カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

1994年から1996年ころの覚書、児童虐待関係

1994年から19996年ころの覚書が出てきたので、ここにクリップしておく。

いくつかの覚え書きー2

(九四年のノートから)

1

   『文明の逆説』立花隆・著、講談社・刊より

 (四一p) 子供による殺人、子供による虐待の例。
七一年一月;群山の事件。小一の二人が四歳の男児を殴り、逃げたところを裸にし、溝に落とし、さらに殴り、そのまま放置。凍死に至らしめる。
七二年七月;横浜。中二の男子。七歳の女の子にいたずらしようとして失敗。絞殺。
七三年四月;大阪。中二が九歳の女児にいたずらしようとして失敗。絞殺。
七三年五月;富山。四歳の男児。近所の家へ遊びに行き、生後五ヶ月の赤ちゃんを抱き上げ、二階から下へ突き落とし、ぐったりした赤ちゃんを家の前の農業用水路に投げ込み殺す。

 (三五p) イギリスのカルフーンによる実験。鼠をギリギリのストレスとなる過密状態を保ったまま、三世代にわたり飼育
1;まず性行動が異常になる。同性愛(雄、雌の区別ができない)、未成熟の雌を犯したがる、インポなど。
2;雌(母親)の行動異常。子供の保育・保護ができない(子鼠が他の鼠に踏み殺されたり、食われたりする)。妊娠低下、流産率アップ。子鼠の発育不良、先天性異常。
3;鼠同士の闘争増加。弱者は社会から離脱。社会混乱。…行動異常は、雌、若い雄、子供に集中して現れ、成年の雄は相対的に正常を保つ。…一般にストレス過剰になると、種族維持本能が衰え、個体維持本能がもっぱらになる。若い個体は成長を抑えて生命を守ろうとするから弱いものが多くなる。 
(四二p) 子供に先天性精神病が発病することはほとんどない。神経症である。その原因の大部分は母親にある。子供が狂いはじめたのは、母親が狂いはじめたのである。子殺しと過保護は同根である。子供に人格を認めず、自己の完全な支配下に置こうとする。子が屈すれば過保護。反抗すれば憎しみがわき虐待が起きる。過保護は愛情ではなく、子供をアクセサリーする、一種の「物」としか見ないことである。

 ストレスによりインポは増えている。不妊症も。ストレスによるホルモン失調、無排卵。…「精子免疫」;人体に異種蛋白質が入ったとき、二度目以降はそれを拒む免疫が精子に対してなされる。「自己免疫疾患」;自分自身に対し免疫を発動。

 子供のときよく運動すると肉体的成熟が遅れ、均整のとれたいい体になる。早熟は肉体にとっても精神にとっても不幸なことである。

 (五二p) インセストタブーはあらゆる未開社会にすらある人類共通の「カベ」である。このようなものまでも取り除かれるとき、社会は完全に崩壊する。親が子を育てる、といったことは、社会の最も基本的構造を支えるセメントのようなもの。こういうセメントの種類と機能を早く調べて保護しないと、無意識のうちにセメントを粉々にしていき、社会が崩壊してからやっと、ああ、これがセメントだったのか、と気づくことが起こりそうな気がする。人類が生物学的に滅びる前にそれが起きると思う。

2

   『連続殺人の心理(上巻)』C・ウィルソン著、河出文庫より

 (一三一p)一九八〇年、FBI調査官ヘイゼルウッドとダグラス。「性愛殺人者が愛と理解に包まれた環境で育ったということは、まずない。それよりも、幼い頃に酷い仕打ちを受けるか、なおざりにされるかして、多大な精神的葛藤を経験して、適切な対処装置を育むことができなかった子供だった可能性のほうが大きい。うまく対処できるようになっていたならば、自分の身にのしかかるストレスに抵抗し、幼児期に正常な成長を遂げただろう。そうしたストレスや挫折や、それに続く不安などは、それらに対処できない無能ぶりと相俟って、自分に敵意を抱き、自分を脅迫していると当人が思う社会から退いて自分の殻の中に個人をひきこもらせるのである。この内面化の過程によって、他人から隔絶して孤独となり、ひいては孤独と挫折の人生よりはましだとばかりに自殺を選ぶものもある。筆者たちはこの人生態度を非組織的な没社会的態度と名づけた」

