カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

お勧めのものをいくつか

某掲示板に投稿しようと思ったけど連投規制に引っかかったので、ここに保存しておく。

物語系

カムイ伝』『カムイ外伝白土三平

70年代左翼のバイブル。でも作中繰り返し言及される内ゲバの不毛さを70年代左翼は乗り越えられなかった。白土三平父親小林多喜二の友人で、多喜二虐殺の写真でカメラの方を睨んでいる人物だと聞く。白土三平父親は紙芝居屋で〔訂正:洋画家だったようだ〕、白土三平父親から絵を習ったと聞く。
カムイ伝全集―決定版 (第1部1) (ビッグコミックススペシャル) カムイ外伝 (1) (小学館文庫)

オーウェル評論集』ジョージ・オーウェル岩波文庫

『1984年』の作者による評論集。「鯨の腹の中で」は必見。
オーウェル評論集 (岩波文庫 赤 262-1)  鯨の腹のなかで―オーウェル評論集〈3〉 (平凡社ライブラリー)

『やぶれかぶれ青春記』小松左京

作中登場する、特攻兵になるのを拒絶した兵隊のエピソードが非常に良い。(どこで起きた事件なのか、研究される必要があると思うが)

『イエスの生涯』『キリストの誕生』『死海のほとり』遠藤周作

超能力に憧れているカルト信者予備軍は、いっこも奇跡を起こせない遠藤周作の描くイエス像を知るべきである。
イエスの生涯 (新潮文庫) キリストの誕生 (新潮文庫)  死海のほとり (新潮文庫)

学問系

『日本の思想』丸山真男岩波新書

丸山真男を「精読」したり「批評」したりしている本は腐る程出ているが、その中で話題になったものを数冊読んだが、どれもこれもトンチキな本ばかりだった。こんなに長く読み次がれ、こんなにたくさん読者がいるのに、著名な読者はオタンコナス揃いだったのかもしれない。よく分からないけど。小熊英二の 『〈民主〉と〈愛国〉』での評は的確だったとは思うけど、丸山が研究した内容はごっつりとあるので丸山に直接当たることは必要だ。
丸山真男の書いている内容は全く古びておらず、そのことが丸山真男の不幸である。
読み返すたび、「中学生の時に読んでおけば」と歯軋りする。読んでもそういう歯軋りを覚えないボンボンは、丸山真男が直面した苦悩を体感していないのだ。
日本の思想 (岩波新書)

『現代政治の思想と行動』丸山真男未来社

右翼研究書としてきわめて重要。文庫化していないことは国家的犯罪行為に近い。「超国家主義の論理と心理」「日本ファシズムの思想と運動」「戦前における日本の右翼運動」などは繰り返し再検証され再確認され研究成果を大衆化する必要がある。
現代政治の思想と行動

『服従の心理/アイヒマン実験』S・ミルグラム

権威が保証すると、人間はどこまでも残酷になれる、という有名な実験。「生きる力」だの「ゆとり教育」だの「道徳教育」だのといったものはすべからくこの実験を下敷きにするべきである。
服従の心理―アイヒマン実験 (河出・現代の名著)

『悪について』エーリッヒ・フロム(紀伊國屋

ナチスの心理についての研究書。べらぼうに面白いが訳がやや硬いのが難。
悪について

『平気でうそをつく人たち』M・スコット・ベック(草思社

今なら「ネット右翼」研究として読めると思う。
平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

『ものぐさ精神分析岸田秀

学問としては粗いらしいけど、「日本」という国家を精神分析したもの。目から鱗がたくさん落ちる。
ものぐさ精神分析 (中公文庫)

『日本/権力構造の謎』ウォルフレン(早川文庫)

日本権力研究、日本社会研究において残念ながらたぶんこれを超えたものは今のところ存在しないと思う。いくつもの個人名が登場するので、その名前を追って追研究する必要がある。
日本 権力構造の謎〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

昭和天皇の終戦史』吉田裕(岩波新書

昭和天皇研究の最先端をコンパクトに述べている。「天皇聖断伝説」は迫水久常らが「捏造」し「宣伝」したもののようだが、それについての研究はまだ乏しいようだ。
昭和天皇の終戦史 (岩波新書)

鎖国和辻哲郎岩波文庫

終戦直後に和辻哲郎が書いたもの。大航海時代についての豊かなエピソードに満ち、世界史の中での日本について立体的に語られている。

歴史修正主義の克服』山田朗(高文研)

つくる会」批判本のスタンダード。著者は昭和天皇研究・日本近代軍事研究の第一人者。
歴史修正主義の克服―ゆがめられた“戦争論”を問う

『大元帥昭和天皇山田朗

昭和天皇がいかに具体に15年戦争に関わったかを丹念に検証している。昭和天皇研究の最先端。
大元帥・昭和天皇