小熊英二『社会を変えるには』のメモ
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小熊英二『社会を変えるには』の存在は山形浩生 のhttp://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20120902/1346588118で知った。山形浩生は小熊英二『社会を変えるには』をボコボコに叩いている。
実際読んでみた。良書だった。
それをなぜ山形浩生はボコボコに叩いたのか。
2
小熊英二『社会を変えるには』は、読者対象がかなりはっきりしている。
「知識の不足が原因で、うっかりネトウヨに転落してしまいそうな学生」がメインの読者対象だ。
次いで、「脱原発デモ」に実際に参加しているか、「脱原発デモ」に共感を寄せている人々が主たる読者対象だ。
おまけ的に、「社会運動」とは70年代的学生運動・左翼運動に違いない、という苔生した前提でいるマスコミ関係者が読者対象だ。
特に「知識の不足が原因で、うっかりネトウヨに転落してしまいそうな学生」に、大学教養レベルの教養をちゃんと与え、民主主義とか社会運動とかはどういう歴史を持っているか、という俯瞰を正しく与えておけば、「ネトウヨ」的陥穽に陥らないで済むはずだ、という意識が重奏低音としてあり書かれている、と私は読んだ。
小熊英二は自分自身が脱原発運動に実際に参加している。ともに参加している仲間に、「挫けるな、脱原発運動は勝てる」と勇気づけているのが、この本だ。
3
じゃあ山形浩生は何ゆえに本書をボコボコに叩いているのか。
読者対象が上記の人々だと山形浩生は読み取らず、小熊の説明を「僕はそんなことは知っている、僕はそんなことはこれを読まないでも知っている、さっさと『社会を変える』キーを示せ、示せないのかバカ野郎」と読んだんだろうなと思う。
示しているんだけどね。山形浩生には見えなかっただけで。
「脱原発デモ」は山形浩生には他人事で、メッセージを汲む力がなかったか、メッセージを拒絶したかったかのどちらかなのだろう。
4
小熊英二と山形浩生は、もし人間を鶴見俊輔と鶴見祐輔の二つに分けるとしたら、小熊英二が鶴見俊輔、山形浩生は鶴見祐輔に分類されるよな、とか、思った。
鶴見俊輔は兵士として召集され人を殺すくらいなら自殺しようと考え慰安婦の生活の面倒を看る役職に戦中配属され、人を殺さずに終戦を迎え、戦後、「転向」についての研究書を執筆し、べ平連活動に従事し、その中で死ぬことを恐れなかった。
鶴見祐輔は戦前エリートの典型で、自分が「転向」したことも気づかないまま平気で「転向」した。
感じるところのある同志は をクリックされたし
- 作者: 小熊英二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/08/17
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