総務省による「インターネット上の違法・有害情報への(略)研究会最終報告書案」整理(1)
■[檄文][告知]総務省による「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会最終報告書案」に対する意見募集 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060711#1152562032 の続き。
面倒臭くて死にそうになるが、他の人も同感だろうから、総務省による「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会最終報告書案」http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060711#1152562032 の「有害情報」関連部分を以下にピックアップする。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060630_11_1.pdf
http://blog.goo.ne.jp/kamayan13/d/20060711
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第1 はじめに
近年におけるインターネットの急速な発達及び普及は、利用者である国民に大きな利便性をもたらし、インターネットは、国民の社会活動、文化活動、経済活動等のあらゆる活動の基盤となるなどその充実に必要不可欠な存在となっている1。その一方で、インターネット上における違法な情報、有害な情報の流通が大きな社会問題になっている。
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ところが、インターネット上には、権利侵害情報以外の違法な情報(わいせつ情報、違法薬物の販売広告情報等の法令に違反する情報。以下「社会的法益等を侵害する違法情報」という。)、違法な情報ではないが公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報(爆発物の製造方法に関する情報、人を自殺に誘引する情報等)や特定の者にとって有害と受け止められる情報(違法ではないアダルト情報等)等が流通しているところ、これらの情報については、プロバイダ責任制限法及び関係ガイドラインが適用されるものではないため、プロバイダや電子掲示板の管理者等が情報について送信防止措置等の対応を行った場合における法的責任や、特定の情報の流通が法令に違反するか否か等の判断に関する指針が存在しない状況である。
こうした状況の中、インターネット上の自殺関連サイトにおける情報等を契機として集団自殺を決行する事例の増加7が社会問題となっていることなどを受けて、政府は、平成17年6月30日、「インターネット上の違法・有害情報等に関する関係省庁連絡会議(IT安心会議)」において、インターネット上の違法・有害情報対策について取りまとめを行った8。政府の取りまとめにおいては、インターネット上の違法・有害情報への対策として、プロバイダや電子掲示板の管理者等による自主的な対応を推進することの重要性が再確認され、「フィルタリングソフトの普及等」、「違法・有害情報対策に関するモラル教育の充実」、「相談窓口の充実等」と並び、「プロバイダ等による自主規制の支援等」が対策の柱として盛り込まれた。
政府の取りまとめを受けて、総務省は、プロバイダ等による自主規制の支援等に関する具体的な施策として、同年8月からインターネット上の違法・有害情報について、プロバイダや電子掲示板の管理者等による自主的対応及びこれを効果的に支援する方策等について検討するため、「インターネット
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上の違法・有害情報への対応に関する研究会」を開催することとなった9。
本研究会では、平成17年8月1日から平成18年○月○日まで計10回の会合を開催し、インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討課題を整理した上で、プロバイダや電子掲示板の管理者等による自主的対応及びこれを効果的に支援する方策について検討した。〔脚注〕
9 平成17年7月28日付け、総務省報道資料「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研
究会の開催」(http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050728_5.html )参照。
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(2)インターネットの特性に起因する限界
インターネット上の違法・有害情報は、膨大な量の情報が日々新たに流通に置かれる状況にあるため、プロバイダや電子掲示板の管理者等による対応には限界がある上、仮に、プロバイダや電子掲示板の管理者等により送信防止措置が行われた場合でも、同一の情報が他のプロバイダや電子掲示板等を利用して掲載される、検索サイト等に蓄積されたキャッシュ情報が閲覧可能な状態のままである等のインターネットの特性に起因する限界がある。
(3)検討
