「調査報告:日本の漫画やアニメが、海外から「児童ポルノ」として批判を 受けているという構図はいかにして作られたか?」@コンテンツ文化研究会
以下メモする。
http://icc-japan.blogspot.com/2008/11/blog-post_28.html
2008/11/24
調査報告:日本の漫画やアニメが、海外から「児童ポルノ」として批判を 受けているという構図はいかにして作られたか?
現在、日本ユニセフによって「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンが実施され、彼らはマンガやアニメを「準児童ポルノ」として違法化するよう各界に呼びかけています。このキャンペーンの中心人物にECPAT/ストップ子ども買春の会(以下、エクパット東京)の宮本潤子氏がいます。
このエクパット東京は児童保護・児童ポルノの専門NPOとして各界で活躍しており、警察の総合セキュリティ対策会議にも招聘されるほどです。このエクパット東京はプロテスタント原理主義団体「キリスト教婦人矯風会」が背景にあるNPOで、その禁欲的な教義から、性表現の規制を団体主張に掲げています。特に漫画やアニメの性的表現に関しては、児童ポルノ禁止法などで全面規制せよ、と強く主張しています。
その代表である宮本潤子氏は事あるごとに「日本は児童ポルノ大国である」と公言し、海外から規制の圧力をかけるよう様々な働きかけ、いわば“マッチポンプ”活動を行ってきました。その経緯は以下のようになっています。
2005年6月12-13日にタイのバンコクで、国際エクパット主催の国連総会(2006年)に向けた「子どもに対する暴力」調査報告のための『国際ECPAT円卓会議』『アジア太平洋地域協議会』が開催されました。これは国際ECPATが欧米やアジアから児童虐待問題の専門家20人を召集した国際会議でして、エクパット東京の宮本潤子氏も参加しました。 この中で宮本潤子氏はInternet child pornography, virtual imagery such as 'morphing' and manga drawings, and other depictions of child sexual abuse
「インターネット上の児童ポルノ、仮想イメージ(例えば『モーフィング』とマンガ図面)、そして子供を性的虐待した他の描写物」
(出典:『Scoop Independent NEWS 「June 12-13 - Violence Against Children Meeting」』 より引用URL: http://www.scoop.co.nz/stories/WO0506/S00092.htm)とマンガがあたかも実在の児童を性虐待して作られた成果物であるかのような報告をしています。これに先立ってエクパット東京は2005年3月に英国出身の臨床心理学者で、アイルランド・コーク大教授のエセル・クエール博士を日本に招いた際、彼女を東京の秋葉原に連れて行き、日本のマンガやアニメをバッシングする発言を引き出すのに成功しました。
こうしてエクパット東京の強い影響を受けたクエール博士は、来日より3ヶ月後に開かれた上記国際エクパットの会議においてMeanwhile, agreement is lacking within and between communities on definitions, laws and perceptions of what is appropriate, such as when children are sexualised within mainstream media or where abuse images remain legal, as in the case of some manga products in Japan.
「 一方、合意は、主流メディアでの子供達の性描写、またはいくつかの日本のマンガに見られるように、虐待画像が合法なままになっている箇所に対しての、適正な定義、法律及び認識がコミュニティ内で不足しています。」
(出典:『地域会合報告書』P45より引用 URL:http://www.violencestudy.org/IMG/pdf/EAP_Reg_Cons_Report_on_VaC.pdf)と、日本のマンガを違法化するよう提言まで出しています。特に注目すべきはECPAT主催のテーマ別会合で、これにはエクパット東京の宮本潤子氏と「ECPAT/ストップ子ども買春の会ユースα」の網野合亜人(当時18歳)が出席、その報告書『Violence against Children in Cyberspace (サイバー空間における子どもに対する暴力)』で驚くべき記述がなされます。
ECPATテーマ会合「VIOLENCE AGEINST CHILDREN IN CYBERSPACE」報告書P32より抜粋
In some countries, material known as ‘virtual pornography’ is legal and big business. In Japan, for example, a report analysing developments in the country’s computer contents market (including software and publications such as comics) gives an indication of the business value of child abuse illustrations and cartoons in some anime or manga materials.The analysis estimates the market for moe products (books, images and games), which are related to anime and manga, was worth 88.8 billion yen (US$800 million) in 2003.
The term moe is used in a neutral sense for economic analysis. But taken literally it refers to a fetishist sexual attraction that some fans of computer games, anime and manga have for female child characters, who may be depicted in pornographic and erotic contexts within games, animations and illustrations.
Moe web pages sometimes link to other pages containing images, stories and chats in which very young characters are the objects of sexual violence, abuse and fantasy.A proportion of the moe market may therefore be regarded as related to child sex abuse images. The report expected the market for moe products to expand.
