枝野幸男vs柳沢伯夫/厚生労働省の利権と社会保険庁
http://d.hatena.ne.jp/hagakurekakugo/20070914/p2経由。ニコニコ動画 http://www.nicovideo.jp/watch/sm1056008
以下メモする。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009716620070516020.htm
第20号 平成19年5月16日(水曜日)
○枝野委員 何で国家公務員法上の公務員じゃなくなると効率的になるのか、小学生にもわかるように、短く簡単に答えてください。〔略〕
○枝野委員 そんなに民間の方が立派だったら、自衛隊も警察も民間にすればいいのになと思いますけれども。今の話はうそですね。人事院に来ていただいています。国家公務員法、勤務成績が悪い者、サボっていいかげんな者、あるいは能力に欠ける者、適格性を欠く者、降格できますね、首にできますね。あるいは、予算の関係、財源の関係、このままでは財政が破綻する、首にできますね、国家公務員法では。違いますか、人事院。
○鈴木政府参考人 お答えいたします。国家公務員が免職等をされ得る場合としては、職務上の義務違反などの場合に、国家公務員法の第八十二条に基づいて、懲戒処分として免職等が行われる場合がありますほか、懲戒の意味を持たない処分といたしまして、いわゆる分限処分といたしまして免職等が行われ得る事由を国家公務員法は明定しております。これは、成績主義の原則のもと、職員が、全体の奉仕者として情実に左右されずに職務を行い、恣意的にその職を奪われるということがないようにするというものでありまして、公務の中立性、安定性を確保して、その適正かつ能率的な運営を図ろうとする趣旨によるものでございます。具体的には、おっしゃいましたように、国家公務員法第七十八条では、降任及び免職の事由につきましては、勤務実績がよくない場合、心身の故障のため職務の遂行に支障等がある場合、官職に必要な適格性を欠く場合、定員の改廃等により過員等を生じた場合の四つを規定しているところでございます。いずれにいたしましても、個別の処分に当たりましては、法律や人事院規則の規定にのっとって、事実等に基づいた判断により、裁量権の濫用にならないよう適正に行われることが必要であると考えております。
○枝野委員 やっていないのは管理者なんですよ。能力がない、いいかげんなことをやっている、そういう公務員を首にしてこなかったのは管理者なんですよ。大臣であり、長官であり、地方の場合は知事や市長であり、制度のせいにしてはいけないんですよ。やってこなかった行政執行担当者の責任が、見識が問われているんですよ。通用しない、おかしな職員がいたら首にすればいいんです、ちゃんと規定はあるんだから。逆を聞きます。民間企業だったら勝手に首を切れるんですか。
○松野大臣政務官 民間企業における解雇につきましては、労働基準法の第十八条の二に規定がありまして、具体的には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」というふうにされております。このように、民間企業におきましては、労働者を解雇できるかどうかは、この規定に沿って、最終的には個別具体的に判断をされるということでございます。
○枝野委員 メディアの皆さんも含めて、世の中に勘違い、間違いはあるんです。民間企業だったら首が切りやすい、降格させやすい。能力のない者はおろす。やる気のない者は降格させる、首にする。民間の方がやりやすいというのは大きな間違いです。常識のうそです。やってこなかった行政執行担当者の能力と意欲の問題なんです。やればいいんです、民間と同じように、社会保険庁だって不祥事はたくさん起こっているんですよ。あるいは、やる気がなくていいかげんな仕事をやってきた人はたくさんいるんですよ。分限処分、しましたか、していないじゃないですか。まず分限処分をしてくださいよ。おかしな話じゃないかと思いますよ。
政権を担っているのは、行政執行権限を持っているのは、少なくとも、社会保険庁に絡む行政執行責任を担ってきたのは、一九五五年以降、二年間を除いて全部自民党なんですよ。自民党がやる気がなかったんですよ。地方公務員の場合だって、圧倒的多数の知事や市長は、あるいは議会は、自民党が多数なんですよ。そこがちゃんと首にしなかったんですよ。そこのところを制度のせいにしてごまかさないでいただきたい。
その上で、ではほかに、民間になったらいいことがあるんですか。給料はだれが払うんですか。確認しますが、給料は税金と保険料ですね。確認です、一言でいいです。〔略〕