連続殺人の心理〈上〉 (河出文庫)

連続殺人の心理〈上〉 (河出文庫)

3

   『診断名サイコパス』より
 (七六p) サイコパスは誇大妄想的な幼稚な万能感を持っている。他人にはそれはカリスマ性に見える。
 (九四p) ちょっと考えてみてほしい。人に何かをしてもらいたいことがあるとき、あなたならどうするだろうか? ひとつ条件がある。その相手はとてもそんなことをしそうにはない。そんなことをするのは間違っている、(相手にとって)危険である、とんでもないことだと教わってきたひとのように見える。具体的には、帰宅途中の若く綺麗な女性を、初対面の自分の車に乗せたいと思ったとき。テッド=バンディは松葉杖を買い、ときにはギブスをはめ、障害者を装った。「車に運ぶのを手伝ってくれませんか?」

 (九九p) サイコパスには「恐怖」の感覚が欠けている。

 (一〇六p)サイコパスは侮辱的な言葉・無礼な態度に過剰に反応する。

 (一一七p)人に感情移入する能力に欠け、世の中を自由にできると考えている衝動的で狡い子供たちは、成長しても同じような大人になる(死ぬまで)。

 人口の、二〜三%の人間がサイコパスである。

 (一三四p)映画は、「わくわくするような覗きの代償行為に私たちを引きずり込む。私たちは微かなうしろめたさを感じながら、なんの犠牲も払わず、攻撃的で猥褻な快楽を楽しむ」

 (一三五p)サイコパスは、理由なき反抗者であり、スローガンなき煽動家であり、綱領なき革命家である。

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち (ハヤカワ文庫NF)

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち (ハヤカワ文庫NF)

(九五年のノートから)

1

 オタクの悪しき特質の一つは、「自分とは違う感受性・思考というものを、考慮できない」ことであることを、日々痛感する。自分が知っている知識は他者も知っていて当然だ。オタクとしての常識なのだから。それを知らないような奴は、仲間じゃない。という思い込み。これは醜い。社会から疎外された果てに「オタク社会」というもう一つの社会に接し、「オタク」という新しい自己像を発見する。そこまではいい。自分はオタクである、オタク社会にいるからには彼もオタクのはずである、オタクであるからには自分となにもかもが同じはずである、という錯覚。他者と自己との区別すらつけられない未熟な人格特有の勘違い。「同じはずである」という思い込みがあるため、他者が独立した一個の人格であるという事実を承認できない。その事実を認めるよりも、「あれは別だ」「あれは仲間じゃない」という排除を開始する方がずっと安易である。憎むべきは排除と疎外の論理のはずではないのか。その論理によって「オタク社会」に押しやられたのではなかったのか。

2

   『甦える魂』穂積純・著、高文研・刊三〇一pより
 「救世主シンドローム」…被虐待児のその後の行動
 A;攻撃者…傷つけられた自分の怒りを、他者を攻撃することで解消しようとする。他者には些細に思えることで爆発する。(自己の怒りが正しく解決されていない)
 B;犠牲者…人の目から避けることによって、再び攻撃されることから逃れる。大人になって、不当に傷つけられても抵抗できない。(これは逆におどけ者の仮面をかぶることもある)
 C;世話係…弱い立場にある人の「救世主」として振る舞う。
 …女性は、B、Cのタイプに陥りやすい。Cになる場合、「己の傷が回復しているか」が重要となる。…他人の傷の手当てに夢中になっていては、自分は治らない。ときには、死に至る。…心の傷は、本人がまず自覚しなくては回復がはじまらない。他人の痛みに夢中になっているということは問題を薬物でごまかす中毒症状に似ている。他人の「救世主」として生きる生き方は、毒であり麻薬である。
 *被虐待児は、本来自分が欲しかったものを他人に与え続ける。もし私が他人に尽くせば、自分には与えられなかった愛情・保護・心配り・親密さ・支え・慰めなどを手に入れられるかもしれない、という空しい望み。幼少時代の経験がひどく辛いものである場合、一生を通じてしばしば子供の頃と同じような状況を再現せずにはいられなくなる。それは辛かった状況を変えたいという無意識な欲求から生じる。

