カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

マンガの一発ギャグにおける「卍の法則」その他

昔、『サルまん』でギャグマンガには法則がない、という章があって、「ちんぴょろすぽーん」というギャグを仮にあみだしてお滑りになられた、ということがあった。以上うろ覚えで書いているから間違っていたら許せ。
ところでマンガの一発ギャグには「卍の法則」というのがあると私は思っていて、以下ざっと説明する。
ニコニコ動画で「キタキタ踊り」がプチブレイク中である。


この踊りで思い出したのだが、「マンガでのヒットしたギャグ」には、身体を卍型に捻ろうとする動きが散見できる。「キタキタ踊り」はその一例であり、『がきデカ』の「死刑!」はその典型である。パッと思いつくところでは変態仮面『THE MOMOTAROH』の「もんがもんが」もその類型である。いずれも身体を「卍」に動かそうとしている。「卍」に身体を動かすというのは不可能ではないが意外な動きであり、生きていく上で全く無意味な動きである。よってそこに滑稽味が生じる。〔追記。「クックロビン音頭」も類型の一つですね。〕
ギャグの言葉というのは、7・5調、もしくは5・7調が基本であり、より短く発話する場合、4字以下というのが原則である。4字以下であるのは「覚えやすい」ために必要であり、7・5調、5・7調はリズムの上で適切である。例としては、『がきデカ』ばかり思い出すのだが、『にゃおんの恐怖』であり『八丈島キョン』であり『鶴居村から鶴が来る』である。
ギャグの言葉というのは、「無意味+有意味」が基本である。先の『がきデカ』でのヒットフレーズはその類型であり、「キタキタ踊り」という言葉も「無意味+有意味」の類型である。
以上、80年代くらいまでのギャグの法則であって、90年代以降はこういうのも崩れているというか別次元に飛んでいるんだけど、90年代以降の代表的ギャグ作家として吉田戦車を思い出したが*1吉田戦車も「無意味+有意味」のバリエーションというか、個別の意味は間違っているわけでもないし、状況単体も間違っているわけでもないが、組み合わせが変、という、思えばシュールレアリズムの基本に立ち返った作家だなあ、とか思ったが、以上投げっぱなしで筆を置く。
こういうことを「判る」のと「できる」との間には深くて暗い溝があるけど、若くて才気ある方にとって何かしらヒントになれば幸い。*2
[08/21 20:35]「卍型の動き」については『サルまん』の「ちんぴょろすぽーん」のところに記述があったかもしれない。手元に今ないので確認できないが。

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画像は http://piapro.jp/content/0htjedxm9f01w43i から。

*1:と書いてから吉田戦車の活躍年代が90年代以降なのかどうか急いで検索した。80年代後半にはデビューし80年代末にはブレイクしているが、一応90年代の作家とカテゴライズできなくないと思うのでこのままにしておく。

*2:それはそれとして、山上たつひこと『がきデカ』は再評価されてしかるべきだと思う。あれは当時マンガ好きではない人相手にヒットしすぎて、かつ実は高尚というか奥深過ぎて、幼い頃の私にはピンとこないところがあり、同時代の『少年ジャンプ』などのもっと洗練されていないギャグマンガのほうが当時の私にはしっくりきたが、100年後の歴史に残るのは『がきデカ』だと思う。当時爆発的にヒットしたが、実は読者を選ぶマンガである。未読の方はぜひ一読されたし。一読して体に合わないと思ったら20年後に読み返すと再発見が唸るほどあること請け合い。などと書いているわりには『中春こまわり君』を未読な俺。