北朝鮮の軍事力と日本の軍事力
過日、軍事史の専門家・山田朗(やまだ・あきら)*1先生の講演があったので聞きにいった。さまざま有益なお話を聞いた。詳細はいずれアップするが、まずは北朝鮮と日本の軍事力についてだけ記述しておく。
1;戦争はあくまで政治の延長だ。「ある日突然戦争になる」ことはない。戦争には必ず経済的要因がある。
2;北朝鮮は人口2000万人の国だ。北朝鮮軍は100万人だ。この軍事力は巨大に見えるが、北朝鮮の輸送力はゼロだ。北朝鮮は何年にもわたり燃料が不足している。そのため北朝鮮空軍は演習ができない。北朝鮮空軍は演習せぬままぶっつけ本番にならざるを得ない。燃料がない国は人材養成ができず、人的資源が足りなくなる。現在の北朝鮮の軍事力はそのようなものだ。燃料不足で輸送力がない。つまり戦闘力がない。だから核やミサイルを持っているぞ、というブラフに北朝鮮は頼らざるを得ない。
3;兵士一人当たりにどれだけ金をかけているか、というのは兵士の質の指標になる。
中国軍は250万人の兵員がいて地域治安維持などに当たっているが、兵士一人当たり2万5000ドルしかかけていない。「質」は低い。
アメリカは兵士一人当たり25万ドルかけている。
日本・フランスは兵士一人当たり18万ドル。
北朝鮮軍は兵士一人当たり5000ドル。
4;中国の潜水艦は5隻しか存在しない。日本の対潜哨戒機は100機存在する。過剰な配置が行なわれている。
5;軍事に関する情報は、半分が情報戦・心理戦だ。北朝鮮軍を過大に宣伝するのは、米軍の補給部隊としての日本軍の拡大路線に合致する。
6;テロ対策特措法以降、日本の自衛隊の船が中東へ派遣されている。日本の補給艦はアメリカの補給艦に補給する、という方法で間接的に米軍に補給している。
7;湾岸戦争以降の15年間で、日本の自衛隊は長距離輸送能力を持つに至った。
日本の自衛隊の「護衛艦」は従来、航続距離が短かった。「自衛」を目的とする軍事力だから、航続力を短く制限していた。だがアメリカの要請により、近年、遠征能力が伸びている。
国会では以下のように審議された。1380tの「あつみ」型輸送艦の後継艦として、8900tの「おおすみ」型輸送艦を配置することにした。だが、1380tの「あつみ」型は近海用、8900tの「おおすみ」型は遠洋用、全く別の船だ。
湾岸戦争以降、海上自衛隊の総トン数は30万tから45万tに大型化した。
日本の海上自衛隊は世界五位の海軍である。日本の軍事費は年間5兆円(カマヤン注;日本の年間税収の六分の一に相当する)。
8;アメリカは年間50兆円を軍事費に使っている。これは世界の軍事費の半分に相当する。(カマヤン注;日本の年間の税収を超える)
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