思想を入念に創作し、それが同時に、偽りのリアリティをかたちづくっている。そして、その偽りのリアリティが、今度は、独裁制全体主義のシステムを支える基盤となる。北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)では、人々はそこが労働者の天国だと絶えず教え込まれている。ソ連の被支配者 subject たちは、最後まで、そこが世界で最も進んだ福祉国家だと聞かされていた。」