カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

田舎の生活とか、政治関係とか、表現規制のこととか、狂乱している老母との生活とか

「人生のやり直し」としての「異世界転生ファンタジー」と「タイムトラベルSF」

『ひみつのひでお日記』と、俺が異世界転生していた時期のこと - カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記 の続き。

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異世界転生ファンタジー(ファンタジーRPG的世界にチート能力付きで召喚か転生する話)」は、希望のない現実から逃れるには異世界に転生するしかない、という現代人の切ない願望の産物だ、みたいな評をされる。その評はけっこう当たっているとは思う。俺はここ1年強、「なろう」や「カクヨム」の異世界転生ファンタジーばかり濫読している。

2

中村融・編『ロマンティック時間SF傑作選 時の娘』を、『ひみつのひでお日記』で吾妻ひでおが絶賛していたので購入した。
まだ本文は読んでいないが、「編者あとがき」に以下の文がある。

〔オールタイム・ベストSFの投票結果を比べると〕海のこちら側と向こう側のSFファン気質のちがいが見えてくるのだが、とりわけ目を惹く点がある。長篇部門におけるロバート・A・ハインラインの『夏への扉』(一九五七、早川書房)、短篇部門におけるロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』(一九六一、集英社文庫コバルトシリーズ同題書所収)に対する評価のちがいだ。この二作はわが国のオールタイム・ベスト投票ではつねに上位を占めるのに、欧米では見向きもされない。
いうまでもないが、両者には共通点がある。どちらもタイム・マシンを利用して純愛を成就させる話なのだ。時間の移動範囲が、せいぜい数十年でしかない点も同じ。〔略〕
端的にいってしまえば、”時を超えた愛”という見果てぬ夢が成就する物語。その実現のためにSF的な仕掛けがあるわけで、これはこれでSFならではの魅力だといえる。〔略〕
つまり、海の向こう側では、オールタイム・ベストに投票するようなコアなSF読者は”歴史の分岐”や”タイム・パラドックス”をテーマにした時間SFを好むのに対し、一般読者は”時を超えた愛”や”人生のやり直し”をテーマにしたSFを好むのだといえる。〔略〕個人の運命に焦点を絞った物語は、ひょっとして自分の身にもこういう事態が起きるかもしれないと思わせるところがあり、訴求力は非常に強いものがある。

日本人は(海外のコアなSFファン以外の読者もそうだが)、「人生をやり直したい」という願望をいつでも持っているようだ。
その願望の発露がタイムトラベルSFであり、異世界転生ファンタジーなのだろう。異世界転生ファンタジーでは「どう人生をやり直したいのか」という視点に作者がわりと無自覚なことが多いので、その願望にもっと自覚的な作品が増えると、さらに深みのある作品が味わえるようになると期待する。

3

「なろう」小説や「カクヨム」小説を濫読していると、「俺ってプロット作りの才能ゼロだよなあ、俺はフィクション作家としての才能って平均以下だったなあ」と、作者たちの執筆能力にしょっちゅう感心する。
『ひみつのひでお日記』と、俺が異世界転生していた時期のこと - カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記で、上京体験を異世界転生に喩えたので、これを核にフィクション化できないか少しだけ考えたら、陰鬱な気持ちになって、話なんて全く浮かばなかった。

時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)

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