3

  『性被害のふせぎ方』法政出版より

 性被害を受けた子供たちは、「これはいけないことだ」ということを知っている。しかし論理化された思考ではない。「自分はなぜ言えないか、その理由を考えることもできず、言いづらい、言えないというふうに、なぜかブレーキがかかってしまうのです。成長し、思春期の頃になって、自分の体の成長の変化が始まり、社会的にもいろいろなことを知るようになって、初めてその被害の内容が理解されるようになります。

性被害のふせぎ方―家庭と学校 (SPACE A BOOKS)

性被害のふせぎ方―家庭と学校 (SPACE A BOOKS)

4

   オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』序言 「道徳的な書物とか反道徳的な書物とかいうものは存在しない。書物はよく書けているか、それともよく書けていないか、そのどちらかである。ただそれだけのことだ」(『少女コレクション序説』八三p より)

少女コレクション序説 (中公文庫)

少女コレクション序説 (中公文庫)

ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)

ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)

5

 虐待…むごい扱いをすること

 搾取…搾り取ること。特に、資本家・地主などが、労働者・農民などの労働に対し、それに価するだけの支払いをせず、利益をわがものにすること。

6

  『甦える魂』より

 「子供だから何をしたってかまうものか。子供だからばれやすまい。ばれても子供が嘘をついていると言えばいいんだ。世間は子供より大人の自分を信じるに決まっている。どうせ子供だ。何をされているか分かりはしない。忘れるに決まっている」

7

 私小説家は、自らの境遇を綴る。不幸な生活ほど、読者にとっては面白い。昔、作品に書くためにわざわざ不幸な生活になった私小説家がいた。学生時代、鎌やんはその話を聞いて、アホかと思った。そんなことまでしなきゃ何も書けないような奴は才能がないんだから、小説家を志したこと自体間違ってる。そう感じた。だがどうやら自分はそういうタイプの創作家だったらしい。な、情けなや。

8

   『汝わが子を犯すなかれ』池田由子・著、弘文堂・刊より

 (一六三p)加害者になぜ男性が多いか? 社会学フィンケルホア(FINKELHOR D)の調査。性犯罪加害者のうち、少女への加害者の95%が男性。少年への加害者の80%が男性。一方的に男性が多いのは「男性の社会化」MALE SOCIALIZATIONの過程を研究する必要がある、と彼は考えた。米国の場合、男性にとって性的要素SEXUAL COMPONENTを持たない親しい人間関係INTIMATE INTERPERSONAL/RELATIONSHIPを獲得することが困難。少年は、身近にいること・触れること、といったTOUCHING AND CLOSENESS情緒的欲求が満足されないまま社会化が起こる。これらの欲求はずっと後、性的関係を持ってから満足される。そのためこの欲求は性的空想など性的枠組に関係する。男性は満足のため性的伝達手段を探し求める。ときにそれは幼い子とのかかわりとなる。男性はどのように性的パートナーを見つけるよう社会化されるか? 社会化は、男性に、自分より若く、小さく、力弱い人間を見いだすよう方向づける。子供たちは男性が社会化の過程で求める性的パートナーとしては比較的適切である。男性は社会化の際、子供の世話をするという経験を欠いたまま成長する。その結果男性は子供の欲求と同化するのがむずかしい。子供との性関係が年少者にとってネガティブな結果を持つということを見ようとしない。子供との性関係を持った後も加害者は自分のしたことが子供を混乱させたこと、裏切りであることに気づかない。子供の側からの見方ができないからである。結論としては、性的要素なしに優しさとか親しい関係を持つことの欲求を満足させる機会が男性には与えられるべきであり、子供の幸福や健康についてもっと教えられるべきである。

