「クールジャパン」の本来の競合相手
1
「クールジャパン」が本当はお手本にすべきものだったもの、あるいは「クールジャパン」の競合相手について。
俺は文化帝国主義者で、ソフトパワーによる文化帝国主義戦略は日本が戦争に至る可能性を低減させると思っているので、だからオタク文化輸出に日本は国家事業で取り組むべきだと、以前言っていたんだが。http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20070416/1176685496 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20061130/1164826590 残念なことにムダに長い安倍晋三政権とか国内情報戦ばかりに熱心な麻生太郎とか安倍晋三のシンパさんだか配下さんたちは80年前と同様に国内情報戦並びに排外主義にばかりご執心で全く以てソフトパワー輸出文化帝国主義の真逆行っていらっしゃるので溜息しか出ないのであるが。
それはそれとして。
パンカジ・ミシュラ『アジア再興』というのを読んでいたら、「クールジャパン」の競合機関がいくつか列挙されていたので、メモだけしておく。
wikipedia:ブリティッシュ・カウンシル
wikipedia:アリアンスフランセーズ
wikipedia:ゲーテ・インスティトゥート
wikipedia:孔子学院
フルブライト留学というのも競合機関だ。
これら文化帝国主義機関は、自国のファンを海外に作ることでより自国を国際的に有利にしようという意思が背景にあり、そのため自国をブランド化しようという意思がある。
文化帝国主義とは、ブランド化だ。「文化帝国主義」という言葉が強烈過ぎるか。むしろ単に「ブランド化」というべきか。それはそれとして日本の輸出・平和のためには日本のブランド化は必要だ。
現在日本はズルズルと先進国的地位から落ちつつあるが、まだ多少海外にブランドイメージ、憧れの対象たるイメージが残っている今のうちに、日本をブランド化するのは国家戦略として必要だ。
で、ブランド化するためには、たとえば日本の大学の、特に文系を強化する必要があり、大学教授たちに思い切って裁量権や自由を多く与える方が有益で、間違ってもその逆をしてしまってはいけない。安倍晋三がバカであり日本の首相に居座らせ続けるべきではないのはその真逆をしやがっているからだ。あいつは日本のブランドイメージを毀損するのに全力を使いやがっている。
俺は現在観光業に従事しているが、客に来てもらうためにはその観光地をブランド化する以外に道はなく、その観光地内で排外主義なんぞしていたらブランドイメージがすげえ毀損されて大迷惑だ。
観光業というのは外面の仕事であって、たいがいの仕事というのは外面の仕事だが、内部では「いやあ、宣伝文句ほどじゃあないんだけどね」という冷静さが必要で、しかしながら宣伝につられてきた客に対して「イメージを裏切らない」ことも同時に必要だ。「日本すげえ、日本すげえ」と身内褒めしまくるテレビ番組ばかり増えている現状は、その冷静さを失い、残り少ないブランドイメージを自己消費し、外食産業で言うと凋落激しいマクドナルドの管理者たちが内部で「マクドナルドすげえ」と身内褒めするような末期感が漂う。
観光地的に言うと、日本は、憧れの別荘地たる軽井沢への道か、廃墟で別な意味で注目されてしまっている鬼怒川温泉への道かhttp://deepannai.info/kinugawa-onsen-ruins/ 、その岐路に立っている。後者に近づいている。
2
ところで、ウォーラーステイン『近代世界システム』を読んで思ったのだが、排外主義を採用して栄えた国というのはない。排外主義を採用した瞬間国が傾いて帝国主義競争に敗北した例としてはルイ14世治世下のフランスとナチスドイツがある。ルイ14世当時のフランスはヨーロッパの中枢国家だったが、ユダヤ人やプロテスタントを排外して、資本がオランダやイギリスに流れ、帝国主義競争の後手に回った。
- 作者: パンカジミシュラ,園部哲
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2014/10/25
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
近代世界システムI―農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立―
- 作者: I.ウォーラーステイン,川北稔
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2013/10/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る