カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

再チャレンジ事業とは「早寝早起き」運動@安倍晋三vs「サラ金金利は違法」@枝野幸男

他の人のブログからまず引用。

http://d.hatena.ne.jp/debyu-bo/20061006/1160112646
仕事をしながら国会中継をつけっぱなしにしておりましたら、アベソーリのこんな答弁が聞こえてきました。

「私も再チャレンジ支援事業に関連してホームレスの生活を経験した何人かの人に話を聞きましたが、ホームレスの生活から普通の生活に戻る際になにが一番大変だったかとたずねると、朝起きて、といった規則正しい生活をおくること、そういう規律の面が困難だということで……こういったことを支援していきたいと…」(※ちゃんと聞いていたわけではないので正確ではありません。おおむねこんな感じだったと思います)

話を聞いたのがホームレス生活を「過去に」経験した人だけらしい、とか、一番大変だったこととしてまず「規則正しい生活」なんて話がでてきたこと、とか、いろいろびっくりしたんだけど、何よりこんなところでまで「規律」なんちゅう言葉が出たことに驚いた。
再チャレンジ支援事業とは実は「早寝早起き朝ごはん」運動なんだったりして。

議事録に当れるかな、と思って、国会会議録検索システムを使って調べてみたら、 165国会 - 衆 - 予算委員会 - 3号 平成18年10月06日 での安倍晋三発言だった。

http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc_text.cgi?SESSION=19817&SAVED_RID=2&SRV_ID=9&DOC_ID=4066&MODE=1&DMY=20152&FRAME=3&PPOS=197#JUMP1
安倍内閣総理大臣 私も、再チャレンジの触れ合いトークにおきまして、大阪におきまして何人かのホームレス経験者の方々とお話をいたしました。
 彼らが一度ホームレスを経験したときに、また普通の生活に戻る際に何が一番困難だったかといえば、規則正しい生活と、いわば自分で何かを稼いでそれを使う、そういう規律が自分のリズムの中に戻ることが大変困難であったという話を聞いたことがあります。その中のある方は、それはビッグイシューではなかったのでありますが、やはり支援事業の一環として、空き缶等々を回収してそれを買ってもらうということから、自分で稼ぐ、そして、その達成感を認識することによってまた普通の常用の雇用に移っていった、こういう話を聞きました。
 つまり、そういう方々に対して、ただ給付を出すということではなくて、いかに普通の生活に、また納税者に戻ってもらえるかということが私は重要ではないかと思います。

本当に言っている。一部だけ切り取るのは公正ではないので、この前後のやり取りを以下に載せる。これは枝野幸男との質疑応答、例の 
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20061007#1160150136■[政治]国会中継実況の記録/サラ金金利「グレーゾーン」と障害者自立支援法枝野幸男vs安倍晋三
で実況された質疑の中の一場面である。以下、議事録を適宜省略して要約しようかと思ったけど、私の力があっけなく尽きてしまったので、とりあえずほぼ原文のまま載せる。

