『デビルマン』と「在特会」
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在特会の桜井誠(通名)が逮捕されたhttp://matome.naver.jp/odai/2137137332704498201?&page=1りした*1のも何かの奇縁だと思うので、本日アップする予定だった記述を以下記す。
ところで「通名」を使うのは在日特権だ、というのが桜井誠(通名)の主張だったりするが、文化資本貧弱な環境に育つ者はそういう自己矛盾をなしてそれを矛盾と感じないものではある。余計な話だけど「鎌倉圭悟」名義で私は日常生活を長く通したけど、これは「通名」の一種だったり。けっこう通るもんだね。
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私は1967年生まれなのだが、私と同世代のオタクなら、オタクの基本教養の一つに永井豪『デビルマン』があるはずだ。
この一行書いただけで、私と同じ程度の煮詰まり方をしていたオタクなら、『鬼』→『デビルマン』→『手天童子』の三部作への連想とか、漫画『デビルマン』と一時期の平井和正作品(特に漫画版『幻魔大戦』)との呼応関係とか、漫画『デビルマン』を教養とした上での『寄生獣』の楽しみ方とか、デビルチョップはパンチ力とか、実写デビルマンの切なすぎる出来とか、連想が無限連鎖するだろうとは思うんだけど。無限連想の一つにエロ漫画家牧村美樹とかいたりいなかったりすると思うけど。
『デビルマン』のヒロイン牧村美樹が作中どうなったかについてのショック、今ここで名をつけると「デビルマンショック」を被っているオタクって、「在特会」に共感しないと思うんだ。「在特会」って、牧村美樹をアレした人たちそのものでしょ。
「デビルマンショック」の教養って、オタクの基本教養だと思っていたんだけど、「在特会」に流れるオタクがその洗礼を受けていないのが、切ないなあとか、マンガの文化的パワーの時代的限界かなあ、とか、思っていたんだけど、私より6〜7年後の世代までは伝達されていたと思うんだが、それ以降いつ頃影響が同世代(コーホート)的に消えたのかなあ、とか思っていたりする。
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この記述、もっとずっと前に書いてしかるべきだったんだが、躊躇していたのは、漫画『デビルマン』を典型とする、少数者が多数の凡庸な人々に迫害される、そういう形式は、オタクが感じている知的優越感とかそういうものをエンターテイメント化したものではあるけど、それを力持って描けた先達の人々には、けっこう社会的マイノリティな方々がいらっしゃったんではないかと、あ、歯に衣着せすぎた、いや、ありていに言って、あれだけの力ある作品を描けた永井豪先生は、何かのマイノリティでいらっしゃったんではないかと、もっとあけすけに言うと在日コリアンとかそういう出自でいらっしゃるのではとか、そういう仮説が我が貧弱なる脳と心を支配してしまって、いえ、解答なんて別に求めちゃいないんですけど。
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「在特会」の連中は、彼らの文化資本が貧弱であるので、オタク的情報(たとえば『宇宙戦艦ヤマト』などhttp://g2.kodansha.co.jp/4291/4623/6450/6451.html)を疑似教養として使用していて、まあ、それは世代的並びに彼らの知的文化的に貧困な環境のなせる業としてやむを得ないところではあるかもしれんけど、「デビルマンショック」を受けずに、「我無謬なり、あの少数者悪なり」、と規定したがるその卑しい心性って、日本人の文化資本の乏しい階層の、ある種典型かなあ。我が田舎の同級生どもはオタク的教養すら欠けていたバカども揃いで品性の卑しさは全く「在特会」と同列で死ねとしか感じない連中ではあるけど。
とりあえず、「在特会」的な人たちって、「民主主義」のフリーライダーではあるよね。フリーライダーが悪というわけでもないけど。「民主主義」って、民衆から広く税を徴収するほうが国家にとって得だ、という判断があって成立している制度で、イスラム社会のように民衆から税を広く徴収するより、欧米系大企業からの金で国家が回っていて民衆からの税などそれに比べてゴミ同然、という社会だったら、「在特会」的活動って、成立しないよね。お前、イスラム社会でも同じこと言えんの、的な。
「在特会」の知る「正義」って、「多数派が正義」=「その内容が真であるか偽であるかは不問」、「民主主義とは多数派による独裁を是とする、よって常に多数派には媚を売り、少数派を敵とすべし」というそういうもので、「立憲民主主義」と日本庶民との断絶とか、「立憲民主主義」レベルですら日本人にとっては今に至るもインテリのオモチャでしかないのかとか。
イスラム社会だと少なくとも「多数派が正義」ではないので、「神=真実」にどのくらい近いかが「正義」の証明なので、「在特会」的に「多数派でさえあれば間違った主張でもOK」という枠組みは成立しない。ええ、そういうのが成立するのは、たぶん倫理性の乏しい低階層社会独特ではないかな。倫理性の乏しい東アジア低階層社会独特、と書こうと思ったけど、近代低階層社会は洋の東西問わず似たような形になるかな、少なくとも狭い社会では、『ハマータウンの野郎ども』とか読むと、とか思ったので「東アジア」の言葉を省いた。それと同時に、いやあ、ある意味「東アジア独特」かもなあ、とも思う。庶民の倫理性の根拠がないという点で。
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「在特会」についての過去の言及 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20120522/1337704072 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20120527/1338128914
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