〔書き起こし〕「自粛で東京は救えるか」1
〔書き起こし〕新型コロナと戦う その先の世界へ 自粛で東京は救えるか 膨大検査は、医療崩壊を防ぐ
https://www.youtube.com/watch?v=7EtDPtKd4L0 の書き起こし
升味(司会) 新しいシリーズを始めましたけれども、新型コロナをめぐる状況は日々刻々と変わってきています。それで無理を申し上げて、また金子先生と児玉先生に参加していただき、緊急版をお送りいたします。
今日のお題は「自粛で東京は救えるか 膨大検査は、医療崩壊を防ぐ」ということです。
皆さん身近なところの病院で身に染みてお感じになっているかもしれませんが、拠点病院・中核病院が、外来が非常に難しくなってきている状況もあり、また救急医療の学会がふたつあるんですけれども、こちらから救急医療が崩壊の瀬戸際に来ていると。一部の病院では防護服も足りなくなりそうになっているという声明を出されています。
こういう状況下でいったい今何をしたら良いのかということを児玉先生に伺いたいと思います。この中には新しい抗体検査の未来のような話もありますし、民間が率先してこの危機に対応しようとしている者に対して政府が必ずしもをきちんとしたリーダーシップをとっていないということの話もあります。
それではご出席者は、東大先端研がん・代謝プロジェクトリーダーの児玉龍彦先生と、それから立教大学特任教授の金子勝先生です。よろしくお願いいたします。
では児玉先生。東京はすごく感染者が増えているという報道はありますが、本当のところどうなっていると見たらいいんでしょうか。
児玉 はい。今、日本全体で感染者が増え続けて、それから日本全体で、地域の基幹病院と言われる市民病院だとか医療センターだとか大手の民間病院だとか、そういうところで次々院内感染が おこってしまっています。
それからさらに いろんなスポーツ界なんかでも、柔道界なんかでも、どんどんコロナが広がってきていて、とてもオリンピックどころではない。まったくそういうものが現実的でなかったということが分かってきたということがおこっている。
その中でも特に注目されます医療崩壊の心配というものは、どういうことが起こってるかと言って、東京で一番中心的にこの感染者が出ているのは、上野永寿総合病院というところです。ここは実は2月の屋形船の感染者と、フランスから帰国した感染者が入院していたわけですが、そこで3月23日に入院者2名に PCR 検査で、感染が広がってることが分かった。それから3月29日までに一挙に100人近い人が感染してることが。それで病院の中なのに看護師の病欠人数が普段より明らかに多くて、おかしな感じがしていた、という格好で、結局、昨日段階の報告では20人死亡160人感染ですかね。そういうところまで行ってしまった。
それでこの病院の非常に困ってしまうところは、1日100人以上外来患者を見ておりましたから、2月の屋形船から感染が広がっているとすると、3000人以上の方を追跡調査しなくてはならない。
そしてこの病院からさらにまた転院されている方がいらっしゃいます。永寿総合病院は400床で、救急車が毎晩10台来る病院ですから、そうするとそこから次々転院していくという、たとえば慶応病院に転出された方が、そこから18名の集団感染を起こすというような格好で次々と色んな所へ感染が広がってしまっている、ということが起こっている状態です。
升味;他の病院でも例えば墨東病院で一時、救急対応を止めていたり。あるいは私たちですと噂の域を出ませんけれども東大病院とかそういうところでもかなり大変になってるとは聞いてるんですけど、それは本当なんですか?
児玉;今ですね、すごく難しいのはですね、色々な病院で院内に来ている患者をもう一度検査し直さなくちゃいけない。永寿総合病階から外来で患者さんが来られますと、すぐコロナの検査をしたり、その患者さんを別な部屋へ案内しなくちゃならないけれども、そういう方がたくさんいらっしゃいます。この写真に出ていますのは、いつもピーク時の10時30分の東大病院の外来受付4月9日の写真ですが、それを見ますともうほとんど患者さんがいない。
それでお医者さんは一生懸命 FAX で処方箋送ったり、患者さんに「今日は外来非常に難しいから来ないでください」ってことを切り替えて。これだけじゃなくて、病院はコロナの患者さんを引き受けたり、重症の患者さんの対応を準備するために病床を開けるなどの社会的責任を持ってきます。
そこにどういう患者さんが感染して出てくるかってのは。実は東大病院って永寿総合病院からすぐなんですよね。近いんです。
升味;そうしますと先生、〔この画像は〕誰も座っていないような受付ですけれども、これは患者さんを受け入れていないからこうなってるって事なんですか?
