柴田哲孝『下山事件―最後の証言』祥伝社
「下山事件」とは1949年7月6日、初代国鉄総裁・下山定則が轢死体となって発見された事件だ。松本清張『日本の黒い霧』などに詳しい。当時、三鷹事件・松川事件などと並んで「公安事件」と呼ばれた。松本清張『日本の黒い霧』は私は大学生のときに古本屋で買ったものの、松本清張の文はロジカルだが20歳代の私の幼稚な語彙と知識では事件当時の世相・語彙への理解力が足りず、読解できなかった。松本清張『日本の黒い霧』を私が読み通したのは30歳代後半になってからだった。
柴田哲孝は自分の祖父が「下山事件」に関わっていたのでは? という情報と疑念を元に、調査を開始する。柴田哲孝は事件当時の世相・権力構造・並行する事件・先行する事件などを、「下川事件」に無知な読者のために、丁寧に語っている。
事件の周辺に登場する政治家たちの名前。吉田茂(麻生太郎の祖父)、岸信介(安倍晋三の祖父)、佐藤栄作(安倍晋三の叔父)、迫水久常。迫水久常は昭和史・とくに終戦から戦後にかけての「たちの悪い」キーマンだと私は以前から睨んでいたので、ここで岸信介らとともに名が出てきたことは注目に値する。
佐藤栄作がとくに「下川事件」に深く関わっていることを柴田哲孝は示唆している。
柴田哲孝は、「下山事件」と張作霖爆殺事件は満州鉄道を介して一本の線で繋がると考えはじめる。下山定則総裁の遺体が置かれていた場所と、張作霖の爆殺が仕組まれた場所の類似性。戦前から繰り返された謀略・謀殺の系譜が透ける。「下山事件」の周囲に動く、さまざまな謀略機関。そこには当たり前な顔をして統一協会も存在している。
これら謀略機関は「消えた」のではなく、見えなくなっただけだ。それは今も存在する。たとえば安倍晋三の後ろに。
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