カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

田舎の生活とか、政治関係とか、表現規制のこととか、狂乱している老母との生活とか

ジョン・W・ダワー『昭和』

ジョン・W・ダワー『昭和』(みすず書房、2010年)読了。以下、いくつかメモする。

「1章 役に立った戦争」

終身雇用・年功序列の起源は、1939年、第二次世界大戦の頃らしい。

一九三七年の日中戦争から四年後の真珠湾攻撃までのあいだに政府が実施した調査によれば、重要産業における転職率はおどろくほど高く、転職は終戦の瞬間まで続いた。〔略〕
一九三九年から四二年までに当局は、職場の無許可変更を禁ずる一連の布告を発した。そして一九三九年から四三年までのあいだには、労働者を職場にとどめるようなやり方で賃金構造の安定化を目指した、内容が濃くて詳細な法律や規制が矢継ぎばやに導入された。そのなかには、一定の初任給や定期昇給の明確な規定が含まれていた。政府がこれらの措置を講じた結果、「日本型雇用システム」の三本柱のうちの二本ーー熟練従業員および半熟練従業員にたいする終身雇用および年功序列ーーが一般的な慣行となった。これらとともに、実地訓練の重視や家族手当などの補助的な社内福利といった、戦後の大企業における労使関係を特徴づける慣行も成立した。(18p)

戦後の年金制度も、一九三九年から四四年までに制定された一連の法律にもとづいており、ほんらい、それらは労働者の転職を防ぐのがねらいだったが、同時に政府が戦争の資金として転用できるような資本を創設する意図もあった。(21p)

「2章 日本映画、戦争へ行く」

アメリカ映画では、戦争は大義(「民主主義のための闘い」など)であり、敵は(日本なら「ジャップ」というふうに)明確であった。対照的に、日本の映画制作者たちにとって、戦争は自然災害(これを、ベネディクトは嵐や地震のようなものだと提起し、ジョセフ・アンダーソンとドナルド・リチーは火事や洪水にたとえた)に近い。問題となるのは、だれにたいして闘うのかではなく、いかによく闘うかであった。(36p)

なぜこの圧倒的に強力で神秘につつまれた「家族国家」〔という日本の「神話」〕は必要だったのだろうか。それは、権威主義的な軍事国家が、核となる家族をほとんど破壊してしまったからである。
〔略〕日本の戦争映画で、戦争賛美とみられるものはほとんど一作もない〔略〕 (43p)

「5章 占領下の日本とアジアにおける冷戦」から。

アジアにおける新たなパクス・アメリカーナに日本を経済的・軍事的に組みこもうというアメリカの政策のなかで、アメリカのもつ技術と特許がかなり気前よく日本の産業界に移転された。(123p)

現在アメリカが著作権に関して発狂といえるほどうるさくなっているのだが、それはアメリカにはもう売れるものがないから、過去の特許などの特許料・著作権料を世界中から徴収して生き延びようとしているからだ、と、人から聞いたことがある。
日本の経済はアメリカの特許をほぼ無償で利用できたことで発展した。そしてアメリカの特許を全然利用できなくなったころから、不況が続いている。らしい。あくまで人から聞いたことだが。

一九四五年から四七年まで、アメリカの対味あっ戦略の主流は、〔略〕日本にたいする嫌悪感と不安、そして、中国がアメリカの有力な同盟国として、またアジアの有能な「警察官」として浮上してくるだろうという期待感に根ざしたままだった。(129p)

一九四七年なかばの、降ってわいたような講和条約をめぐる混乱については〔略〕天皇が側近をつうじて政治取引に乗りだしたというめずらしくも生々しい事例研究の材料を提供している。そして、日本政府と皇室がともに、早い段階から日本本土の占領の早期終結と引き換えに沖縄の主権を売り渡す腹だったことを明るみに出すものである。(134-135p)

〔冷戦での〕勢力均衡論は、一九四八年ごろから、おおむね以下のように展開された。
1 〔略〕日本は、アジアにおける重要な勢力である。
2 しかし世界全体でみると、アジアはアメリカにとっての戦略的な重要度では一位どころか二位にもランクされない。逆にヨーロッパ戦域は最重要で、中近東がそれにつづく。軍事的にいえば、「西洋では戦略的攻勢、東洋では戦略的防衛」が必要とされることになる。
3 この世界戦略で日本をより必要とするのは、アメリカよりソ連である。
4 したがって、日本にかんしてアメリカがまず達成すべきは、日本をアメリカの攻撃能力に組みこむことではなく、むしろ、もっと端的にいえば、日本をソ連勢力圏から切り離すことである。(140p)

一九四九年五月付のアメリカ中央情報局(CIA)の報告書はもっと詳細に分析している。
日本の産業基盤を支配下に収めることは、アメリカにとってよりもソ連にとって価値が高い。ソ連が日本の工業製品をより緊急に必要としているからだけでなく、日本の工業がもっとも効率よく利用できる天然資源を産する地域(主として、中国北部、満州、朝鮮)を実質的に支配することにもなるからだ。こうした理由から、日本の経済・軍事能力をソ連に利用させないことが、長期的なアメリカの安全保障上の利益にかなうことになる。(140-141p)

「10章 日米関係における恐怖と偏見」

外国人がほとんど躊躇なく賞賛するものには、日本人の勤勉と質素、すばらしい審美眼、高品質の製品、比較的に均等な所得分配(現在、これは変化しつつあるが)、都市の低い犯罪率などがある。(256p)

均等な所得分配という美徳が失われるのは情けない。

昭和――戦争と平和の日本

昭和――戦争と平和の日本

ジョン・W・ダワー関連 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050208#1107877246 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050217#1108587675 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060213#1139762265 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060417#1145199966

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