 (一七二p)近親姦の犯人は常に彼ら自身の子供以外には性的に刺激されないと主張する(近親姦を彼の過去の家族力動に帰する解釈。子供は過去の遠く離れた母親の役である)。しかし、実際には近親姦の犯人は、多くペドファイル(=子供への誘惑者)であり、「たまたま家の中に子供がいたので」犯したのである。

 エイベルとベッカーの精神生理学的調査…拘禁中の犯罪者が自分の異常な性行動の詳細を司法当局に告げることはありえない。何回犯罪を犯したか、性犯罪者は平均四回と答えるが、秘密保持の原則が守られれば平均七五.四回犯罪を行ったと告白する。これらの調査から以下のことが判明した。…1;幼児性欲者で家庭外の少女を犯した者のうち、三七%は家庭外の少年をも犯している。2;露出症者の四五%は見知らぬ少女を犯している。二一%は見知らぬ少年を犯している。二二%は強姦している。(以上の数字は複数回答で重複している)…実際の犯罪回数は文献よりはるかに多い。

 調査方法…対象者は秘密保持の証明書を連邦政府から与えられ、情報は司法当局に暴露されないことを知らされる。名前は記されない。犯罪者は犯罪の場所など特定できる詳細を言わないよう指示される。PENILE PLETHYSMOGRAPHYという装置が、客観性を増すため用いられる。この調査の結果五五%の性犯罪者は今までのタイプにつけ加え、他の異常性愛があることを認める。(PENILE PLETHYSMOGRAPHY…ペニスのサイズの変化を測定。子供のヌード写真を見せる、子供との性的遊戯の物語のテープを聴かせるなどして、性的勃起を測る。患者が意思の力でコントロールすると正しくない結果が出てしまう)

 (一七三p)近親姦、性犯罪の加害者については、研究者によって意見が一致しない。しかし近親姦の加害者が「家族にしか興味がない」と言うのは「誤りである」という点では一致している。近親姦者の半数は他人の子供に性的暴行を加えている。四分の一は小児愛者である。

 (一七三p)ベッカーの調査。米国。性犯罪者の六〇%は中学生時に異常行動を示す。八〇%は刑法に触れ、七五%は逮捕される。一五歳時で二〜三回逮捕されている。加害者の五二%は自分自身性被害者である。

 治療効果に関しては臨床家により意見は様々である。主として行動治療が用いられる。人間と関係を持つこと、共感性を高めることを目的とする。治療の前提は、秘密保持、治療者との信頼関係の樹立である。落伍率四〇%。治療後再発するものもあり。早期発見早期治療が効果的である。

 米国フィルモアFILLMOREの意見…若い性犯罪者には、以下の四つが必要である。1;性教育 2;怒りの処理 3;行動治療 4;社会的スキル(世間的つきあい、人とのつきあいかた)の教育。犯罪者は共感能力に劣る。犠牲者を人間ではないもの、動物や人形のように見るという認知の障害がある。

 治療には、性欲減退剤デポープロベラが用いられることがある。この薬は性衝動を抑えはするが、怒りの衝動は低下しない。去勢すると、怒りや恨みのレベルが返って高くなる

 米国においても専門家の少なさと予算の乏しさは深刻である。公的な児童保護団体では経験を積んだ福祉専門家は少ない。私立児童保護団体では熟練した専門家がいるが、事例が多すぎて十分働けない。虐待関係の面接は多くの時間とエネルギーが要る。緊急性のあるものを除いて他に紹介したりすることが多い。加害者(青少年性犯罪者)治療は「経済効率性」をつねに問われる。つねに予算削減の槍玉となる。だが将来の刑務所の設備や人員に要する費用、ホームレス対策費用に比べれば、ずっと予防的に効果がある。

