カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

『All You Need Is Kill』ネタバレ、矛盾点指摘

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All You Need Is Kill』マンガ版 読んだ。
面白いけどさ。
疑問点というか矛盾点を以下書く。ネタバレ。
このマンガ版は原作のラノベ版に忠実に描いてるそうだから、たぶん俺はラノベ版を読むことはないから、以下全部マンガ版での話数で書くけど。

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1巻第3話冒頭、主人公キリヤ・ケイジが経験している「ループ」のルールが提示される。
1;死ぬと出撃前日の朝に戻る
2;どこで、どんな死を迎えてもルール1が適用される
3;逃げられない
4;記憶は継続される
5;必ずしも同じことが起きるわけではない
以上が「ループのルール」として提示されている。
1巻7話は、158周目が書かれ、キリヤ・ケイジの「ループ」にヒロイン「リタ」が気づいたところで1巻が終わっている。

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2巻目は、ヒロイン「リタ」の視点で書かれる。
リタは、1巻の主人公キリヤ・ケイジより先に、別な戦闘で、「ループ」を経験している。
「リタが統合防疫軍に入隊して半年後(2巻9話)」の戦闘で、リタは「ループ」を経験する。2巻10話、「入隊して半年後」の戦闘の211周のループにおいて、適切な行動をとったがため、リタは「ループ」から初めて解放される。
2巻11話で以下のナレーションが記述される。
「リタは一度だけ同じ戦闘をループすることにしていた。〔中略〕誰が死んでもループは一度きり。そう決めて〔後略〕」

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ここでまず疑問が発生する。
ループは、人間の意志で起こしたり止めたりできるか? 1巻の「ルール」ではできないはずだ。
「リタ」がそれを自分の意志でできるようになったとは明確には書いていないが、このナレーションは「リタは自分の意志でループできる」という意味で書かれている。どうなの? 作者はここを詰めて決めていないと思われる。〔末尾に追記〕

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2巻12話に以下のケイジのモノローグがある。
「リタの話によれば、2回目から158回目までギタイ・サーバを倒していたのはリタだ」…A
2巻13話のケイジのモノローグは以下。
「ループが続く限りリタが会うのはいつも初めての僕なんだ」…B
ここに矛盾が集約される。

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疑問;リタは「ケイジのループ」を、ケイジと同じくループしているか?
回答A;リタは「ケイジのループ」と同じ戦闘をループしている。なぜならAのモノローグが存在するから。リタはケイジと一緒に今までケイジの戦闘で158回ループしている。
回答B;ケイジのループはあくまで「ケイジのループ」であり、リタはケイジがループしている戦闘では他のキャラと同様、ループしていない。なぜなから、リタもループしていたら、「ループのルール4」が適用され、リタはケイジとの会話を記憶し、「リタが会うのはいつも初めての僕」ということはありえない。
この二つの回答がありえる。このABは両立しない。が、作中では、
リタはケイジがループしている戦場で、ケイジと同じく158回のループをし、その戦闘の記憶は継続させている
しかし、ケイジとの出逢いという記憶は継続させていない
ということになっていてですね、ループのルール4が壊れているんですが

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ループもののある種元祖として時々『All You Need Is Kill』の話題で言及される『うる星やつら2・ビューティフルドリーマー』でも、サクラ・あたる・面堂・夢邪鬼が初めて一堂に会す場面で似た矛盾が発生していたけど、
SFは現実にありえない状況を描くのが見せ所だから矛盾が出るのはしょうがないんでそこをいかにサラッと流すかが腕前というもので、そこを指摘するのは野暮天というもの
だとまあ思うんで、
まあいいんですけど。

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All You Need Is Kill』もハリウッドで映画化されたんでこれ以上望めないくらい作品的に成功した作品だし、
2巻最終話後半の味は、ループものエロゲ―のトゥルーエンドを背景とした名シーンで、すげえいいんですけど

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それはそれとして、
1;リタは「ケイジのループではループしていない」としても良かったし…ただしそれでは2巻最終話前半が成立しませんね
2;「リタが統合防疫軍に入隊して半年後(2巻9話)」の戦闘でのループの後、自分の意志でのループなんか経験せず、「ケイジのループ」の戦闘で「2度目のループに嵌った」としても良かったし、ああ、それでは、「ループが続く限りリタが会うのはいつも初めての僕なんだ(B、2巻13話)」な、いつも出逢いは初対面な、切なさを描けないですね。諦めろ作者そこは。「世界でただ二人同じループに巻き込まれ同じ経験を共有している者同士」でもラブストーリー書けるだろ。書きたいものとはズレがあるかもしんないけど。159周目に全ての思いを書き込むことだってできただろ。
とか思った。
思うに「世界でただ二人だけ同じ経験を共有する」というのはこれは夫婦的な愛情で、「出会った時は常に初対面」というのはこれは初恋的な愛情で、作者は後者の初恋的恋愛を書きたかったんだろうけど、後者だとルール4と最終話前半が成立しない。

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という点が気になって。ええ、野暮天なのは自覚してます。誰か一人くらい指摘しといていいだろうと思い、ここに記します。

All You Need Is Kill 1 (ジャンプコミックス)

All You Need Is Kill 1 (ジャンプコミックス)

All You Need Is Kill 2 (ジャンプコミックス)

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追記。
戦闘時にサーバ・ギタイを残すか否かの選択をすれば、全ての戦闘において意識的に「ループ」するかしないかの選択をリタはできる、と、すんません、気づきました。

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