カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

呪縛

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http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20100404#1270389433 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20100402#1270139749の続き。
私の前半生の生活環境は色々なものが狭く、接する人間の数が著しく限られ、そのため社会常識を欠いて私は成育した。エロマンガ家の分際で「児童ポルノ法」に関わったりロビー活動したりというのは、ステータスといった常識を欠いていたので相手にビビらなかったからだというのは一つある。議員には道理が意外に通じると知ったのはこちらの発見だった。*1
我が家は自営業であったので、私の前半生の生活時間のほとんどは家業の単純肉体労働で潰された。同級生はヤンキーで酷いやつばかりだったので、村の人間とはほとんど付き合いを持たなかった。親戚も自営業者ばかりだった。いわゆるサラリーマンな家とのつきあいはほとんどなかった。父の弟たちはサラリーマンとサラリーマン経験者だったが、体を壊したりして、あまり出世成功していなかった。
我が父は悪人ではないが、私と仕事を一緒にしているとき、「偉くなろうと思うな」「偉ぶっている奴は最低だ」ということを折に触れて言っていた。その影響は父が思っている以上に私に強かった。父のその台詞は一面において真理だが、その言葉は私に社会的権威や威信のあるもの一切への軽蔑感と嫌悪感を刷り込んだ。
我が父母は「勉強しろ」と私に言ったことは一度もなかった。勉強とは父母にとって遊戯に似た何かだった。少なくとも私はそう感じていた。私としては、遊戯にしては楽しくないことがあまりに多すぎ、苦痛の多い何かだった。
私の受験勉強期間は1年半、ラジオ講座以外ほとんど独習だった。私の通える範囲に受験予備校なんてなかった。父母は受験勉強の邪魔はあまりしなかった。家業の手伝いをさせることを、その1年半の間、父母は控えた。そのことはずいぶん恩義に着せられた。受験勉強は家業の単純肉体労働をしないことへの負い目を感じながらの独習だった。父母は機会あるごとに負い目を感じさせた。父母に悪意はなかったが、単純肉体労働>学習(頭脳労働) という価値観を私に刷り込ませた。
合格した時父母は喜んだが、何に喜んでいるのか私には分からなかった。村に大学生進学者は少なく、見栄として喜んでいたと感じた。
大学に進み、以前書いたように、鬱な状態になった。思うに、大学というところは「偉くなりに行く」ところで「偉くなろうと思うな」という私に刷り込まれた価値観との間にコンフリクトが起きたのだと思う。「田舎に帰ってこないのは親不孝だ」と父母は言っていた。どういう意味で言っていたのか分からない。前後の文脈から東京で就職するな、という意味だと理解していた。大学で勉強すると「偉く」なってしまう、という矛盾は、「大学で勉強しない」という行動を選ばせた一つの要因だ。私の進学が人文科学系ではなく社会科学系だったらコンフリクトが起こりにくかったかもしれない。
私が学生の時、何かの法事で、その出席者の一人に工学博士がいる、と、父が私に教えた。「あれはすごく貧乏をしている、ああいう人間になるな」と私に言った。私の前半生の周辺は失敗例と反面教師だけ腐るほどあり、成功例が少しもなかった。学生の頃、最も苦しんだのは、私にはロールモデルがなく、憧れの対象を持てなかったことだ。
私が社会的地位とか収入とかについての常識を得たのは30歳を過ぎてからだ。マンガ規制反対運動に関わり、社会的地位による扱いの差というのを体で覚え、枝野幸男という尊敬に値する存在を知り、天ぷら学生して、やっと世の仕組みが理解できるようになった。
学生をしていた当時は、弁護士とか大学教授とか政治家とか官僚とか、そういう社会的威信のある全てのものへ嫌悪感と軽蔑感を持ち、それ以前にそれらが社会的威信のあるものだとすら気づかなかった。それに気づいたのが30歳を過ぎてからだった。手遅れだ。残念だ。
私の学生当時、父母は「息子は東京の大学で勉強して偉くなるはず」と思っていたらしい。そういう視点に私が気づいたのはごく最近だ。「偉くなれ」と言われたことは一度もなく、「偉くなろうと思うな」とは何度も諭されていた。父母が予想した以上にその価値観は私に骨肉化し、「偉く」ならないよう行動を選択し、成功することを避けるようになった。父母は要求の矛盾に気づいていない。父母は社会的地位などに酷く疎いので、妹が社会的地位の高い仕事に就いたことにも無頓着だ。妹がかなり高給取りであることにも無頓着だ。なので妹を傷つけることを平気で言い、妹と父母の折り合いは、私と父母の折り合いが悪いのと同様に悪い。父母との仲が良好でないのが心に影を落とし、妹もいまだに独身だ。父母は悪人ではないが自己撞着が激しく、感情移入能力が弱く、世間が酷く狭く、そのため、私と妹はムダな苦労を背負った。残念だ。
関連 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20070119#1169154250 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20070901#1188593463 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20091103#1257184620 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20080517#1211034580

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散々恨み言を書いたが、今思うと、塾講師業が軌道に乗って小銭を得るようになった時に社会人入試をさらにもう一度受験すればよかったんだなhttp://d.hatena.ne.jp/kamayan/20100124#1264284075。自分は気づくのが遅すぎる。

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*1:議員には道理が通じる、という事柄は、現在のオタク同志諸姉諸兄にはわりと感覚的に受け入れやすい事柄だと思うが、13〜14年前にはオタクと国政が完全に分断されていて、「国政に道理が通じるわけがない」という偏見が強かった。