 (一七七p)性虐待の存在は過少評価されがちである。これを否定したいという多くの大人たちの希望がある。はっきりとした臨床証拠が乏しい。他の身体的虐待と異なり加害者からの明らかな暴力が認められない。親の権威・説得・賄賂などと共におこなわれ、子どもが被害感を持たない出過ぎてしまうことがある。…だが、以下のときには注意を要する。1;もしも子供が(男でも女でも)大人に性的にいたずらされたと申し立てたときには深刻に受け止めるべきである。(一八一家族中、偽証は五家族のみ) 2;片方の親が、子供が性的に虐待されたと申し立てたときも真面目に受け取るべきである。とくに子供の年齢が小さく言語表現が十分でないときは。…性虐待の約半数では子供はその事件のあった直後から一日以内に親・他の大人に報告している。残り半数は一週間から三年くらいの間に事件を表にしている。ただしこれは全くの他人により一回のみ行なわれた場合・暴力で脅かされた場合で、家族により持続的に行なわれた場合表面に出にくい。

汝わが子を犯すなかれ―日本の近親姦と性的虐待

汝わが子を犯すなかれ―日本の近親姦と性的虐待

9

   『汝わが子を犯すなかれ』より

 被害児の症状(日本の場合)…反社会的問題;不登校・家出・放浪・非行・売春・薬物依存・アルコール依存 精神衛生問題;不安・抑鬱・不眠・恐怖・低い自己評価・身体的愁訴・摂食障害・女性としての同一性障害 身体的虐待を伴うと結果として、攻撃性・衝動性・共感性の欠如が現れる。

 「乖離症状」DISSOCIATIVE SYMPTOM…離人症・現実感の喪失…恐ろしい体験から逃げようとする心理的欲求により、心理的健忘となる。あるいは、他の人の体験となる(二重人格、多重人格)…乖離された体験は悪夢や夜驚・幻覚・パニックとして再体験される。身体虐待・性虐待を受けた患者の八三%が成人平均より高い乖離症状の得点を示す。二四%が精神外傷後のストレス症候群について高い得点を示す。

 (一七九p)米国小児科医ブラムバーグの報告。子供が性行為を受け入れる動機。1;乳幼児は混乱して他に選択の余地がない。2;学童は、性の真実の認識を欠いているので、拒むか、応じるかの選択ができない。3;大人は悪いことをしない、という信頼がある。4;少年少女は性行為を受け入れたことに罪悪感を持ち、非難されはしないかと思い続ける。5;性的に満たされない父親に哀れみの気持ちを少女は持つ。6;肉体的に虐待されたり拒否された少年少女は性的行為を大人の愛情や関心のかたちとして受け入れる。

 子供の性的虐待の情緒的表現…乳幼児;イライラする・食事に問題が発生する・睡眠障害・活動レベルの低下。学童;行動問題・不安・睡眠障害・悪夢・引きこもり。少年少女;恐怖と混乱・罪悪感・怒りと行動化・抑鬱的感情。

 幼児・学童が性病に罹っているときは、ほとんど成人からの感染である。彼女らの将来は同なるのだろう? …一九八一年米国の統計。一四歳以下の少女に、八〇一一人の淋病、一五七人の梅毒。一四歳以下の少年に二八四六人の淋病、六一人の梅毒。一五〜一九歳の少女に淋病十四万人以上、少年に淋病十万人。

 性虐待の生還者は、そうでない女性の八倍、精神医学的問題(鬱状態・不安・薬物依存・性機能障害・自殺傾向)を起こす危険がある。

 性虐待の長期に及ぶ情緒的効果…少女;虐待を招きやすい性的早熟・家出・売春・心身症的な婦人科の病気。少年;同性愛。成人女性;冷感症・性感異常・売春。成人男性;同性愛・インポテンス・いんせすと・幼児姦・少年を対象とする男色。

