「これは子どもには見せられない」という感覚
http://togetter.com/li/104249
それでも、ぼくたちは、ある漫画を見て、ああ、これは子どもには見せられない、と思ったりする。それも一瞬で。しかも、ある程度は大人たちに共通な感覚らしい。この判断基準はどこから来るのか?(続く) wagu108 2011-02-23 23:02:34
これこそが、ぼくの疑問であって、表現規制をめぐる問題においても、本質的なところではないかと思う。(続く) wagu108 2011-02-23 23:03:44
これからの連想。
1
子どもに対して大人は「教育的であるべきだ」という態度を身構えることを要請される。
子どもへの教育には段階があり、より基礎的な事柄を教育していない段階で迂闊に応用的な事柄を変に「教育」しないほうがいい、というのがある程度誠実な「大人」の態度だ。本末を転倒させた教育をするべきではない、という判断が働くのがある程度誠実な「大人」の態度だ。
2
エロマンガは、マンガ文化の中でも応用的発展的派生的なジャンルだ。
具体例として、エロマンガの中で最も出来がいいと思われる町田ひらくや天竺浪人を想定してみる。これらは文学としてかなり高度なところにある。高度であり、読者が少なくとも思春期的段階を経ていることを要求している。となると、思春期的段階に達していない読者には読解困難な作品であり、積極的に読ませようとするのは変態的である。幼児にウェーバーやウィトゲンシュタインを読ませようとするのが変態的であるのと同じように。
「子どもには見せられない」という感覚の全部ではなくともかなり多くの部分がそれに由来するのではないかとか言ってみる。
3
一般にエロマンガは芸術という言葉を嫌うものだが、芸術の域に達した作品は読者に緊張を強いるものである。読者の感受性が充分高かった場合、それは心的影響をある程度は与えうる。年齢に関らず感受性がたりない場合は影響を被らず、成人であろうと理解力が足りない場合は心的影響の処理が情けないかたちとなりがちだ。
4
じゃあ「芸術」性の乏しそうなもの、エロマンガのうち「低俗な作品」というのを想定してみる。私の読書経験内でかつブログ読者に想像可能そうなものとしては、山本直樹の森山塔名義作品はそれにかなり近いと私は思う。だが山本直樹は文化庁メディア芸術祭賞優秀賞を受賞している漫画家であり、日本を代表する漫画家の一人だといえる。
今まで名を上げたエロマンガ家各氏は、少なくとも石原慎太郎というエロ小説家よりは才能と天分があるだろう。
5
もっと俗悪なエロの例はないかと私の見聞の経験内でかつブログ読者が知っていそうなものを脳内検索すると、村上隆というエロ作家が思いついた。アレは作品は俗悪だけど、現代アート文脈でデコレーションされているから東京副知事御推薦であるらしい。
6
マンガの出来の良し悪しというのは、ある程度競争原理の中で篩いにかけられる。また評論家などの鑑定士によって位置づけがなされる。村上隆程度の芸術性を他のエロマンガの中に認めるのは、現代アートの勉学をきっちりしている評論家が今後ならびに現在ちゃんと育っていれば、そんなに難しくなさそうに思うので、業界は彼らをマンガ界の用心棒役として認識し、今以上に大事にすべきだろうとは思う。
「良いマンガ悪いマンガで区別するな」、というマンガ擁護論は、マンガに出来の優劣はない、という意味ではないと思う。「道徳的」観点でマンガの良し悪しを判定するのは誤りだ、という意味のはずだ。力ある作品はデモーニッシュなものだ。町田ひらくも天竺浪人も山本直樹もデモーニッシュな作品のほうがしばしば作品として優れているタイプの漫画家だ。
7
「子どもには見せられない」というのは「自分自身を性的な存在として子どもには認識されたくない」という意味をかなり多く含むと思われる。
エロマンガの例で言うと、作品としてはくだらねえ、と思っても自分の性的ポイントを突かれた作品は再読せずにいられなかったりする。しかしそこが自分の「性的ポイント」なのだ、と、表明するには相手を選ぶものである。
「性的な自分」というものは処理しにくいものだ。私たちは日常、「性的な自分」をある程度切り離して生活しているはずだ。
「性的な自分」を処理しきれない大人は、社会に存在する「性的なもの」が目に入るたび、自身の存在を脅かされるような感覚を覚えるのだろうと思う。「子どもに見せられない」というのはその感覚から生じる悲鳴だろうとは思う。
そういう人が保護者だと、子どもは性的に歪み易いと私は思う。
8
以上ほぼエロマンガに限定して書いたけど、エロマンガに限定するべき話ではないんだろうな、とも思う。が、範囲を広げると私の手に負えなくなるので、限定的に記す。限定以外の件はブログ読者の同志諸姉諸兄に託す。
感じるところのある同志は をクリックされたし。
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