○枝野委員 いいですか、答弁が長いから、こちらから言っていきますよ。国家公務員法上の公務員ではなくしても、仕事の中身は公務なんです、公務を担う者なんです。給料は、全額税金あるいは一部保険料、公金で賄われるんですよ。売り上げからじゃないんです。自分たちが努力をしたら収入がふえるという売り上げからではないんです。一方で、国家公務員法上の公務員でないことによって何が起こるのか。天下り規制が及ばない。社会保険庁から、関連する公益法人、関連するさまざまな民間企業、非公務員型というその一点で、幾らでもできるようになる。国の責任や関与が間接的になる。国会に対する出席義務がなくなる。焼け太りというんですよ、こういうのを。では、国家公務員法上の公務員じゃなくなることで何かプラスがあるんですか。先ほど申しましたとおり、首にする、降格させる、こんなことは、民間だって公務員だって、制度上は同じような仕組みで担保されているんですよ、できること、できないことは。やってこなかっただけなんですよ。結局、国が関与してトップを決めたら、同じやり方じゃないですか。私は、民営化できる役所は民営化すべきだと思います。徹底して小さな政府にすべきだと思います。一般論として、役所よりも民間企業の方が効率的だと私は思います。でも、それには理由があるんです。民間は競争にさらされているんです。日本年金機構は、競争関係にある業務を担うそうした機関、組織はありますか。簡単に答えてください。〔略〕
○枝野委員 〔略〕民間企業は競争相手があるんですよ。自分のところがしっかり仕事をしなければ別のところに移るんですよ。電電公社はNTTになって、auとかソフトバンクとか、名前は途中でいろいろ変わっているけれども競争相手があって、いいかげんな仕事をしていたらauにシェアを奪われるんですよ。競争関係がある、これが民間なんです。だから頑張らざるを得ないんですよ。JRだって、競争相手のない部分はあるかもしれないけれども、東武鉄道や西武鉄道と競争があるんですよ。あるいは長距離便は、JALやANAとの競争があるんですよ。代替があるんですよ。ちゃんとやらなければ自分のところがつぶれてしまう、そういう状況にあるから、民間企業の方が役所よりも効率的な運営が行われる。だから、できるだけ官は小さくする、役所は小さくする、私はそうだと思います、そこは大賛成なんです。競争相手のない民間だなんていうのは、民間じゃないんですよ。ちなみに、これも、大臣、答弁が長過ぎるんです。事実関係だけ聞きますから。倒産法制、破産法制は予定されていますか、この機構に。ありませんね。どんなにいいかげんな仕事をしても、どんなにむちゃくちゃな仕事を続けても、国会のチェックもいいかげんにしか働かなくなる、国民からますます見えにくくなる、でも給料は税金で確保されるんですよ。民間企業というのは、いいかげんなことをしたら、倒産をして、失業をするんです。民営化、非公務員型というんだったら、倒産法制をくっつけてください。どうですか、大臣。
○柳澤国務大臣 〔略〕国家機関と比較するのは民間会社、こういうことでございますが、その間に独立行政法人というものが現に存在しておるわけです。私どもが……(発言する者あり)いや、特殊法人、不規則発言にお答えするのはあれなんでございますが、独立行政法人という形態であります。それで、独立行政法人のうち、独立行政法人というのは、ある種固有名詞でもあるんですけれども、一般名詞なんですよ。それで、特殊法人というのは、独立行政法人形態の一形態なんですね。それで、そういうものでございますので、私どもは、いわば一般名詞としての独立行政法人の形をとっているということです。ただ、なぜ独立行政法人という名を冠しなかったかといえば、これは、厚生労働大臣の保有する権限をそのまま行わせるわけでございますので、総務省のようなところでこれを監督するということは、これはふさわしくない、厚生労働大臣がきちっと監督をしなければいけない。こういうことで、今回は特別の法律を制定して、ということがイコール特殊法人という独立行政法人の形態をとっているということでございますが、そういう形態をとっているということでございます〔略〕。
○枝野委員 今の答弁は、非常にいい答弁をしていただきました。結局、厚生労働省から手放したくなかったんですよ。今、そういう答弁でしたね。つまり、これだけ不祥事を起こしたんだけれども、何十兆というお金を扱う、当然その保険料まで事務費に流用する。流用したお金で例えば事業を発注する、公共調達をする。利権が発生するじゃないですか、天下りが発生するじゃないですか。その天下り規制を逃れさせる。こんなもの、財務省に持っていかれたら、厚生労働省の利権がなくなる。だから、何が何でも厚生労働省のもとの機関にしなきゃいけなかった。でも、それでは通用しないから、名前だけ、肩書だけ公務員じゃないことにする。でも、中身は一緒じゃないですか。
私は、独立行政法人という仕組みは否定しませんよ。独立行政法人という仕組みがあっても全然構わない。だけれども、まさに社会保険庁が問われているのは、長年にわたって社会保険庁というこの小さな箱の中で、よどんでしまっておかしなことになって、せっかく民間からトップをお迎えしたけれども、それでもなかなか改革できない。だから今回改革なんでしょう。結局、厚生労働省のもとで形だけ少しばかり分割したって、保険料徴収という軸になるところ、コアな部分のところをそっくり残して、そっくりそのまま肩書、名前だけ変えて、何が変わるんですか。本当に民営化するんだったら違うかもしれません。競争があって、倒産するかもしれない。いや、例えば年金機構みたいなそういう独立行政法人を十個、二十個ぐらいつくって、徴収の効率の悪いところはどんどんつぶれていきます、民間からも参入します、こういうのを民営化というんですよ、こういうのを非公務員というんですよ。