10

 創作のメモ…苦しみという感情。惨めであるという感覚。自分がここにいてはいけないという感覚。「そこにいてもいいよ」と誰かに言ってもらいたい。言ってもらいたい。自分が自分として、自分のままで肯定されたい。それが満たされたい。何を演すれば、「そこにいる」資格を得るのか。

 子供であるということは、それだけで、無力・非力・惨め・自分の思い通りにならないものとしての存在となる。子供たちの沈黙。他人の間に存在する事件は、身内の間にも存在する。女性は幼い頃から、そして「幼いからこそ」性的な玩具とされやすい。

11

 人はすぐ裏切る。でも、裏切りだけが人じゃないはず。次があると言って下さい。(『未発達レディ4』より)

 人間とはつまるところ家畜でしかない。人が獣であるからには、善人とはより飼い慣らされた獣の別称なのだろう。人間が家畜であることを社会は求めている。家畜は己が家畜であることを認めたがらない。

12

 創作のメモ…母は少女を憎んでいるから手元から離せない。手放すとどこで娘が男を誑かすかしれない、とどこかで思っている。少女は自分の女の部分を嫌っている。

 

13

   『事実は隠蔽される〜いじめの時代の子供たちへ』新潮社を読みながら

 (八一p) 体育館マット殺人事件。五〇人の生徒のいる中で、殺人事件が起きた。だが、誰もその殺人を見ていなかった。「いじめ」はときに他人からは「遊んでいる」と見られる。別な言い方をすると、「いじめ」は「遊び」の延長である。…「関わり合いになりたくない」という感覚こそが深刻。…なぜ「いじめられた」人間は沈黙するのか? 自分自身を愛すること、自らを由とすること、自分自身を肯定的に捕らえることができなくなるからではないか? 自分を否定的に捕らえるがゆえに、自責の念に潰されそうになる。自分を存在しないもの、石のようなものだと捕らえようとしていく。自分が生きている人間であるという感覚を失う。それゆえ何も語れなくなり、それが不快な記憶であるがゆえにそこから目を背けようとする。そしてそれを「なかったもの」と考えようとする。…いじめには傍観者層が不可欠。

(九六年のノートから)

1

 ラジオで、「援助交際」と「子供の人権」というものを、対立図式に見立て、「父権の失墜」を嘆く、という、下品極まりない番組を放送していた。まずこの対立図式は誤っている。子供の人権が踏みにじられた果ての復讐として、援助交際という自傷行為はある。「援助交際」をする女子中高生は彼女らの「自我」があたかも存在していないかのような扱いをあまりに受け続けてきたために、「自我」が健全に成育できていない。それゆえ意思は衝動を抑制できない。衝動に隷属するのは「自由」ではない。「自由」な自己決定をしているわけではない。従ってこの最後の「自傷行為」の「自由」は、人権で擁護されるものではない。自傷行為は未然に防がれるのが望ましい。…「父権の失墜」という言葉の悍ましさ。こんな言葉が口にできる感性の持ち主は、父権という言葉が最も似つかわしくない品性下劣な、やはり自我の貧弱な人間なのだ。文化という虚構によって支えられていた「権威」に怠惰にもたれかかるような奴なのだ。そういう、虚構に怠惰にもたれその力を濫用するような人間こそが、さまざまな問題を引き起こすのだ。ABUSEとは力の濫用を意味する。

2

   『IMAGO VOL/4 レイプ特集』より
 悪の再生…「悪性のナルシシズム」は加害者から被害者へ移行される。(六二p)
 強姦者は、多くの場合、不能者である。(九五p)
 ある連続強姦殺人魔「我々は女の思考の中で生きている。この世界は女のものだ。だが本来は男が上にあり、女の上に立つべきなのだ」(九六p) …ここで彼の言う「女」とは彼の母を指すはず。
 レイプとは弱い者いじめの構造の一部。強姦とリンチはイコールである。(一三一p)
 沈黙の共謀こそが性暴力の際立った特性である。沈黙が続く限り被害は表面化せず、性暴力は繰り返されるにもかかわらず社会においては存在しないことになる。

3

 粗にして野にして卑ならず。

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