第3の1(1)③のとおり、インターネット上を流通する違法・有害情報に対して、アクセスプロバイダという立場から、自らがアクセスを提供する他人のサーバ内の電子掲示板、ウェブサイト等に掲載された違法・有害情報への対応を行うことは技術的理由等により困難を伴うことが多い。
そこで、本研究会においては、電子掲示板の管理者やサーバの管理者等といったデータファイルやサーバの管理権限を有する者(以下「電子掲示板の管理者等」という。)による送信防止措置を念頭において検討を行うこととした。
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(2)社会的法益等を侵害する違法な情報
インターネット上を流通する違法な情報のうち、社会的法益等を侵害する違法情報については、法律の専門家を擁しない電子掲示板の管理者等にとっては、特定の情報の流通が違法であるか否かに関し、法解釈及び法適用(事実認定)の両面において困難が伴うことが通常であり、個別具体的な事案において情報の違法性を判断することが難しく、また、行動指針や判断を支援する仕組みが存在しないため、自主的対応に消極的とならざるを得ない場合がある。また、送信防止措置等の対応を積極的に行いたいという電子掲示板の管理者等が存在するところ、自主的対応に関する法的責任が明らかでないことが一つの障害となっている。
(3)公序良俗に反する情報
インターネット上における、違法行為を目的とした電子掲示板への書き込み、人を自殺に誘引する情報の電子掲示板への書き込み、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報の流通等を契機として違法行為(窃盗、自殺幇助、爆発物を使用した傷害等)が行われる事案が発生し、社会問題となっている 16。これらの、必ずしも流通が違法ではない情〔脚注〕
14 信頼性確認団体については、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会において、著作権関係及び商標権関係の信頼性確認団体の認定手続等が別途定められ、一定の手続に従って認定が行われている。
15 平成18年2月現在、著作権関係の信頼性確認団体の一つであるJASRAC((社)日本音楽著作権協会)を経由して電子掲示板の管理者等に対し18万件を超える送信防止措置の依頼がなされ、そのすべてについて相当の期間内に送信防止措置が行われている。また、平成17年9月に、商標権関係の信頼性確認団体が認定されて活動を行っている。
16 平成17年6月に山口県の高校生がインターネット上の爆発物製造方法を記載したサイト等を参考にして爆発物を作成して使用した傷害事件、同年7月に少年がインターネットのサイト「闇の職業安定所」において共犯者を募集し、ひったくりを行った窃盗事件等。
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報についても積極的な対応を検討している電子掲示板の管理者等が存在するところ、このような管理者等は、一般的に、利用規約や約款等の契約において、公序良俗に反する情報の流通を禁止するとともに、流通した場合には送信防止措置等の対応を行うことを定めている。しかし、公序良俗に反する情報については、違法な情報と異なり、法律の条文等の形で明確な判断の根拠が示されておらず、個別具体的な事案において、公序良俗に反する有害な情報か否かに関する画一的な基準を設けることは困難であり、自主的な対応を行うことが難しい場合がある。
(4)青少年にとって有害な情報
青少年にとって有害な情報については、有害か否かに関する画一的な基準を設けることは困難であり、電子掲示板の管理者等による自主的な対応を行うことは難しいが、受信者側での、事前に設定した基準に基づきインターネット上のウェブページ等の情報を評価判別し、不適切と判断された情報へのアクセスを防ぐ、いわゆるフィルタリングサービスによる対応が行われている状況にある。
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第6 有害情報への対応に関する提言
特定の情報を有害と評価するか否かは情報の受け手によって異なるため、違法ではない情報について有害性を判断するための画一的な基準を設けることは難しく、個々の電子掲示板の管理者等と利用者との間の契約関係等(電子掲示板のポリシー、趣旨等)に委ねざるを得ない面がある。加えて、電子掲示板の管理者等が、インターネット上において情報の流通を媒介し又は流通の場を提供して表現行為を促進する役割を果たしていることを考慮すると、違法ではない情報への対応に関して、統一的な対応指針を示して送信防止措置等の対応を促すことについては、表現の自由の観点から慎重な検討が必要である。
しかし他方で、近年、違法行為を目的とした電子掲示板への書き込みやウェブサイトの開設運営、人を自殺に誘引する情報の電子掲示板への書き込み、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれの高い情報の流通等を契機として違法行為(窃盗、自殺幇助等)が行われる事案が発生しているなど、一定の情報の流通について、電子掲示板の管理者等による自主的な対応への社会的期待が高まっている状況が認められる。
したがって、ここではいわゆる有害情報の中で、公序良俗に反する情報及び青少年にとって有害な情報に限って、電子掲示板の管理者等による対応の在り方について検討する。
1 公序良俗に反する情報
