お勧めのものをいくつか
某掲示板に投稿しようと思ったけど連投規制に引っかかったので、ここに保存しておく。
物語系
『カムイ伝』『カムイ外伝』白土三平
70年代左翼のバイブル。でも作中繰り返し言及される内ゲバの不毛さを70年代左翼は乗り越えられなかった。白土三平の父親は小林多喜二の友人で、多喜二虐殺の写真でカメラの方を睨んでいる人物だと聞く。白土三平の父親は紙芝居屋で〔訂正:洋画家だったようだ〕、白土三平は父親から絵を習ったと聞く。
『オーウェル評論集』ジョージ・オーウェル(岩波文庫)
『やぶれかぶれ青春記』小松左京
作中登場する、特攻兵になるのを拒絶した兵隊のエピソードが非常に良い。(どこで起きた事件なのか、研究される必要があると思うが)
学問系
『日本の思想』丸山真男(岩波新書)
丸山真男を「精読」したり「批評」したりしている本は腐る程出ているが、その中で話題になったものを数冊読んだが、どれもこれもトンチキな本ばかりだった。こんなに長く読み次がれ、こんなにたくさん読者がいるのに、著名な読者はオタンコナス揃いだったのかもしれない。よく分からないけど。小熊英二の 『〈民主〉と〈愛国〉』での評は的確だったとは思うけど、丸山が研究した内容はごっつりとあるので丸山に直接当たることは必要だ。
丸山真男の書いている内容は全く古びておらず、そのことが丸山真男の不幸である。
読み返すたび、「中学生の時に読んでおけば」と歯軋りする。読んでもそういう歯軋りを覚えないボンボンは、丸山真男が直面した苦悩を体感していないのだ。
『現代政治の思想と行動』丸山真男(未来社)
右翼研究書としてきわめて重要。文庫化していないことは国家的犯罪行為に近い。「超国家主義の論理と心理」「日本ファシズムの思想と運動」「戦前における日本の右翼運動」などは繰り返し再検証され再確認され研究成果を大衆化する必要がある。
『服従の心理/アイヒマン実験』S・ミルグラム
権威が保証すると、人間はどこまでも残酷になれる、という有名な実験。「生きる力」だの「ゆとり教育」だの「道徳教育」だのといったものはすべからくこの実験を下敷きにするべきである。
『日本/権力構造の謎』ウォルフレン(早川文庫)
日本権力研究、日本社会研究において残念ながらたぶんこれを超えたものは今のところ存在しないと思う。いくつもの個人名が登場するので、その名前を追って追研究する必要がある。