カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

『洗脳原論』

http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20051213#1134465761 の続き。

洗脳原論

洗脳原論

洗脳の段階

脳内で起こる具体的な洗脳のメカニズムについて、〔略〕四つのステップにわけて論を展開してみたい。(20p)
われわれは生きている以上、常に想像している。たとえば、歩きながら考えごとをしたり、電車に乗っているとき車窓の風景を目で追いながら、実は今日の夕食を思い浮かべていたりする。そういった空想の世界を、可能性世界(possible world)と呼ぶことにする。(20p)

体感的条件づけ

一般にカルトによる洗脳においては、〔略〕カルトの教義に合わせた、迷信的命題の刷りこみが行なわれている。たとえば、オウムでは、黒は地獄の色なので、黒い服は着てはいけないとか、ロックミュージックは地獄の音楽だとか〔略〕。
洗脳のステップ1では因習的な情報の刷りこみがなされ、これが「ぞっとする」といった体感的な経験と結び付けられる。(22p)

臨場感の強化

ステップ2に進むと、可能性世界〔空想世界〕の臨場感が、現実世界の臨場感より強くなる。
たとえば映画館で映画を鑑賞しているとする。われを忘れて映画の世界に没入することは珍しくない。椅子に座っており、前の人の頭が見えているはずであるが、椅子の感触はもはや意識にのぼらず、前の人の様子も目に入らなくなっている。〔略〕
まるで映画を観ているとき、主人公になりきって映画の世界を体験するように、ニルヴァーナの世界を体験させたり、地獄の恐怖を体験させるのだ。これを何度もくりかえし体験させることにより、可能性世界〔空想世界〕の臨場感をどんどん強めていく。(23−24p)

アンカーの埋め込み

ステップ3では、ステップ2の状態において、さらにイカリであるアンカーが埋め込まれる。アンカーの埋めこみは、〔略〕トリガーすなわち引き金によって、あらかじめ埋めこんでいた臨場感体験を即座に再現するために行なわれる。(25p)
催眠において催眠術師は、被術者が催眠状態にあるとき、のちに催眠から醒めてから、指を鳴らすなどの合図をすると、身体が勝手に踊りだすなどといった暗示をかけることがある。後催眠暗示と呼ばれる方法だが、これは典型的なアンカー行為である。〔略〕
オウムでは〔略〕薬物を用いて〔略〕恐怖体験を植えつけていた。これらの恐怖体験を、教義を疑ったり、麻原教祖を疑うという行為(オウムでは「疑念」と呼んでいる)にアンカーしていた。
アンカーをとり除かなければ、家族やカウンセラーが教義の誤りを指摘するたびに、その行為がトリガーとなって、植えつけられた恐怖体験がよみがえってしまう。あたかも催眠術師の合図(トリガー)で、後催眠暗示が機能して、身体が勝手に踊りだしてしまう催眠被験者のように、本人のアンカーに対する自覚がまったくなくても、身体が勝手に反応してしまい、無間地獄の恐怖を味わうことになってしまう。体が、勝手に恐怖で震えだすのである。(26p)
逆にオウムは、麻原教祖を思い浮かべたり、麻原教祖の写真を見たり、麻原教祖のマントラをテープで聞くといった行為をトリガーとして、LSDやヨーガの瞑想で築きあげた至福体験をアンカーしていた。〔略〕
このようにオウムは、疑念をトリガーの代表とするいくつかのアンカーを、薬物、ヨーガ、チベット密教の瞑想〔略〕などを利用して、巧みに信者の脳に埋めこんでいる。トリガーとアンカーを、ヨーガや薬物による強烈な変性意識〔幻覚〕体験と組み合わせることにより、いわば、逃げることを許さない催眠サイクルをつくることに成功しているのである。(27p)

永遠の洗脳サイクル

催眠において催眠術師は、被術者が深い催眠状態にあるとき、もう一度その深度まで至らせる手順を省くための方法として、自分の人差し指を見るなどの印で、すぐに同じ深い催眠状態に戻るという暗示をかけることがある。〔略〕典型的なアンカー行為である。(29p)
洗脳においては、このような深い変性意識状態に引き戻すためのアンカーを、ありとあらゆる脱洗脳状態に関係する事柄や、考え方、言葉などに結びつけておく。〔略〕一時的に変性意識状態から抜け出たとしても、覚めた瞬間に、覚めたという体験そのものが、深い変性意識を引き戻すためのトリガーとして働いてしまうのである。
このレベルにくれば、もはや洗脳から自力で抜けだすことはできない。また、このステップ4の状態を何か月、何年と経験すれば、もはや現実世界は遠い夢の世界へとしりぞいてしまう。この四つのステップで、洗脳は完成する。(30p)

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