有害情報のうち、公序良俗に反する情報については、これまでプロバイダや電子掲示板の管理者等により、契約約款や利用規約に基づく送信防止措置や注意喚起等の自主的な対応が行われてきたところであるが、どのような情報が公序良俗に反する情報に該当するのかについての判断が困難な場合がある。
そこで、公序良俗に反する情報への該当性の判断を支援するため、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせる契機として情報が利用された事例、電子掲示板の管理者等により公序良俗に反することを理由として送信防止措置が行われた事例、我が国の法令における「公の秩序又は善良の風俗」という文言の解釈、さらには諸外国におけるインターネット上の情報の流通に対する法制度等を参考にして、電気通信事業者団体等においてモデル約款を策定
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し、一定の指針を示すことにより、電子掲示板の管理者等によるこれらの情報への対応を効果的に支援することが適当であると考えられる。
具体的には、現在、社団法人テレコムサービス協会において策定されている「インターネット接続サービス等に係る事業者の対応に関するガイドライン」や、「インターネット接続サービス契約約款モデル条項(アルファ版)」において、公序良俗に反する情報として、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせる情報を例示列挙するという方法などによることが考えられる。
2 青少年にとって有害な情報
青少年など特定の者にとってのみ有害な情報への対応については、どの情報を有害ととらえるかは受信者ごとに異なることから、受信者側で情報の取捨選択を行うフィルタリングの導入が有効な対応であると考えられる。このような対応は、受信者の選択により導入されるものであるため、法的な問題(送信防止措置等の対応に伴う法的責任)を回避することができること、日々新たに流通に置かれる違法・有害情報に迅速に対応することが可能であること等の利点もあることから、フィルタリングによる受信側の対応(受信者による情報のフィルタリング等)を積極的に推進していくことが重要である。
また、青少年を有害な情報から保護するためには、保護者、教職員等の意識を高めていく必要があり、これらの者を対象とした、インターネットの安心・安全利用に関する啓発活動についても、積極的に推進していく必要がある。
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パソコン向けフィルタリングサービスを利用している場合、「ウィルス対策ソフトに付属のフィルタリング機能を使用している」が37%で一番多く、「インターネットサービスプロバイダが提供しているフィルタリングサービスを利用」が34%と次いで多くなっている。フィルタリングサービスを利用している理由については、「子どもが有害サイトにアクセスできないようにする必要性を感じたため」が87%と、子どもに有害情報を見せないようにするために利用している割合が最も多かった。 〔略〕
以上のことから、フィルタリングサービスについては、特に青少年を有害情報から守る意味で必要性についての認識はあるものの、まだその存在や内容が十分に認知されていない、導入の手続が面倒そう等のイメージがあることから利用率が低い状況にあるといえる。
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ア モバイルフィルタリングの研究開発
近年、インターネットに接続できる携帯電話が子ども達のコミュニケーション手段として広く使われているが、携帯電話はパソコンと比較してパーソナル性や機動性が高いため、親の目の届かないところで違法・有害情報サイトにアクセスできるという危険性をはらんでいる。中でも社会的問題となっている出会い系サイトを通じた児童買春等は、その大半がモバイル端末からのアクセスとなっている28。一方、携帯電話ではパソコンに比べ処理能力等の点で劣るため、児童を有害コンテンツから保護する有効な手段であるフィルタリング機能が実現していなかった。
そこで、総務省では平成16年から17年にかけてモバイルフィルタリング技術の研究開発を行い、平成18年3月に研究成果についての取りまとめを行った。本研究開発での検討の成果をもとに、平成17年7月から順次携帯電話事業者各社では、従来よりも機能の向上したフィルタリングサービスの提供を開始している。
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(3)インターネットの安心・安全利用に関する啓発活動の状況
近年、子ども達が容易に携帯電話やインターネットに触れる環境が整ってきていることから、児童・生徒を保護・教育する立場にある保護者及び教職員に対してもインターネットの安心・安全利用に関する啓発が必要になっている。
これまでも、電気通信事業者等様々な団体によって、インターネットの安心・安全利用に関する啓発活動が行われてきたところであるが、これらの取組をさらに加速させるため、総務省では、平成18年4月から、社団法人電気通信事業者協会、社団法人テレコムサービス協会、社団法人日本インターネットプロバイダー協会、社団法人日本ケーブルテレビ連盟、財団法人インターネット協会、財団法人マルチメディア振興センター及び文部科学省と共に、主に保護者及び教職員向けにインターネットの安心・安全利用に向けた啓発を行うガイダンスのキャラバンである「e-ネットキャラバン」を、1年間に1,000講座を目標に実施している30。今後、3年間にわたり、全国の学校を中心に実施する予定である。
