カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

椎名高志『絶対可憐チルドレン』少年サンデーコミックス

私のブログではえらい珍しいことだが、マンガの話題を。
久しぶりにマンガを買って、久しぶりに繰り返し繰り返し読んでいる。椎名高志はたいへんに作業の丁寧な漫画家であり、『椎名百貨店』*1収録作品とか、『GS美神』1話とかは、マンガ作成の模範作としてある意味私はたいへん高く評価している。その椎名高志が久しぶりに長期連載をしている。それが『絶対可憐チルドレン』である。
もう三歩くらいドロドロした方向へ踏み込んでもらえると実に私好みになるが、その三歩手前で踏みとどまっているところがこの漫画家の品の良さだと思う。
テロリストを「普通の人々」とネーミングするあたりに、椎名高志のいいセンスを感じる。「普通の人々」の内面をもう三歩踏み込んで掘り下げると、少年漫画の枠をはみ出してドロッドロした部分に触れてしまうので、そうなるとものすごく私好みになるが、たぶんコメディとしては成立不可になるからそうはならないだろう。*2 
椎名高志の日記など読むと、編集者が無駄な制限を椎名高志に課しているようで、というか椎名高志のセンスを編集者が無駄に削いでいるところがあるみたいで、もっと好き勝手に作者にぶん回させればいいのに、とか私は思う。http://www.ne.jp/asahi/cna100/store/index.htm
作品中の「超能力」は「才能(個性)」のメタファーであり、「才能(個性)」はたいがい周囲には迷惑で本人にとっても扱いづらく苦しみの元だ、というのが1巻で作者自身が語っているテーマであり、その線で理性的に作品は構築されている。もちろんロリという非理性的裏テーマが作品には滲んでいるのだが、それは君と僕との秘密だ! 秘密でもなんでもないけど。ヒロインの名前が「薫大将」からとってあり、「葵上」「紫の上」が脇役であるところに地味にメッセージ性があるようなないような。
ところで、この作者ってコメディ作家だったんだな。私はギャグは読めてもコメディを読めない体質だったんだが。
全く関係ないが、単なる偶然なんだが、作中登場する「桐壺局長」のルックスは、ロリエロマンガ家の「あじまる」さんのルックスにそっくりである。http://www.kisweb.ne.jp/personal/pucchies/
余計なことを書くと、この作品、「チルドレン」の家族を連載冒頭に描いてしまったのは、後の展開から考えると制約になってしまっているんじゃないかな、とも思う。適切に長期連載が続き、きれいに終わることを願う。

絶対可憐チルドレン 1 (少年サンデーコミックス)

絶対可憐チルドレン 1 (少年サンデーコミックス)

ぽちっとな 

*1:

(有)椎名百貨店 1 (少年サンデーコミックス)

(有)椎名百貨店 1 (少年サンデーコミックス)

*2:「普通の人々」によるテロリズムは、この辺を連想させる http://web.sfc.keio.ac.jp/~oguma/report/thesis/2001/ueno.htm http://www.keio-up.co.jp/iyasi/iyasitop.htm 私が勝手に連想しているだけで、椎名高志の意図はそこにはないだろうけど。三歩踏み込むとあるかも知れんけど。