カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

『洗脳原論』

部屋の中に埋もれていた『洗脳原論』をようやっと発掘できた。大急ぎで再読した。

洗脳原論

洗脳原論

以下、抜粋引用する。

第5章 アメリカ〈洗脳〉事情

心理療法の発展

洗脳の研究は、ベトナム戦争時に飛躍的に進んだ。(156p)
PTSDに陥った兵士を大量に治さなければならない必要に迫られたとき、それまでの治療に時間を要するフロイト派やユング派的な方法論に比べて、エリクソン派が改良した「インベーシヴ」(invasive)、つまり「介入的」と呼ばれるやり方のほうが、早期に治療できると医師たちは考えはじめた。(157p)
ベトナム戦争以降のアメリカでは、深い変性意識を引き起こす技術と、その状態から記憶に働きかけ、意識にまで介入するありとあらゆる新しい手法が一気に花開いていった。(158p)

現代カルトの起源

他方、精神療法の手法は、LSDマリファナを代表とする西海岸のニューエイジ・ムーブメントにも強い影響を与えた。知識を得たセラピストのなかに、それを宗教やLSDの世界に応用するものが現れはじめたのである。〔略〕
ドラッグ・カルチャーとしてのミニカルトにおいては、テクニックは精神療法のものだが、そこにLSDが介在する。
そもそもニューエイジ・ムーブメント全体のはじまりはLSDであった。〔略〕
LSDはアメリカではのちに、〔略〕さまざまな理由から法律で禁止された。その本当の理由は明らかになっていない。ただ、暴力団の資金源というのは説得力がある理由である。マイクログラム(100万分の1グラム)単位という極少量で効くので、日本でもときどき行われているそうだが、切手の裏側にちょっと染みこませれば、相手は、配達された封筒に貼られた切手を舐めるだけでトリップできる。刑務所に入っている人間でも、手紙を送るだけで入手が可能で、社会のどこにでもドラッグが運ばれてしまう。(159−160p)
LSDをやるときは絶対ひとりでしてはいけないという鉄則があり、大抵はパートナーがトリップのあいだ横につき添っている。この鉄則は、マリファナの場合にも適用された。LSDが強烈な光の体験やサイケデリックな多次元宇宙の体験を誘発する、まさにニルヴァーナ体験そのものの幻覚剤であったのに対し、マリファナは起承転結のストーリー性のあるトリップを行なうためのドラッグであった。その意味でマリファナというドラッグは、瞑想や自己開発を目的とするLSDとは違って、ミニカルトのなかでトリップ自体を楽しむものとして使用され、吸引時には必ずリーダー的役割を果たすトリップ・マスターと呼ばれる人物が同席した。(161p)
アメリカの大学には、トリップ・マスターとしてのカルト的なリーダーが結構いる。(165p)

宗教カルトの誕生

ドラッグは基本的に、脳内伝達物質のフィードバック系に影響を与えることによって、効果を生みだしていると思われる。したがって、それと同じ作用はドラッグなしでも得られる。その一例が精神療法の介入的方法である。(166p)
歴史に残る最も凶悪なカルト教団が、アメリカから南米ガイアナに移住し、大規模なコミューンを形成した人民寺院であろう。信者の財産を私物化しているなどの指摘があって議員らの立ち入り調査を受けた際、教祖ジム・ジョーンズは内部不正の発覚を恐れ、一九七八年11月20日、教団施設内で議員らを殺し、900人の信者を服毒自殺させ、みずからも命を絶った。教祖は晩年麻薬を濫用していたらしいが、実はCIAの手先だったという噂もあった。その噂の根拠はふたつあり、当時CIAは洗脳に関する新しいデータをとりたかったこと、どこかでカルト的テロリスト的な犯罪が起きていないと、自分たちの予算が削られるおそれがあったことがあげられるが、あまりにも無残な最期を遂げたカルトをどう理解すべきか苦しむ人々が作り上げた仮説がひとり歩きした意見であろうと思う。(167p)

統合される宗教カルト

ところで九〇年代に入ってからは、アメリカにおいて、こういったカルトが巨大な組織に吸収されていく傾向があるように思われる。それは大きくいって二つの団体が中核となっているようである。ひとつは、キリスト教系から派生した統一教会、もうひとつは、七五〇〇万年前に水爆で死んだ宇宙人の霊が人類にとりついているとする、まったく新しい教義を持つSF作家が開祖であるサイエントロジーといわれている。(169p)

ニッポンの危機

アメリカ社会では、精神科医は日本の歯医者のような存在である。〔略〕アメリカ人は予防的にも通うし、それどころか欝がひどい状態で行ったりすると、虫歯を放っておいたときのように、「どうしてこうなるまで放っておいたのか」と不思議がられてしまう。〔略〕日本には「癒し」の役割を果たす人間がほとんど存在しないのである。〔略〕この点は、いま最も日本社会に危惧を感じているところである。(170−171p)
神秘体験と称する変性意識の快感にとらわれているオウムの信者はきわめて多い。ドラッグ中毒といってもいい。その意味では、あえて洗脳されたい人々の集まりがオウムなのである。(206p)

第6章 私の脱洗脳論

洗脳から日本を守れるか

最近、オウムだけでなく、その他のカルトやセミナー団体も次々と問題を起こしている。そのとき必ず誰もが疑問に思う、――なぜあそこまで、あんなばかげた集団にはまってしまったのか。
その答えは、洗脳手段が簡単にカルト集団の手に入るようになってしまったからである。〔略〕
洗脳されるかどうかは、その人が洗脳されやすいかどうかによるのではない。洗脳者自身の技術がいかに進んでいるか、用いられた技術が生得的にその人に有効であるものかどうかにかかる。(207p)

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