(4)青少年にとって有害な情報に対する取組に関する提言
上記のとおりフィルタリングサービスの利用促進に向けた様々な取組が行われてきているところであるが、フィルタリングサービスの利用状況をみると、未だに利用者における認知率・利用率が十分とはいえない状況にある。
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このため、フィルタリングサービスの更なる利用促進に向けて、既存の各種普及啓発活動の相互連携を図るとともに、各事業者においては、フィルタリングサービスの内容、利用方法、手続等について、ガイドブック、セミナー、広報等を通じた普及啓発活動が一層積極的に行われていくことが期待される。
また、既に大手プロバイダの多くはフィルタリングサービスを提供しているが、中小規模のプロバイダは自社単独でフィルタリングサービスを提供することが難しいことも多いことから、中小規模のプロバイダ間での協力、連携について検討するなど、フィルタリングサービス提供の促進に向けた取組を行うことが考えられる。
さらに、利用者ニーズに応じた利用しやすいフィルタリングサービスに向けた改善が図られていくことも重要であると考えられる。例えば、携帯電話では、一定のフィルタリングサービスが提供されてきているが、パソコン向けに実現しているフィルタリングサービスのレベルとはまだ差があることから、モバイルフィルタリング技術の研究開発における技術的な成果、利用者ニーズ等も踏まえ、フィルタリングサービスの更なる改善に向けた取組が行われていくことが期待される。
また、青少年を有害情報から保護し、健全な育成を図っていくためには、青少年を教育する立場にある保護者、教職員のインターネットの安心・安全利用に対する意識を向上させていく必要があり、今後とも関係機関において啓発活動を積極的に行うことが必要である。
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3 今後の方向性
本研究会においては、インターネット上の違法・有害情報への対応として、電子掲示板の管理者等による、送信防止措置(削除等)の自主的対応を支援する方策(違法情報への対応ガイドラインの策定)、フィルタリングサービスの利用等受信者側での対応や、プロバイダ責任制限法第4条の発信者情報開示制度の課題等を検討したところであり、今後はこれらによってインターネット上の違法・有害情報に対し、効果的な対応がなされることが期待される。
また、利用者の選択により、匿名性をある程度排除しうるようなサービスの提供のあり方も参考となるところである。
その上で、なおインターネット上の違法・有害情報への対応が十分になされていないと評価され、その原因が匿名性の存在にあると考えられる状況があるのであれば、様々なレベルでの匿名性が存在する中で、どのようなレベルでの匿名性が真に問題となっているのかを把握し、技術的、経済的な対応可能性や実効性、匿名での表現の自由、通信の秘密との関係等を十分に考慮に入れつつ、必要に応じて可能な対応を検討することが考えられる。
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第10 まとめ
インターネット上の違法・有害情報の流通が大きな社会問題になっている状況にかんがみ、本研究会においては、インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討課題を整理した上で、プロバイダや電子掲示板の管理者等による自主的対応及びこれを効果的に支援する方策について検討してきた。
インターネット上の違法・有害情報について、アクセスプロバイダの立場で送信防止措置等を行うことは、技術的理由等により困難であることが多いことから、本研究会では、電子掲示板の管理者やサーバの管理者等といったデータファイルやサーバの管理権限を有する者による送信防止措置を念頭に検討を行った。
その上で、(1)電子掲示板の管理者等による自主的対応に関する法的責任、(2)電子掲示板の管理者等による違法・有害情報への自主的対応を支援する方策、(3)プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の運用、(4)インターネットにおける匿名性、(5)海外からの情報発信等について検討を行った。
検討の結果、電子掲示板の管理者等による自主的対応に関する法的責任については、単に違法な情報を放置したとの理由のみで、刑事上、民事上の責任を問われることは通常は考えられず、また、電子掲示板の管理者等が、違法・有害な情報について送信防止措置を行った場合についても、通常は刑事上、民事上の責任を負うことは考えられない、との整理がなされた。
研究会では、このような法的な整理を踏まえて議論をとりまとめ、電子掲示板の管理者等による違法・有害情報への対応に関して、電子掲示板の管理者等による情報の違法性・有害性の判断を支援する方策や、フィルタリングの利用促進に向けた取組等についての提言を行うものである。
さらに整理するのは後日にする。面倒臭すぎるから。