児玉;ですから非常に難しいです。院内でも入っているかもしれないということになりますと、院内感染を防ぐには全部検査しない限り無理になってしまいますので 。手術の停止であるとか。急激に衣料が萎縮していくと言うか。
外からは医療放棄に見えるんですが、そうではなくて、防護体制を作り直さなくてはならないということに今なっています。
升味;お医者さんの側としてはこの患者さん、弱った患者さんが病院に来て、そこにある医療関係者とかそういう人たちが感染してるかどうかわからない状況で診察をしたら、手術をしたり検査をしたりすると、そこでまた広がってしまうかもしれないという心配もあるからその形になってるって事ですか。
児玉;それでですね。武漢で起こったことを紹介します。武漢では鍾南山さんという、SARSの火消し役と言われる方が実際に武漢に入って、83歳のご老人のお医者さんなんですが、非常に素晴らしいリーダーでして。いつも感染が起こると火消し役として出てくる経験をお持ちの方がいらっしゃいます。
1月18日、鍾南山氏のチームが武漢に入って、それまで地元政府が公にしていなかった事実を発見します。
それは第1番目に十数名の医療従事者の感染。それから濃厚接触者の追跡ができなくなっている。それから1月16日以降、病院での検査が一件も行われていなかったことを発見しました。
金子;これって今の〔日本の〕状況とそっくりじゃないですか?
児玉;そっくりでしたが、ここからが全く違うのは、鍾南山氏を中心とする専門家は、北京に翌日戻りまして、視察で得られた知見を、中国の健康保険政策を策定する国家衛生健康委員会に報告しました。そしてこの時、鍾南山氏が武漢のロックダウンと、それからの千人の病床増設ということを提案されます。
升味;〔そこまでは〕東京のさらに初期の状況に入っていますよね。医療従事者の感染が問題になり、その濃厚接触者の追跡の形はできなくなり、検査が非常に少ないという。
児玉;そこへ専門家が入ってリーダーの専門医師が1日で状況を変えます。そして23日には武漢のロックダウンと千床の火神山病院と雷神山病院の二つの病院の建設が始まって、これが2月3日に完成して、人民解放軍の医師とか看護師とか5万4000人が投入されるという驚くべきことが行われました。
これは一応、ロイターの「封鎖の内幕」というところに書かれていて、今ご報告します。https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-wuhan-scientists-idJPKCN21R1E6
金子;今の話を言いて、今我々は岐路にあると思うんですよ。専門家委員会は接触を8割減らせば1か月で減るとか7割だと2か月になるとか言ったらこういうの話ばっかりやってるんだけど、休業をして、夜をねなんとなく検査をしてないまま夜が感染源だみたいな、茫漠とした話をやってるんだけど、ちょうどこの状態で起きた時、中国で起きたのは、児玉氏がずっと言っているんだけど、院内感染と家庭内感染。これが異様に広がっちゃって後で収拾がつかなくなるっていう。同じような道をたどってるんじゃないか。
升味;ここで転換をしないとどうしようもないところにきているというのが児玉先生のご意見ですよね?
児玉;ここ一番大事なのはですね。この時に、この後に、WHOが中国と共同調査をします。それで日本の感染研の先生も参加されていらっしゃいます。そこで膨大な検査をやって膨大な追跡をやって、感染集積地に医療を集中的に入れると。感染が集積していないところは個別の追跡に切り替えて、感染集積地を救済するように向かう。 precision medicine 精密医療に切り替えるわけです。
それをWHO の報告が言っているのに、世界がこの WHO 報告の意味をよく受け止められなかった。その WHO 報告に従っているのは、韓国・台湾・香港・シンガポール・マレーシアなど東アジアの国は一定の抑え込みを示して、すでに中国と韓国は ピークアウトを示しつつあります。
升味;現状すごく大変になっている、だけど政府から出ている方針は「外出するな」それから「おうちにこもれ」「人との接触を避ける」これだけですが、これだけで東京が助けられるかって言うと全然そうじゃないって、みんななんとなくわかっていると思うんですよ。もっと方針転換をきちんとしてもらわないといけないということで。先生のご提案というのはこういうことになるんですか?
児玉;膨大検査をやるということはもうだんだん異論がなくなってきたと思う。だけれどもただ検査をやるということではなしに、膨大検査っていうのは一体何のためにやるかって言うと、膨大検査に二通りの議論が混同されています。
一つ目。膨大検査でどこを守るかというと、守ってほしいのは基幹病院。ですから地域の中心になるような病院で、色んな一般医療の中心でもありますよね。
今までいろんな感染がおこって、〔和歌山の〕有田済生会病院から、大分医療センター、門司の新小文字病院、色んな所がありますが、基幹病院って言われる地域で最も大事な病院、ここの外来に来る人。入院してる人。医療従事者。そういう方は、基本的に全部検査をしなくてはならない。
たくさん検査をやってサンプリングをする。こういう病院のそれぞれの地域の、何人外来が来て何人陽性であったかっていうのが分かると、実はその地域にどの程度深刻な問題があるかということがすぐわかります。これが一つですね。
それで、この検査をやることによって病院の中のお医者さん達が疑心暗鬼になったり、救急を止めるっていうことをやらなくて済むように、病院前にテントを張って、普通の外来の方は1日前に来て検査をやって、翌日診察を受けると。そういう格好にせざるを得ないと。
病院内ではお医者さん看護師さんなんかをかなり広範に検査しないといけない。慶応大学病院のような例ですね。