カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

田舎の生活とか、政治関係とか、表現規制のこととか、狂乱している老母との生活とか

小熊英二『社会を変えるには』から抜粋、第一章-2

小熊英二『社会を変えるには』第一章からの抜粋を以下続ける。

災害で問題が露呈する

〔略〕災害がおきると、それまで社会が抱えていた問題が露呈します。一九九五年におきた阪神・淡路大震災でも、それがおこりました。
それ以前の神戸の主産業は、港湾業や、造船・製鋼といった重厚長大型産業、そしてケミカルシューズなどの軽工業でした。〔略〕
震災のあと、〔略〕港湾は釜山との競争に敗れ、ケミカルシューズは中国産品に勝てませんでした。〔略〕若い人が骨折しても回復しますが、老人が足を折ると寝たきりになってしまうことがあるのと、少し似ています。
〔略〕阪神大震災後の五年間で被災地に投じられた復興事業費のうち、約九割は〔略〕〔東京のゼネコンなど〕被災地の域外に流出したと見積もられています。〔34p〕
〔震災の〕当時の兵庫県は数少なくなっていた人口増大県でもあったので、町並みの復興はそれなりに進みました。
しかし地方の災害では、災害を機に過疎化が一気に進む現象がみられました。一九九三年に津波に襲われた奥尻島〔略〕。二〇〇四年の新潟県中越地震で被災した山古志村〔略〕。
二〇一一年の東日本大震災で被災した地方〔略〕。〔34-35p」
そして東日本大震災では、原発事故がおこりました、しかし二〇〇七年の新潟県中越沖地震でも、柏崎刈羽原発が事故をおこしていました。〔36p〕

原発と工業化社会

日本の商業用原発の運転開始は一九六六年でした。〔略〕原発建設の時代は、この〔日本が工業化社会だった〕時期とほぼ重なっています。
じつはこれ〔原発建設期が工業化社会だった時期と重なること〕は、アメリカでも同じでした。〔37p〕
一九七四年以降の新規発注でも原子炉が完成したものは一基もありません。〔略〕コストが高くて見合わないというのが最大の原因で、それがスリーマイル島事故で決定的になったというのが実情でした。〔38p〕
イギリス原子力発電会社は倒産寸前になって、準国営のフランス電力会社(EDF)に買収されました。フランスは核兵器によるアメリカからの自立に熱意があるので、採算を度外視しても、原発プルトニウム抽出は進める路線を続けています。
そういう国は別として、原発派経済的にみあわないという認識が、先進国では共通して広まっています。ドイツ、イタリア、スイスなど、核兵器を持たない国は、すでに原発からの撤退を決めました。〔38p〕
日本でもアメリカ、ヨーロッパでも、大規模投資で作る巨大プラントである原発派、エネルギーを大量消費する重厚長大型の工業化社会の象徴だったといえます。〔39p〕

原発事故で変わったソ連

ゴルバチョフは、回想記で一九八六年のチェルノブイリ原発事故のことを、こう述べています。

チェルノブイリはわが国体制全体の多くの病根を照らし出した。このドラマには長い年月の間に積もり積もった悪弊がすべて顔をそろえた。異常な事件や否定的なプロセスの隠蔽(黙殺)、無責任と暢気、なげやりな仕事、そろいもそろっての深酒。これは急進的改革が必要であるもうひとつの確実な論拠だった。(『ゴルバチョフ回想録(上)』)

〔略〕ゴルバチョフの述べていることは、「深酒」をのぞけば、日本の原発事故でも、大なり小なり見せつけられたことだったといってよいでしょう。〔略〕そして「社会を変える」ことへの期待も、震災と原発事故をきっかけに、いっそう高まっているのは当然といえます。〔39-41p〕

原発を支えた補助金システム

一九七二年から七四年の田中角栄内閣の時代は、日本型工業化社会を支えた、一連の制度の完成期です。〔略〕
一九七四年、原発立地自治体への補助金を、電気料金から徴収する電源三法ができます。〔略〕
じつは原発補助金の仕組みは、道路建設とよく似ていました。田中は一九五三年にガソリンにかかる揮発油税を道路建設の特定財源にする制度を議員立法しています。さらに〔略〕田中は、自動車を買うときと車検を受けるときに支払う自動車重量税を新設して、これも道路特定財源としました。
自動車を買い、ガソリンを買って乗り続ければ、道路がどんどん作られるシステムです。これを基盤に、自民党も利益誘導で票を獲得しました。電気を使えば使うほど原発補助金が増える電源三法も、ほとんど同じ仕組みです。〔41-42p〕

戦争から始まった電力市場統制

ソ連の体制は、戦争から始まっています。〔略〕革命のあと〔略〕干渉戦争や内戦をのりきり、軍事力を強めるため、統制と計画経済が実行されました。「五ヶ年計画」といった計画経済は、ナチス・ドイツや、日本支配下の満州国も行なったもので、二〇世紀の戦時経済に特徴的なものです。
そしてじつは、日本の道路や原発の建設も、よく似たかたちで行なわれてきました。全国の道路建設は、政府の五ヶ年計画で決められますが、これは国会審議なしで閣議決定されます。原発を含む発電所の建設も、政府の長期エネルギー需給見通しと、原子力開発利用長期計画(二〇〇五年から原子力政策大綱に変更)で決定され、国会審議なしで閣議決定されます。〔43p〕
日本の言尾圧政策の特徴は、〔略〕政府の政策にもとづいて民間会社が原発を作る「国策民営」であることです。〔43p〕
日本政府は公務員数から言っても、政府支出のGDPに占める比率からいっても、先進国のなかでは小さいほうです。日本政府の強さは、大きさではなくて、民間企業を従わせる指導権や許認可権の強さです。〔43-44p〕
日本の電気料金は、政府が決めた電気事業法によって、発電コストにその三パーセントを上乗せして決定されます。電力会社は、コストダウンするよりも、原発のような高額な発電所を建ててコストをかけたほうが、利益が上昇するわけです。〔44p〕

無責任体制

この体制の特徴は、政府と企業の癒着がおきやすいことと、無責任が発生しやすいことです。それはたとえば、一九六一年に制定された原子力損害賠償法に現れています。〔44p〕
福島第一原発事故の被害総額は、この保険金と政府補償契約でまかなえる限度額の、少なくとも数十倍にのぼると言われます。〔略〕
電力会社は政府が援助してくれることを期待しているでしょうが、政府が必ず責任を負うことを〔原子力損害賠償法は〕保証しているわけではありません。要するに、誰も最終責任を負わない体制です。〔45p〕
ちなみにロシアやフランス、韓国など多くの国では、原発は国営か事実上の国営ですから、政府が最終責任を負います。〔45p〕

第一章はまだ続くけど、ここでいったん区切る。

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