カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

田舎の生活とか、政治関係とか、表現規制のこととか、狂乱している老母との生活とか

苅部直『丸山眞男』(岩波新書、2006年)

PCを浚っていたら、眠っていた文章を見つけたので置いておく。6月ごろ書いたもの。
■[警察][共謀罪]オタク狩りをしてきた万世橋署(?)が「アンチ共謀罪ガールズ」(メイド服装備)に言いがかりをつける映像 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060618#1150602278 で、《管轄外の文京区の本富士署が検挙率アップ目的で「オタク狩り」をしていた》こと、《本富士署の署長様は警察官の中でもエリートコースに乗っている人がつとめる役職》で《〔2004年〕11月の時点で本富士署長だったお方は、〔2005年〕2月の人事異動で「公安4課長」におなりになられた》ことなどを引用したが、苅部直丸山眞男』(岩波新書、2006年)に以下の記述があった。

丸山〔眞男〕は、国家権力という、けたはずれに荒々しい「異質なもの」からの攻撃にされされることになる。一九三三(昭和八)年四月、高校三年生になったばかりのとき、治安維持法違反の疑いで警察に検挙され、留置場に拘留されたのである。
きっかけは、〔略〕マルクス主義を立場とする学者たちが、長谷川如是閑を会長にかつぎだし、学術団体として唯物論研究会を発足させたことであった。〔略〕ホッケー会〔略〕の合宿練習を、春休み中、寮で行なうあいまに、本郷通りを歩いていた丸山は、唯物論研究会の創立第二回公開講演会の貼紙を目にし、弁士として如是閑の名があったために、海上の本郷仏教青年会館へ足を運んだ。
しかし、如是閑の閉会の辞も終わらないうちに、壇上の左端に臨席していた本富士署長が「弁士中止」を言い渡し、解散を命じる。そして、監視にあたっていた警官たちが、聴衆の中で共産党の活動家と目される人物を引きだし、警察署の留置場へと連行した。丸山は高校の制服を着ていたために、若い大物と疑われ、本富士署特別高等警察特高)の刑事の取り調べをうけることになったのである。(46-47p)
〔略〕問題は、このノンポリ〔略〕の高校生について、取り調べにあたる刑事が見る姿である。〔略〕如是閑は父の友人で、と言いかけた丸山を、刑事はたちまち殴り、「ばかやろう、如是閑なんていう奴は、戦争が始まったら一番に殺される人間だ」と叫んだ。丸山はたちまち、大震災のさいの大杉栄の殺害を連想し、「あの如是閑さんが虐殺される」と思って、目の前が真っ暗になったのである。
そして、警察の留置場に拘留される経験が、さらに過酷な「異質なるもの」との遭遇にひきこんでゆく。〔略〕「体を横にする隙間もないほどスシ詰めの豚箱のなかで、スリ、泥棒、感化院を三度も脱走した少年、不渡手形を出した小会社の社長、一言も口を割らないので「大方宗太郎(おおかたそうだろう)」という名でデカが呼んでいた朝鮮人」といった拘置者たちに囲まれ、とりわけ朝鮮人に対する取り調べでの、手ひどい暴力も目にしている。(48-49p)
〔略〕丸山の逮捕の半年前にも、親しい同級生が、活動家との協力を疑われて検挙され、その衝撃から統合失調症を発し、まもなく死んでいる。この同級生は、共産党の協力者どころか、マルクス主義を批判する自由主義者として左翼学生から嫌われていた経済思想史学者、河合栄治郎の愛読者だった。こうした学生たちは、警察と学校当局との協力のもと、授業中に生徒主事から呼び出され、そのまま本富士署に連行されていった。(50p)
〔略〕〔丸山眞男にとっては〕国家権力による外からの抑圧だけでなく、みずからの内面にいる敵にも、目をむけさせた。〔友人の前で〕涙を流してしまったとき、「俺はだらしない人間だ。いざとなると、平常、読書力などを誇っていたのが、ちっとも自分の支えになっていない」と、大きな挫折感を覚えたことを回想している。
〔略〕権力による弾圧という運命に屈し、不安におびえてしまう自分が、ここにいる。これに対して、外からどのような苦難にさらされようとも、誇りを保ち平然としていられる主体性を、どうすれば心の内に確立できるのか。(51p)
〔略〕作家、小林多喜二が検挙され、築地警察署内で殺されたのも、丸山の逮捕の一か月少し前のことであった。
特高警察による取り調べは、思想でなく外面に表れた行動を取り締まるという、「近代国家の基本原則」が通用する世界ではない。(54p)

関連 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20051128#1133108539 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20051130#1133290956

丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

本富士署へ不審の意を示すため   をクリックされたし。