「一斉入試」という、日本特有(東アジア特有)の因習
欧米の入学シーズンが秋だというのは以前から知っていた。
只今の日本は入試シーズンで、受験での事故の類がニュースになっている。
本来社会のことに多く関心を寄せる時期である思春期後期の人々、及びその家族が、受験にエネルギーを注ぎ、社会的引き篭もりになることを強制させられる時期である。通常国会開始時期と重なっている。
最も風邪を引きやすい、体調を崩しやすい、年間で最も寒い、交通網の事故の発生しやすいこの時期に受験を設定したのはどこのバカだ、と、以前から思っていた。なぜもっとすごし易い、たとえば秋、10月あたりに受験シーズンが設定されてないのだ?
…などと長年思っていたが、「受験」自体、「科挙」の伝統を引いた、日本特有(東アジア特有)の因習らしい。
アメリカの〔大学入学のための〕適性テストはSATとACTの2種類です。SATは年7回、ACTは年5回も実施され、受験回数に制限がありません。いい成績を取るまで何度もチャレンジできます。SATなら、受けてみてこりゃダメだなと思ったら、事務局に連絡して、すいません、今回のテストなかったことにしてください、ってなもんです。ACTは自動的に一番高かったスコアが採用されます。
〔略〕一発勝負の観が強く、運に左右されるところがある日本の入試は、チャレンジというよりギャンブルです。(『反社会学講座』、185-186p)
大学3年生時から就職活動をするという儀式も入社式という儀式も、日本特有の因習だそうだ。
通年採用が普通となっている欧米の企業では、一年に一回の入社式などというものはありません。
そもそも欧米には「社会人」という概念がないのです。学生だろうが勤め人だろうが、同じ社会の一員だという認識しかありません。〔略〕
大学から就職に至る一連の行動は、社会の仕組みというよりは、民族の風習に近いものがあります。(『反社会学講座』、189p)
もちろんここでマッツァリーノは「民族の風習」という言葉を揶揄的に用いている。
受験が済んだら賢明なる諸氏は『反社会学講座』『反社会学の不埒な研究報告』を読むことを強く薦める。
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ところで、学生が集まらなくて困っている大学は、通年で学生を募集すればいいじゃん、とか思った。(日本だと東大あたりがそうしないと変わらないか。逆に東大が受験シーズンを変えたらグズグズに受験シーズンが変わるかもな)