カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

田舎の生活とか、政治関係とか、表現規制のこととか、狂乱している老母との生活とか

岡義武『近衛文麿』岩波新書、1972年

日本現代史上最凶のヘタレ、『近衛文麿』について伝記風にまとめたもの。近衛文麿がいかに決定的なところで決定的に無責任に振舞い、グダグダと15年戦争へ日本へ引きずり込んだか調べるために読んだ。筆者の記述は冷静で、正確であるように思える。日本現代史はクソの見本のような人物群ばかりだが、近衛文麿はその中でもかなり極めつけの人物だ。現在の日本の政治家でいうと、福田康夫とか鳩山由紀夫当たりが性格的に近いだろうと思われる。陰湿で腰抜けで無気力なところが似ている。
余談だが15年戦争当時の人物で安倍晋三に近いキャラは、荒木貞夫あたりかな、と思う。途方もなく頭が悪いところが似ている。
なお、「左翼の謀略により日本は参戦した」「右翼は左翼だ」「陸軍統制派は左翼だ」といった、頭がぐらんぐらんする、言語コミュニケーションを崩壊させかねない、引きこもりモード言説をときどき「宗教右翼」やその影響を受けた「ネット右翼」がするが、このトンデモ陰謀説は、近衛文麿が真崎甚三郎ら「皇道派」に吹き込まれ、封建的「保守」政治家の中で醸成して今に至るも続いている、「皇道派」系列の妄言である。サイパン陥落のとき近衛文麿はこのトンデモ陰謀説「近衛上奏文」を御前会議に提出して、結果、終戦を遅らせた。「近衛上奏文」は側面的には考慮に値する示唆が含まれているが、中心を貫く理屈が目茶目茶であり、近衛文麿ら「封建的貴族階級」の被害妄想を顕している。でもってこのトンデモ陰謀論は、賀屋興宣(かや・おきのり)を通じて石原慎太郎へ、高村坂彦を通じて統一協会系議員・高村正彦へ、吉田茂を通じて麻生太郎へ、特高警察を通じて現在の公安警察へ思想的につながっているようだ。その意味、「近衛上奏文」はもっと研究が進められるべき文書だが、まだあまり研究が進んでいない。

近衛文麿―「運命」の政治家 (岩波新書評伝選)

近衛文麿―「運命」の政治家 (岩波新書評伝選)

 関連 ■[現代史][呪的闘争]「陰謀論」の系譜 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050219#1108760704

http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050219#1108760704
近衛文麿は元首相で、当時の日本の最高度の情報が近衛の元に集りました。しかしながら近衛は強い思い込みから「近衛上奏文」という奇怪な「陰謀論」を天皇に上奏しました。この上奏文には戦後の首相吉田茂も執筆に関わってました。

  http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/1274/1025166092/136-140
 「近衛上奏文」論旨
1;日本の敗戦は必至だ。
2;憂慮すべきは敗戦よりも、敗戦に伴なって起きる共産革命だ。
3;共産革命の条件は揃っている。生活の窮乏、労働者発言権増大、英米への敵愾心高揚の反面として親ソ気分、軍部内の革新運動、新官僚の運動。とくに憂慮すべきは軍部内の革新運動だ〔カマヤン注;具体的には統制派を指すようだ〕。
4;少壮軍人は国体〔天皇制〕と共産主義は両立すると信じている〔北一輝の論などを指すか?〕。皇族にもこの主張に耳を傾ける方がいる。〔秩父宮昭和天皇の弟)のことか?〕 
5;満州事変・支那事変を起こし拡大し、大東亜戦争に導いたのは、軍部内の計画による〔実際には軍部内主導権はリレー状に、あるいは玉突き的にバトンタッチされ、一貫した計画が成立したわけではない〕。満州事変の時、彼らが事変の目的は国内革新にあると公言したのは有名な事実だ。
6;いわゆる右翼は、国体の衣を着けた共産主義者だ。
7;一億玉砕を叫ぶのは、これによって国内を混乱させ、革命の目的を達そうとする共産分子だ。
8;戦争終結の最大の障害は、満州事変以来今日の事態まで時局を推進してきた軍部内の「かの一味」〔具体的には統制派のことらしい〕だ。
   出典;『外交資料 近代日本の膨張と侵略』(新日本出版社、1997年)380-383p*1より抜粋構成。

えとですね、日本で最も上等な情報を集めた人間ですらこういう「陰謀論(しかも明らかに間違っている)」に辿りつくのならですね、私のように底辺で情報集めている人間の結論が「陰謀論」っぽくなっちゃうのはやむなしだと思います。かつ、この「近衛上奏文」執筆に関わった吉田茂・殖田俊吉らが戦後政治の主流になるわけですから、戦後保守政治の根幹に「陰謀論世界観」が横たわったわけでして。
私の興味の本質は「人は何故そのように信じるに至ったか」「人は何故そのように思い込むに至ったか」という点にあります。ネット右翼たちが信じ、2chなどでしばしば奇怪な展開をさせる「共産主義による陰謀論」の源流の一つは「近衛上奏文」世界観なのだな、と、判ったとき、ずいぶん腑に落ちました。

なお、上記再掲文で私の結論が《「陰謀論」っぽく》なった、と記述しているが、安倍晋三や現役閣僚と統一協会の繋がりが「今も」続いていて、それをマスコミが「故意に」報道していない事実が判明した現在、私の「見通し」はかなり正確だったと言えそうだ。上記再掲文は2005年2月に記述したものだが、当時の私が感じていた気色悪さを、現在は当時よりはるかに多くのwebユーザーが感じているだろうと思う。

ぽちっとな