姜尚中『日朝関係の克服』(集英社新書、2003年)
日朝関係の克服 ―なぜ国交正常化交渉が必要なのか (集英社新書)
- 作者: 姜尚中
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/05/16
- メディア: 新書
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発行は2003年5月。北朝鮮バッシングが一番騒々しかった頃、それに異を唱えた本。
韓国現代史の記述部分、勉強になる。韓国は今、第五共和制くらいなのかな? 隣国の憲法について、隣国の現代史について、自分は無知だなあ、と、つくづく思う。国家が憲法によって規定されていることを重視し、憲法の改変を新国家の成立だと考えると、韓国は戦後五回、国家が入れ替わったと言えるかも。
以下、重要な記述。
〔略〕「首領」が「告白」し「謝罪」してしまった以上、もはやそれ以上の政治的決断などありえない。つまり、北朝鮮は、拉致問題について「最後のカード」をすでに切ってしまったことになる。(159p)
〔略〕日本について言えば、これまで、日米安保基軸論に縛られて、アジア不在の外交が続いてきたことを考えると、〔日朝平壌〕宣言は、大げさに言えば、「日米二国間主義症候群」から脱却して、マルチラテラル(他国間の)な外交政策に転換するきっかけとなるかもしれないのだ。(179p)
日本が「独自外交」をしないよう、アメリカが後ろで動いたのが北朝鮮バッシングだったのかもね。
ところで、日朝平壌宣言をよく読めば、国交正常化がそのまま「経済協力」を意味するわけではないことに気づくはずだ。
〔略〕国交正常化の後に、拉致事件問題解決の推移を検証しつつ、しかるべき「適切」な時期になってから、「経済協力」を実施することは十分可能なのだ。
その意味でも、拉致問題が解決されないまま国交を結べば、「経済協力」によって北朝鮮を利するだけだという大方の意見は、妥当性を欠いている。(185p)