カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

SPEEDIについての中間報告

http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20120117/1326815761の続き。
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 2011.12.26 中間報告 http://icanps.go.jp/post-1.html で、SPEEDIについてどう語られているんだろう、と思った。同中間報告480〜484pから以下メモしておく。ページ数のわりに実際読んでみると意外に字数は少ないかも。
〔以下転載〕

 http://icanps.go.jp/111226Honbun7Shou.pdf

(3)SPEEDI 活用上の問題点

a 避難指示との関係における問題点

SPEEDI は、地域住民の放射線被ばく防止と避難の対応をする上で重要な役割を担っている。しかし、事故発生後数次にわたって避難指示が出された際、SPEEDI が活用されることはなかった。これらの避難指示の内容は、つまりところ「ともかく指示範囲の外へ逃げよ。」と言っているのみで、住民は、どの方向にどの程度避難すれば安全なのかが分からないまま、各市町村長が手探りで行った判断に従うほかなかった。しかし、放出源情報が得られない状態でも、SPEEDI により単位量放出を仮定した予測結果を得ることは可能であり、現に得ていたのであるから、仮に単位量放出予測の情報が提供されていれば、各地方自治体及び住民は、道路事情に精通した地元ならではの判断で、より適切な避難経路や避難方向を選ぶことができたであろう。
今回、SPEEDI が有効に活用されなかったのは、関係機関がこれを避難の実施に役立てるという発想を持ち合わせておらず、また、現地対策本部(オフサイトセンター)が広報機関として機能しなくなった場合に、他のどの機関がその役割を担うのかについて明確に定められていなかったことなどのためである。

b 不明確だったSPEEDI システムの活用主体

原災マニュアル上は、原子力災害対策についての広報一般は、原災本部の下部機関である現地対策本部又は保安院が担当することとされている。したがって、SPEEDI システムを活用した国民への情報提供は、現地対策本部又は保安院が行うように定められていたといえる。
今回の事故では、現地対策本部が機能不全に陥っていたことから、現地対策本部の上部機関である原災本部又は保安院がその役割を果たすべきであった。ところが、原災本部及び保安院は、SPEEDI 情報を広報するという発想を持ち合わせていなかった
一方、文部科学省は、今回の事故において、広報活動に関する一次的な責任を負ってはいなかったものの、SPEEDI を所管する省として、その活用方法について原災本部に助言するなどの役割が期待されていた。しかし、同省においても、自ら又は原災本部等を介してSPEEDI情報を広報するという発想はなかった。また、3 月16 日以降、SPEEDIの活用主体(計算結果の公表主体を含む。)について、同省と安全委員会との間で整理がしきれないままに事態が推移し、このことはSPEEDI による試算結果の公表が遅れた一因ともなった。

c 今後の課題

福島第一原発の事故により、周辺住民が避難を余儀なくされた際、SPEEDI は予定されていた本来の機能を果たすことができなかった。
緊急時対策支援システム(ERSS)からの放出源情報が得られず、また、現地対策本部が機能しない状況において、SPEEDI システムを可能な限り活用するという観点から、関係機関の間での役割が明確になっていなかったなどの運用上の弱点があったためである。被害住民の命、尊厳を守る視点を重視して、被害拡大を防止し、国民の納得できる有効な放射線情報を迅速に提供できるよう、SPEEDI システムの運用上の改善措置を講じる必要がある。
また、今回、SPEEDI システムは、最も迅速にデータ収集・処理を行わなければならない初期段階において、地震によりERSS 内でデータを伝送する回線が使用できなくなるなどの事態が発生した。今後は、様々な複合要因に対して、システムの機能が損なわれることのないよう、ハード面でも強化策が講じられる必要がある。

(4)住民避難の意思決定と現場の混乱をめぐる問題

a 避難指示の意思決定をめぐる問題点

国の避難指示は、前記?3のとおり、数次にわたって行われた。その内容は、官邸5 階に集められた一部の省庁の幹部や東京電力幹部の情報・意見のみを参考にして決定された。原災マニュアル上は、避難指示の内容は現地対策本部長が現地オフサイトセンターにおいて決定すべき事項とされている。しかし、既に随所で指摘しているように、初期段階でオフサイトセンターを含め現地対策本部はほとんど機能麻痺状態にあったことから、マニュアルの定めにかかわらず、官邸5 階において避難指示の内容が決定された。
しかも、これらの決定に当たり、SPEEDI の所管官庁であり、緊急参集チームに幹部職員を派遣している文部科学省の関係者が官邸5 階に常駐した形跡はなく、避難範囲と区域を判断する場合の重要なデータとなるSPEEDI についての知見が生かされることはなかった。実際には、当時、伝送回線の不具合のために、SPEEDI を完全な状態で活用することはできなかったので、仮に文部科学省からSPEEDI システムが存在することが示唆されていたとしても、避難範囲についての結論は同じであったと思われるが、避難対策の検討を行う際、SPEEDIの活用という視点が欠落していたことは問題点として指摘しておかなければならない。仮に、そのようなシステムの存在が議論の俎上に載せられていれば、その後の避難措置を講ずるに当たっても、ベント措置と避難の方向の関係等について、異なった議論がなされた可能性があると考えられるからである。

地方自治体及び住民の避難の問題点

3 月11 日から12 日にかけて、福島第一原発の事態が危機的になっていくのに対応して、菅総理等の判断で避難や屋内退避を求める地域を次々に拡大していった。このことは、原子力プラントの全体状況を正確に把握できない切羽詰った状況の中では、やむを得ない面があったと考えられるが、該当する地域の住民から見れば振り回されたという感情を強く抱く結果となった。
関係市町村の初期の避難状況を見ると、例えば、浪江町の場合、役場機能と原子力発電所付近の住民を、町内の遠隔地に避難させたが、3月15 日には、そこも危険と通知され、二本松市に再避難を余儀なくされた。しかも、後から判明したことだが、その避難経路は放射性物質が飛散した方向と一致していた。また、富岡町の場合、始めは川内村に避難したが、次には川内村の住民共々、郡山市に再避難をしなければならなくなった。
国による避難指示等は、避難対象区域となった地方自治体全てに迅速に届かなかったばかりか、その内容も「ともかく逃げろ。」というだけに等しく、きめ細かさに欠けていた。各自治体は、原発事故の状況について、テレビ、ラジオ等で報道される以上の情報を得られないまま、住民避難の決断と避難先探し、避難方法の決定をしなければならなかった。
こうした事態を生んでしまった一つの背景要因として、原子力災害が発生した場合に、周辺地域にどのような事態が生じ、どのような避難の心得と態勢を整える必要があるか、また、あらかじめどのような避難訓練が必要かといった問題について、政府や電力業界が十分に取り組んでこなかったという事情があると考えられる。

〔以上転載〕
読んでいていまいち隔靴掻痒な感じがある。
関連外部リンク http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34310

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