「空気」とは「疑心暗鬼」のことである。 - カルトvsオタクのハルマゲドン／カマヤンの燻る日記

日本人は「空気」で動くと言われるが、その「空気」とは「疑心暗鬼」のことだと思われる。
「選挙権削減と増税の一体改革／「代表削らずして増税なし」の奇怪」http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20120117/1326807155
「比例区を80削減して節約できる金額はたった52億円／呪術戦」 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20120120/1327056287
が伸びた直後に、テレビ朝日でhttp://news.nicovideo.jp/watch/nw185230議員定数削減への疑問が述べられた。
おお、珍しいことがあるものだ、このまま議員定数削減への疑問が定着したら日本は少しはマシな方へ動くな、とか思った。
私はあまりテレビを見ないんだが、たしか同じテレビ朝日の同じ番組で（別な番組だったかもしれない）数日後、ゲストコメンテーター*1が、その同じ番組で「議員定数削減への疑問」を行った事実を完無視して、「議員定数削減することとか、もっと大事なことがあるでしょう」と議員定数削減論が当然の前提である、という風に発言した。
そのゲストコメンテーター以外の人々の表情は微妙だった。だが誰もゲストコメンテーターに反論をせず、沈黙した。テレビ内の時間制限の中で、特集を組んだときと同じ説明をするのは誰にも無理だ。
その時の「空気」は以下のようなものだ。
１；議員定数削減は妥当ではない、という放送を数日前にしたことを、このゲストコメンテーターは知らないのか？　同じ番組出演なのに。
２；知っていて、あえて「議員定数削減すべし」と発言するのがこのゲストコメンテーターの仕事か？　とすると、「議員定数削減すべし」はテレビ朝日としての意思か？　「議員定数削減すべし」を既定路線とせよ、という圧力なのか？　という他の出演者の当惑。
３；「議員定数削減すべし」がテレビ朝日の「意思」になったということを私（他の出演者）が聞かされていないということは、私はテレビ朝日中枢ラインから外された、ということか？　私はその権力階層の中では最下位に位置しているということか？　私は明日からここに出演できなくなるような、そういう扱いなのか？
４；「誰かから言わされたのですか？」とゲストコメンテーターに訊ねるわけにはいかない。もし本当に言わされていたとしたら、それを単刀直入に質問してしまったら、私が目をつけられてしまうかもしれない。もし相手が言わされたのではなくて知らなくて言っているのだとしたら、相手の顔を丸潰しにして、相手に恥をかかせてしまうことになる。それはもっと避けなくてはならないことだ。
５；ゲストコメンテーターは単に知らないだけなのかもしれない。その可能性も残っている。だが、「知っていてあえて」言わされているのだとしたら、その言わせた「力」は私を守らないことは間違いない。「力」は私を失脚させ、肉体的に傷つけることすら可能な「力」かもしれない。その「力」は、道理を捻じ曲げることができる程度の「力」なのかも知れない。
…という「空気」ではありました。
そういう「空気」って、小泉政権の頃、感じさせられたことって時々あったな*2。日常でもなんか「会議」的な場所ではこういう「空気」ってしょっちゅう感じるな。なんつうか、「エライ人たちによる自作自演に付き合わされている」ような「空気」って。
「場の空気」とは、個々人の臆病さを煽り、個々人に孤独感を強い、相互の「疑心暗鬼」を煽ることを言うのだな。
とか思った。
実際のところ世の中は道理がけっこう通じるのだが、「道理を捻じ曲げることの可能な力」という幽霊に我々は常にビクビクして生活している。それを「空気」と呼んでいたりするんだが、「疑心暗鬼」と言い換えた方が、我々の社会に寄与すると思う。
でもって、そんな「空気」なんぞ完無視すべきだと私は思う。勇気を持って、身も蓋もなく発言できる人となろうとすべきであり、身も蓋もなく発言した勇気ある人を孤立させないよう勇気づけるべきである。おためごかしは幽霊の巣である。おためごかしは人を臆病にし、国家を弱める。世の中はもっと身も蓋もない姿を露わにすべきである。「民主主義」という制度は、他の政治体制よりは身も蓋もない姿をより露わにしているから、他の政治体制よりはまだ強いのである。
ところで山本七平の「空気の研究」というイカモノ本は、暴力団というファクターを完無視して暴力団に怯える日本社会を書いているのだろうと私は思うんだが、まあいいや。
対して、「国家は暴力装置である」ことを主軸に論を述べている萱野稔人の仕事は感心する。