カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

進歩と改革/「治安利権」と「東京都『非実在青少年』規制条例」

友人のお蔭(ネームを手伝っていただいた)で、『進歩と改革』の原稿できた。思ったより絵も荒れなかった。

「治安利権」と「東京都『非実在青少年』規制条例」  鎌倉圭悟

二〇一〇年現在、都議会では「青少年健全育成条例改正案」が焦点になってます。マンガ、携帯電話、ネットが標的です。
内容は

【1】  十八歳未満の児童に見えるキャラは「非実在青少年」と定義する。「児童を性の対象として扱う風潮の根絶」するため、マンガは全て自主規制せよ。
【2】 1の規制に都民は協力する義務を負う。都は規制に協力する市民団体を税金で支援する。
【3】 児童ポルノの単純所持規制(罰則なし)
【4】 児童がネットでの書き込みで他人に迷惑をかけたり、被害を招いたりしたら、都は保護者や児童に対し調査・勧告を行う。

官製悪書追放運動に協力しないと、「非国民」ならぬ「非都民」という… 戦前の「隣組」みたいですね。〔注一〕
これに対し、反対世論が沸騰しました。

三月十二日「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構」(EMA)や東京都地域婦人団体連盟(東京地婦連)など十団体が、条例反対の記者会見。〔注二〕三月十五日、藤本由香里明治大学準教授ら、著名漫画家・評論家が都庁にて反対集会。〔注三〕「コミック十社会」、日本ペンクラブなども反対意見書を提出。〔注四〕一般人からも数千にも及ぶ反対のメールや手紙が都庁や都議の元に殺到。〔注五〕

が、東京都は「反対意見は誤解だ」と、無視する様子です。〔注六〕
青少年都条例改正は「警察庁生活安全局」が「治安利権」目的で進めているようです。
生活安全局」は「体感治安の悪化」を理由に一九九四年創設されました。「体感治安」は一九九〇年代、当時の警察庁長官國松孝次らなどがよく使い、「安全神話の崩壊」とともに、九〇年〜〇〇年代初頭のマスコミ各紙を賑わしました。実際には、統計上、治安は悪化してないし、安全も崩壊してません。報道の数が増えているだけで、事件数は横ばい。
生活安全局は〇二年から全国に「生活安全条例」を作り、監視カメラの設置、不審者通報システム、自警団パトロールなどを予算化していきます。「安全・安心まちづくり」運動と称し、防犯協会や大手警備会社など警察OBの天下り組織が仕事を請負います。「治安利権」です。
今回の青少年都条例改正も同様で、前田雅英後藤啓二など、生活安全局と関わりの深い人物が作っています。〔注八〕
「治安利権」は、九〇年代、新自由主義とともに進行しました。アメリカでは「愛国者法」、イギリスでは「家族介入プロジェクト」など〔注九〕、治安などを名目に、国民総監視体制が進行しています。
警察は英米を規制の手本としていますが… 「児童ポルノの根絶」「青少年の健全育成」「安心・安全」という美名の裏に潜む刃により、自由な市民社会は刻々削られています。

〔注一〕特高警察の行動に類似している。「『特高月報』に見る庶民の本音」http://www10.ocn.ne.jp/~war/tokkou.htm
〔注二〕「東京都の携帯ネット規制条例に対し、業界団体や婦人団体、ネット利用の教育啓発団体が猛反発」 10/03/12 東京経済 http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/a4c781d727355e586fecefe937adade7/
〔注三〕「『文化が滅びる』都条例『非実在青少年』にちばてつやさん、永井豪さんら危機感」 2010年03月15日 22時30分 ITmedia http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1003/15/news074.html  漫画家の里中満智子竹宮惠子ちばてつや永井豪、日本漫画学会長・評論家・呉智英社会学者・宮台真司明治大学准教授・森川嘉一郎、「松文館事件」被告側弁護士・山口貴士日本書籍出版協会・矢部敬一が会見に出席。なお、都は永井豪の「ハレンチ学園」などは規制対象にならない、と述べているが、『けっこう仮面』は1990年代に有害指定図書に実際になっている。http://d.hatena.ne.jp/nakakzs/20100228/1267302518
〔注四〕「『非実在青少年』にマンガ業界からリアクション続々」 http://natalie.mu/comic/news/29214 「コミック10社会」は秋田書店角川書店講談社集英社小学館少年画報社・新潮社・白泉社双葉社リイド社の10社によって構成される。
また、太田出版は独自に規制反対のための署名活動を行なった。
〔注五〕「青少年保護か 表現の自由か」http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100319-OYT8T00774.htm
〔注六〕http://twitter.com/inosenaoki/status/11239323868 「東京都の条例について、ほとんど誤解されているが、表現規制ではない。知らないで言っている人が多い。漫画を描くこと、出版すること、18歳以上の人に販売することについて、いっさい規制されない。 12:20 AM Mar 29th 猪瀬直樹
〔注八〕 条例の元となった答申を提出したのは第28期東京都青少年問題協議会。二人はその部会長と答申作成者である。
〔注九〕「子どもたちを見張れ!」自由法曹団「警察・学校相互連絡制度」問題プロジェクト  http://www.jlaf.jp/iken/2004/iken_20041013.html  「監視カメラが普及しているイギリス(全世界の監視カメラの10%、250万台)において、それを下支えしているのが、政府の補助金制度である。」
〔注十〕問題家庭2万世帯に監視カメラを設置:英国政府 http://wiredvision.jp/news/200908/2009080421.html 4億ポンド(6億6800万ドル)の予算を投じる予定。

[2011/01/19]〔注七〕を不適当だと判断し削除。
これの前の「進歩と改革」原稿 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20091126/1259182642

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