年末年始とか
ウチの家業は普通の人が休む時が繁忙期となる。たとえば大晦日は毎年必ず満室となる。今年の年末年始は曜日の並びが良くて、大晦日を挟んだ前後に例年になく客が続いた。客が続くということは私の休息がなくなるということでもある。この不景気のご時世に贅沢な話ではあるのだが、12月12日に娘が生まれて以来、ほとんど休息らしい休息が、嫁の実家に一泊させてもらったりもしたのでまるっきりなかったわけでもないが(余計なことだがその後老母からは嫁の実家に泊まるなと要らん節介が毎回ある。まったくもって大きなお世話だ。)、年末年始前に一度休暇をとっておきたかったし嫁からもとった方がいいと薦められていたんだが、我が老母様は私を休息させるのが生理的に耐えられないお方であり、ムダで煩雑な指令が絶え間なく下され、労働を絶え間なく課せられ、よって休息なく年末年始のプチ繁忙期に突入した。
ところでウチの仕事は、仕事の内容そのものは楽チンであり、この楽チンな仕事で文句を言ったら罰が当たるのであるが、ウチの繁忙期には老母様はムダにテンションが高くなり、高くなったテンションはほぼ全て私への八つ当たりに転換されるので私はしんどくてかなわない。ウチに長年勤めて下さっている小母さまによるとこれでも相当丸くなったとのことだが、とはいえ耐えられるものではない。小母さまには帰る家があるのだが私には帰るところがないのだ。
年末年始に老母のテンションが高くなり私がそれでもってささくれ家の空気が悪くなることは事前に予想できたので、嫁は「里帰り出産」の名目で嫁の実家で娘と生活をしている。出産後1ヶ月くらいはいてもらう予定だ。
1月4日木曜時点で老母からのムチャクチャに対し私の耐性の限界が来て、心が折れ、プチ家出した。どの道仕事の量などたいしたことはなく、老母が私の箸の上げ下ろしに至るまで私の呼吸に至るまで絶え間なく八つ当たりをしていなければまるっきり疲労をしない程度の仕事内容なのだが、老母と同じ場所で呼吸するのも耐え難くなり、プチ家出した。嫁と娘がいなければそのまま田舎から去り戻らないところだ。
日帰り温泉で一日潰し、嫁の実家で二日弱潰した。嫁の実家からの帰りに嫁から借りていた車を対物事故起こしてしまい、親戚の自動車工場で直してもらうつもりで連絡したら正月休みで、7日が明けないと修理できない。
この対物事故がなければ数日、伊豆あたりへ泊まりで出掛けようかと思っていたが、嫁にも事前にそう話していたんだが、事故の修繕も終わってない状況で別な自動車で出掛けるのも冥利が悪く、「離れ」に籠もり、買っておいた『少女革命ウテナ』のDVDを見て2日強過ごした。
全39話を一気に見るというのは意外とたいへんで、単純計算で19時間半必要なので、2日強でようやっと31話まで見た。
娯楽というのは、心を「ここじゃないどこか」へ飛ばし、和らげるために、人間には必要だとしみじみ思った。俺がオタクとして人格形成したのは、そういう情緒処理を切実に必要としたからだ。今に至るも必要としている。
娘が自分に生まれても、我が老母への私の憎悪というか嫌悪は一向に消えない。これは今後の子育てにおいて、親である私の悪い背中を娘に見せてしまうことになるのだが、自分を欺瞞するのはもっと健康に悪くもっと悪い背中を見せてしまうことになるので、なんちゅうか、致命的悪影響にならないよう努力したい。少なくとも私は娘にとり暖かみを与える父親となりたい。
ところで私がプチ家出している間にしつこく家から携帯電話に連絡があり、ウザさのあまり電源を切っておいたら、老父が「離れ」まで来た。老父は心の優しい人で老母のように私にムチャクチャを要求はしないが、老母と私が対立すると、必ず老母の味方をする。「暴君的夫の言いなりになるダメな母親」の男性版だ。悪い人ではないのだが。で、老父によると、私のいない間にウチの宿泊施設複数の水道やボイラーが凍結して壊れたそうだ。河口湖はここ数日、氷点下7度とかそういう最低気温で風呂の残り湯に氷が張る程度に寒かったから、入念に凍結防止対策が必要だったんだが、老母は寒いことに関してわりと無頓着であるのもあって、凍結させてしまったようだ。凍結は予想できたのだが、老母がいるところへ近づきたくないので、私は近づかずにいた。
昨年の年始 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20120102/1325473061
その前の年の年末年始 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20110110/1294671564
仕事場に復帰すること自体は何ら痛痒がないのだが、仕事場は我が老母様のテリトリーであり、あそこに老母様が陣取っているため、同じ空気を吸いたくなくて困る。嫁が里帰りしている間はプチ家出を続けてしまおうかとも思う。どの道、1月2月はシーズンオフでほとんど客がいないのだし。
老母によって心がベキベキに折られるのは田舎に来て以来だいたい2か月に1度以上あるイベントなのだが、心がベキベキに折られることに耐えられる人間などいない。そして我が老母は私の心をベキベキに折っている自覚など毛ほどもない。