カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

「パラサイト」@ルワンダ

ルワンダフツ族ツチ族による虐殺が1994年に起きたことで知られた地域だ。『文明崩壊』にルワンダ虐殺の経緯が詳しく書かれているが、その中でたいへんに興味深い記述があった。
ルワンダは現在も農耕社会だ。人口密度は高いが、農耕技術は未熟で、各人の農地はきわめて狭い。

コミューン〔共同体、村〕のすべての土地はすでに占有されていたのだから、若者たちにとって、結婚して家を離れ、農地を手に入れて自分の世帯を整えるのは困難なことだった。しだいに、若者は結婚を先延ばしにして、親もとで暮らし続けるようになった。例えば、二十〜二十五歳の年齢層では、親もとで暮らし続ける若い女性の比率が、一九八八年から一九九三年の間に三九パーセントから六七パーセントに増え、若い男性の比率は七一パーセントから一〇〇パーセントに増えた。一九九三年には、親もとを離れて暮らす二十代前半の男性はひとりもいなくなったのだ。そのことは明らかに、次に解説する破滅的な家族間の緊張を生み出す一因となり、一九九四年の激発へとつながった。(下巻75-76p)

この記述を読んで、パラサイトとか晩婚化とかは単に若年層の「貧困化」でしかないのだな、と思った。アフリカのルワンダでも農地が足りなくなり貧困化したとき、「パラサイト化」が発生し、それが限界点を超えたとき「虐殺」が起きた。「パラサイト化」は当人の意欲の問題等ではない。単に貧困化の問題だ。

この大量虐殺〔ルワンダ虐殺〕は、現代の支配層がみずからの権力維持を目的として、意図的な選択のもとに憎悪と恐怖を呼び出した結果生じたのだ。(下巻69p)

日本でもルワンダ同様、貧困化した人々を憎悪感情で煽ろうとする人々がいる。本質的背景である失業問題・貧困化問題から目を逸らさせ、フツ族ツチ族の憎悪をエスカレートさせたように、本質とは無関係な憎悪を煽ろうとする人々が。

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

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