南京事件の数字
秦郁彦は、南京事件で少なくとも4万人が「虐殺」されたことを実証歴史学の立場から認めている。さて、これをもって最大値だと強弁する(つまりそれ以上の犠牲者数はあり得ないと主張する)方がわりといらっしゃるが、秦郁彦も故意にそう誤読されるように書いているが、秦郁彦は「犠牲者4万人」を最大値だとは言っていない。逆だ。
筆者(秦郁彦)が算出した四万は、かなり余裕をもたせたとりあえずの概算であり、新たな証拠が出現すれば、多い方へ向かって修正されるのは当然である。
秦郁彦『昭和史の謎を追う 上巻』(文春文庫、1999年)*1199p
つまり、秦郁彦の概算は「最小値」だ。秦郁彦自身が以上のように(こっそりと)断言している。
この『昭和史の謎を追う』の中で、秦郁彦は
〔秦郁彦と板倉由明以外は〕きちんとした虐殺被害者の数を申告していない〔略〕。
秦郁彦『昭和史の謎を追う 上巻』(文春文庫、1999年)179p
と言って、笠原十九司・藤原彰・洞富雄(なぜか学者ではないのに一緒に入れられている本多勝一)をまとめて非難しているが、この非難は秦郁彦の嘘である。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/1274/1052070202/105-107
東京裁判に中華民国が証拠資料として提出した埋葬記録は以下だ。
【埋葬団体・個人】 【埋葬遺体数】
南京市崇善堂. 11万2266体
紅卍字会. .4万3071体
下関区 2万6100体
伍長徳. 約2000体
魯甦 約5万7400体
張鴻儒・楊広才 約7000体
無縁仏 . 約3000体
合計 約26万体 〔上記人数をそのまま足すと、25万0837体〕
出典;洞富雄『日中戦争南京大残虐事件資料集』第1巻 青木書店*2378頁。
上記の埋葬記録のうち、詳細な記録(埋葬日・人数・性別・死体発見場所など)が残っているのは、「南京市崇善堂」(慈善団体)と、「紅卍字会」(宗教団体)の2団体。この2団体の活動は他の資料や戦前の日本側の記録でも裏づけがとれるので、かなり信憑性が高いと見られている。「南京市崇善堂」と「紅卍字会」が埋葬した 15万5337体は、ある程度再検証が可能だ。日本の歴史研究者の多く(たとえば笠原十九司など)は、「南京市崇善堂」と「紅卍字会」の埋葬ぶん、すなわちを15万5337体を、確度の高い数字として採用している。
*1:
*2:なぜか「はまぞう」では第2巻しか出てこない。