「いくつかの国では、『仮想ポルノ』が合法かつ大きいビジネスとして知られています。日本で、たとえば、国のコンピューター関連市場(ソフトウェアと出版物(例えばコミック)を含む)の成果を分析しているレポートは、いくつかののアニメまたはマンガを題材に児童虐待具体例と漫画のビジネス価値の徴候を示しています。分析は、萌え製品(本、映像とゲーム)(それはアニメとマンガに関連があります)の市場が2003年に888億円(8億米ドル)の価値があったと見積もります。 「萌え」という用語は、経済分析のために中立不偏の感覚で使われます。しかし、それは文字通り、コンピューターゲーム、アニメとマンガの一部のファンに対し、女児のキャラクター(美少女キャラ)の性倒錯的な魅力を与える事を意味します。萌えWebページは、時々、物語やチャットの中で未成年のキャラクターが性的暴行、空想と虐待の対象となっている映像を含んでいる他のページにリンクします。したがって一部の萌え市場は、子どもへの性的虐待の映像に関係があると見なされています。レポートは、萌え製品の市場が拡大するのを予想しました。」ここで参照されている「萌え」レポートとは、浜銀総合研究所 信濃伸一氏による2005年4月1日発表の『2003年のコンテンツ市場における「萌え」関連は888億円』というレポートです。これは日本のコンテンツ産業市場において、いわゆる「オタク文化」「秋葉原文化」がどう位置づけられるか、経済学的観点から行ったもので、このレポートではで「新世紀エヴァンゲリオン」といった1997年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した作品などを取り上げ、日本のコンテンツ産業の現状について解説しています。しかしこれをECPAT報告書では、まるで児童を性的虐待することによって、日本が莫大な経済的利益を得ようとしているかのような印象を与えるべく紹介しているのです。
(用語解説: 萌え(もえ)とは、一部文化において、アニメ・漫画・ゲーム等様々な媒体における、対象への好意・傾倒・執着・興奮等のある種の感情を表す言葉)
この論調は、地域会合後のフォローアップ事業として立ち上げられたViolence Against Children East Asia and the Pacificというサイトのオンラインニューズレターでも同様です。これの第4号がECPAT責任編集のサイバースペース問題となっていますが、これの 4ページに、ECPAT/ストップ子ども買春の会ユース所属の綱野合亜人氏(20歳)が登場して、意見を述べています。ここでもメイド喫茶、オタク文化といったものが児童の性的虐待を促すものとして否定的に紹介されている。以下に、その該当箇所を抜粋します。Japan has recently seen a rise in popularity of “maid cafes”.
When you enter these unique cafes, girls wearing maid uniforms greet you saying,
“Welcome back, my master.” Then they cater to you with food and drink, still treating you as a master.
This type of cafe was created by the otaku culture (it literally means maniac people) who are into animations, comic books, computer and online games, some of which may contain child pornographic representations. About two years ago, Japanese mass media picked up this movement, and since then more and more people have become involved in the cafes and otaku culture.
This means that many people, including children, are beginning to see child pornographic images through otaku culture as natural. Children have less opposition to online sexual propositions. Shockingly, Japanese children are now starting to post their own naked pictures on the Internet.
「日本では最近『メイド喫茶』が流行してきています。この独特な喫茶店に入ると、メイド服をきた女の子が「お帰りなさいませ、ご主人さま」と挨拶をしてきます。そうして料理や飲み物を出される時にも主人として扱われます。この種の喫茶店はオタク(文字通りマニアックな人々のことを言います)文化によって生み出されました。オタクはアニメや漫画、コンピューターやオンラインのゲームに夢中になっていますが、その中には、児童ポルノ的な表現が含まれている場合があります。二年ほど前、日本のマスメディアはこれらの動きを取り上げました。それ以来、より多くの人々がこういった喫茶やオタク文化に関わるようになってきています。このことは、児童も含む多くの人々がオタク文化を通じて自然に児童ポルノ的な画像を見始めていることを意味します。児童たちはオンラインでの性的な誘いに応じやすくなっています。ショッキングなことに、日本の児童たちは今や自分たちの裸の写真をインターネットに投稿し始めているのです。」こうした働きかけをしたのはいうまでも無く、エクパット東京の宮本潤子氏で、彼女の規制要求はそのまま国際エクパットの日本ついての報告書に掲載されるようになりました。
●国際エクパット 2006年報告書
『Global Report on the status of action against commercial sexual exploitation of children ― Japan ―』
P11(右上)より抜粋
Matchmaking or dating websites have become a well-known channel for commercial sexual exploitation of children (CSEC) in Japan.Many underage Japanese schoolgirls fall prey to ‘enjo kosai’ (‘compensated dating’) by using ‘deai kei’ websites:through which they can make their contact details available, and use pagers, computers and mobile phones (the most common method)to arrange ‘dates’ with customers who are older and often married.Research has shown that many such girls do not engage in ‘enjo kosai’ out of poverty, but rather to be able to purchase brand name clothes, bags, shoes, mobile phones, etc., which, according to them, boosts their self-esteem.They often come from dysfunctional families (sometimes middle-class) or experience problems at school.Some of them suffer the additional abuse of being videotaped during sexual activity.