税金で給料をもらって、競争がなくて、倒産することがありません、行う業務は公務ですと。目標設定をして、その目標の達成度に応じて云々かんぬん、そんなことは社会保険庁のままでもやってなきゃいけなかったのを、今までやってこなかった責任はどうなるんですか。社会保険庁ではできないんですか。今までだってやってきたじゃないですか、納付率を上げる目標設定してやってきたじゃないですか。それに基づく能力主義、成果主義の人事、今の公務員法だってできるじゃないですか。やってこなかったじゃないですか。何で看板をかけかえたらできるようになるんですか。看板をかけかえたらできるようになる、いや、看板のかけかえをするということについてのいろいろな説明をしているけれども、では、そのことによってよくなるということの説明は、一切きょうは出てきていないですよ。何がよくなるんですか。答えてください。〔略〕
○枝野委員 いいですか、計画管理だなんというのは役所だってやらなきゃいけないんですよ。やってこなかったんですか。やってこなかったことの方が大問題じゃないですか。中期計画を立て、年度計画を立て、やっているのが当たり前じゃないですか、役所だって。やってこなかったんですか。
人事、弾力を持つ人事をやればいいじゃないですか。今の公務員法、だれもとめていませんよ。どこもとめていませんよ、法律上。何でやってこなかったんですか。
仕事の仕方、それは公務員だって、役所だって、民間の仕事の仕方でいいと思ったらやればいいじゃないですか。だけれども、これがやられてこなかったんです、厚生労働省のもとでは。
ますます厚生労働大臣の権限が一種強まるんですよ、国会の監督が弱まるんですから。国会の監督が弱まって、厚生労働大臣の監督だけになるんですよ。それはもう厚生労働省、万々歳ですね。そこから先の天下りはやりたい放題。税金、保険料、先ほど来の話のとおり、結局は事務費と名がつけば何でも流用し放題。まさに、離れですき焼きができる仕組みをよくうまいことつくりました。
それじゃ格好がつかないから、名前だけ非公務員にした。本当に非公務員ならば、仕事に失敗したら、効率悪い仕事をして信頼を失ったら倒産をする。民間企業の皆さんはみんなそういう状況の中で頑張って働いているんです。自分たちがしっかりと効率よく収入を上げなければ自分のおまんまが食えない、これが民間企業なんですよ。非公務員型と威張るんだったら、年金機構もそういう仕組みにしてくださいよ。
民間企業のように競争も働かない、民間企業のように倒産することもない、そういう状況の中で、今までできなかった計画管理や柔軟な人事や民間的な仕事の仕方が、民間のトップをお迎えしてもできなかった組織が、名前を変えて、肩書だけ変えて、看板だけかえてなぜできるようになるのか、そのことを説明してくださいと聞いているんです。
○柳澤国務大臣 枝野委員も、独立行政法人というのは私も認めると先ほどおっしゃいました。私どもはその独立行政法人の組織形態をとるということでございます。〔略〕
○枝野委員 僕は、独立行政法人だったら効率化されるだなんて今一言も言っていませんよ。これについてじゃなくて、一般論として独立行政法人という仕組みがあり得る、それは認めますよ。それはやはり競争原理を働かせる公務はあるんですよ。例えば、国立大学を独立行政法人化した、これはあり得ると思うんですよ。各大学相互で競争が働きます。だけれども、やはり私立の大学とは違った意味での国立大学という存在は必要だろう。これは競争が働く。競争が働く、だから独立組織にして、独立採算的な要素にして競争をさせる、これは独立行政法人にしたということについて一定の意味があると思いますよ。
しかし、まさに役所の大臣の権限そのものをそっくりたった一つの組織に移して、お金は、人件費から何から全部税金で丸抱えをして、単に看板をかけかえただけじゃないですか。何が効率化をするですか。これで効率化ができるなら社会保険庁のままでも効率化はできる。我々はそう思っているわけじゃない。そもそも、厚生労働省の利権の中に入っているからだめなんですよ。何でこの機構だけは総務大臣のもとじゃだめか、まさに厚生労働省の利権を守りたいんですよ。お金を集める仕事としては税務署と一緒なんだから、これはこれで柳澤さん、それはそれで個人的にはいいかもしれないけれども、むしろ財務省に持っていった方がいいぐらいの話じゃないですか。だからこれは問題だし、まやかしだし、ごまかしだ。よくなるどころか、現状と一緒だったら、まだ我々もこんなに反対しない。〔略〕
○枝野委員 しかしながら、今より悪くなるんですよ。社会保険庁と機能はほとんど一緒、人事管理などに対する法的仕組みは一緒、競争がないことは一緒、人件費は税金で担保されていることも一緒。だけれども天下りはやり放題、だけれども国会の関与は間接的で、国会に対する出席義務もない。まさに今よりもやりたい放題できる改悪、大改悪法案である。このことについては、まだまだきょう聞きたかったことが大臣の長い答弁でできませんでしたので、あと五時間ぐらいはさせていただきたい。当然そうした時間をとっていただけるということの前提で、きょうの質問は終わらせていただきます。