男女交際を仲介しているウェブサイトは日本の子供たちの商業性的搾取(CSEC)の有名なルートになりました。 多くの未成年の日本の女子学生は‘出会い系’ウェブサイトを利用することによって”援助交際”(補償のあるデート)の犠牲になります。‘出会い系’ウェブサイトによって、彼女らは連絡先の詳細を提供し、年配のしばしば結婚している顧客とポケベル、コンピュータ、携帯電話(最も一般的な方法)を使ってデートの手配をします。研究はそのような少女達が貧困から”援助交際”しているのではないことを示しました。しかし、ブランド服、バッグ、靴、携帯電話など、その他を購入できるようになるために従事しており、それにより彼女らは自らのは自尊心を高めます。彼女らはしばしば、機能障害の家族(時々中流階級)か、学校での問題を抱えています。その何人かは、性行動をビデオテープに録画されることでさらなる虐待を受けます。
Pornographic images featuring children from other Asian countries are sold in some public places and on the Internet, taking advantage of the loopholes in the anti-CSEC law enacted in 1999 and amended in 2004.Furthermore, child pornography is widely seen in ‘anime’ or ‘manga’ (Japanese comics) and in computer games,which are available in bookshops and convenience stores and often depict female child characters in pornographicand erotic contexts.Sections of civil society, including producers and consumers of child pornography, some academics and lawyers,seem to be desensitized and accepting of this form of child pornography on the grounds of ‘freedom of expression’, which is prioritized to the detriment of greater protection for children.They argue that there are no actual victims or real children portrayed in such materials,and fail to grasp the implications that their availability may have on public attitudes towards children and onsexual crimes against children.Even though little research has been conducted in Japan to demonstrate such inter-relationships,studies undertaken in other regions of the world have clearly exposed it.
他のアジア諸国から子供たちを主演させているポルノのイメージは1999年に制定され、2004年に改正された児童ポルノ法の抜け道を利用して、若干の公的な場所とインターネット上で売られています。さらにまた児童ポルノは『アニメ』または『マンガ』(日本の漫画本)の中で、そして、コンピューターゲームにおいて広く見られます。そして、それは書店とコンビニエンスストアで利用でき、ポルノでエロチックな状況の女児を描写しています。市民社会(一部の研究者と弁護士、児童ポルノの製作者と消費者を含む)の階層は鈍感になっており、『表現の自由』を理由にこの形の児童ポルノを受け入れているようです。そして、それは子供たちのより大きな保護を損なうほどに優先します。彼らは、そのような品には実際の犠牲者または実在の子供たちがいないと主張し、子供に対する公の姿勢および子供に対する性犯罪でそれらの有害性が持つ可能性を理解しません。たとえそのような相互関係を示すための実験が日本でほとんど行なわれていなくても、世界の他の地域で行われる研究は有害性を明らかにしました。
Priority Actions Required:要求されるプライオリティー・アクション(以下、同報告書、P22三段目より抜粋)Japanese law on child pornography needs to be reviewed as a matter of urgency.It is imperative that simulated child pornography images be prohibited - given their wide availability in the country in the form of 'manga' , as there is evidence to suggest that such images promote sexual violence against children.Furthermore,the mere possession of child pornography must be criminalised.The law must also include audio materials and the depiction of parts of a child.
児童ポルノに関する日本の法律は、緊急の問題として概説される必要があります。シミュレーションされた児童ポルノ・イメージが禁止されることは ― そのようなイメージが子供たちに対して性的暴行を促進することを示唆する証拠があって『マンガ』の形の国の彼らの広い有効性があれば ― 避けられないです。さらにまた、児童ポルノの単純所持の違法化、児童ポルノの定義に「音声」と「児童の一部分を描写したもの」も含まねばなりません。海外から日本のマンガやアニメが批判されているという記事が時折出ますが、これらは全てエクパット東京によるいわばマッチポンプといわざるを得ません。日本ユニセフの「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンに公開質問状を送った、インターネット先進ユーザーの会(MIAU)の崎山伸夫氏は次のように述べています。
「こうしたマンガ・アニメ叩きが国際的なNGOやユニセフのメンバーからなる対児童暴力防止運動の流れの中で一定の賛同を得て、今回の日本ユニセフ協会のキャンペーンでの「準児童ポルノ」違法化の要望へとつなげた流れが、(宗教保守的なブッシュ政権下のアメリカからの流れとは別に)あるのだと私は考える。とにもかくにも、彼らは極めて熱心に日本のマンガ・アニメカルチャー、にとどまらず、萌え・オタクといった文化領域に、継続的な攻撃を仕掛けてきていたのだ。」
そして彼らによるマンガやアニメなどへの国際的なネガティブキャンペーンは、今後も続くと思われます。現在開かれている2008年11月にブラジルの都市リオデジャネイロにて開催される「第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」においても、それは同じでしょう。エクパット東京、宮本潤子氏のマッチポンプにより、日本への国際的な批判という外圧が生み出され、それがいわれのない「児童ポルノ大国」というレッテルや規制強化の流れが形作られているのです。こうした流れをどう断ち切るかが、今後の改正論議にかかってくると考えられます。
参考:崎山伸夫のBlog「ECPATはいかにしてユニセフをたらし込んだか」
http://blog.sakichan.org/ja/2008/03/21/how_ecpat_won_unicef_over