165-衆-予算委員会-3号 平成18年10月06日

○枝野委員 民主党の枝野でございます。まず、貸金業法改正についてお尋ねをしたいと思います。〔略〕総理としては、この貸金業法改正についてどういう御認識を持っておられるのか、まずお話しください。
安倍内閣総理大臣 いわゆる多重債務によって、多重債務を背負った人たちが二度と立ち上がれない状況になっているというのも事実であります。そうした状況を何とかこれは改善していかなければいけないという中にありまして、利用者の債務負担を軽減し、また、利用者利便にも配慮しながら、新たな多重債務者を発生させない枠組みを一日も早く構築していく必要があると認識をいたしております。政府としても、与党において基本的に了承されました改革案を踏まえて法案策定作業を進めています。この多重債務問題について、政府を挙げて取り組んでまいります。
○枝野委員 〔略〕多重債務問題というのは深刻な問題でありまして、借金を苦にして自殺をされるという方、あるいは家庭が崩壊をされている方、そういう声というのはいろいろなところでたくさん出ています。借金というと、例えばギャンブルなどで自己責任ではないかという話もありますが、〔略〕あれだけテレビのコマーシャルなどで気軽に借りられるような印象を振りまいて、気軽に返せますというような印象の中で、実態は余り知らないまま借金をしてみたら、いつの間にか雪だるま式に何倍にもふえてしまっていて、どうにもならなくなっているという方が世の中たくさんおられます。
 そこで、どこが問題なのかということを、特にテレビをごらんなどの皆さんに御説明をしたいと思います。
 〔略〕日本には、利息制限法という、これは大変立派な法律があります。この赤線以下の利息でなければお金を貸してはいけないということになっております。十万円以下の少額の場合は年二〇%、十万円から百万円のところは年一八%、百万円以上の場合でも年一五%、これ以上の金利でお金を貸してはいけないということが利息制限法で決まっています。
 ところが、貸金業者を規制している貸金業法では、二九・二%以上の利息を取らなければペナルティーがない、罰則を受けないというのが現行の法律であります。その結果、多くの貸金業者は、利息制限法に違反をして、二〇%を大幅に超える金利を取ってきている。少なくとも、そうした金利での約定をしている、契約をしているという実態であります。
 幸い、近くに法律家がいて、多重債務で困っているということで相談に行って裁判の場に訴えますと、二〇%とか一八%とか一五%とかという利息制限法を超えた利息は無効であるから払わなくていい、あるいは、既に払った部分のところを、それは利息じゃなくて元本を返済した扱いにしていいという最高裁判例も出ておりまして、救済をされておりますが、それは、たまたま近くに弁護士とか司法書士とかがいた場合に救済をされているだけでありまして、現に今の時点でも、法律に違反をしている、利息制限法に違反をしている金利を支払っておられる方が世の中にたくさんおられます。
 もし、テレビ、ラジオをお聞き、ごらんの皆さんの中でそういう方がいらっしゃったら、払う必要がないということをぜひ知っていただいて、近くの司法書士さんなどに駆け込んでいただければ、支払いの義務がなくなります。
 それで、これはちゃんとそろえないとだめですね、利息制限法で二〇%あるいは一八%という金利に決まっているんだから、それ以上取っているのはおかしいんだから、だから、それ以上取っちゃいけないことにちゃんとしましょうということで議論が進んでいるんだと思っておりましたら、与党でまとまったと称するもの、金融庁にも説明をいただきましたが、実は違っているんですね。
 このグラフにも書きましたけれども、従来、十万円から五十万円の間の借金の場合は金利が一八%に抑えられていたものが、今度の法改正がもし認められると、年二〇%に二%金利が上がる。それから百万円から五百万円の間の方は、一五%から一八%に三%金利が上がる。
 ちなみに言うと、いわゆるサラ金と言われているところで個人の方が借りている部分が圧倒的に多いのは、この十万円から五十万円の範囲です。商工ローンと言われる、事業者の方がこうした貸金業者から借りている部分で圧倒的に多いのが、百万円から五百万円の範囲です。
 つまり、金利を引き下げてくれる法改正をするのかなと思ったら、金利を引き上げる法改正をしようとされている。こういう認識でよろしいですね。
○山本国務大臣 サラ金のためでも商工ローンのためでもなく、多重債務をこの社会から一掃するために改正するという法案づくりを今やっております。
 特に、枝野先生、貸金業法でなくて出資法というのは、御承知のとおり、刑法体系の中での罰則規定でございまして、二九・二%、それが上限金利でございます。利息制限法は民法体系でございまして、これを超える部分は無効という措置になりまして、不当利得返還請求、こういうことでございまして、民法体系、刑法体系の中の間の部分がグレーゾーンと言われるわけでございます。そこをできるだけ小さくすることによって、多重債務者が二度と多重債務にならないような措置、すなわち、ここに明確な基準を設けることというわけでございまして、今の貸金業者からしますと二九・二%から二〇%に下げられるという意味でございまして、その激変につきましてはかなり厳しいものがございます。
 その意味におきましては、恐らく、ここに書かれておりますプラス二%、プラス三%というものは、これは利息制限法の刻みを変えた場合の物価変動におけるこの考え方についての御異論であろうというように思いますので、この貸金業法の改正及び出資法の改正、利息制限法の改正、三法の改正におきましては、決して業者のためにやっているものではなくて、あくまで多重債務者の一掃ということに徹底して頑張っているところでございます。
○枝野委員 少なくとも、私の今の質問の中に業者のためにやっているだなんて質問しておりませんが、よほど後ろめたいようで、御自身から自白をされているようであります。
 いいですか、少なくとも、現行法が全く変わらなくても、法をしっかりと知り、あるいは法を知っている人が身近にいれば、どんな契約を結ぼうが、この赤線の利息しか払わなくていいんです、今現在でも。しかも、最近そうした最高裁判例も出ました。今回の法改正などをめぐって世の中にも周知されてきました。弁護士会司法書士会の皆さん、一生懸命頑張っておられます。相当部分の人たちが、ああそうだ、払わなくていいんだということで、現行でほうっておいても赤線になる方はたくさんいるんですよね。したがって、この利息制限法の金利を変えるということは、少なくともこの部分については金利が上がる。今、金利が上がる必然性があるんでしょうか。
 例えば、利息制限法の歴史を振り返ってみました。最初は太政官布告という形で明治から出ていますが、例えば昭和二十九年に利息制限法を改正したときに、この当時、いわゆる調達金利、銀行貸出約定平均金利といいますが、銀行がお金を貸し出すときの平均の金利は九・〇八%でありました。平成十八年六月現在、同じ金利は一・六三三%であります。非常に低金利の時代であります。
 さらに言うと、最近は、デフレ脱却したのかしなかったのかということで、与党の中もいろいろな御意見や、政府の中もあるようでございますが、デフレの時代で、基本的に物価が大きく変動しておりません。
 したがって、実質的に利息制限法の金利を引き上げなければならないというような社会的な背景は全くないというふうに思いませんか、総理。総理、認識の問題です。認識としてありませんか。
○山本国務大臣 明治十年にこの法律は出発しておりますが、そのときにおきましては、ゼロ円から百円までが二〇%の上限金利でございました。それが改正されたのが大正八年でございますが、それまでにおきましては、銀行貸出金利が八・〇六七%、あるいは公定歩合が八・〇三%とか、貸出金利の上下もございました。しかし、ここで一五%と低い金利にし、また、昭和二十九年には二〇%上限金利をつくったというような形で、それぞれの時代時代に応じて、物価の推移やあるいは経済の動向に合わせて利息制限法の上限金利は定められておるものでございまして、総合勘案した判断でございます。
○枝野委員 ですから、私は総理の認識を聞いているんです。今の全体としての低金利、そしてデフレ状況で、少なくとも大きなインフレになっていないという状況で金利を上げなきゃならないというような社会情勢であると思われますか。一般的な認識ですよ、総理。
○山本国務大臣 利息制限法の上限金利の変動につきましては、貸出金利の動向もすべて勘案した上で今日まで考えられてきておりまして、今、昭和二十九年における物価変動は五倍から六倍、そして、国民所得におきましては三十七倍という変動がございます。そういったことを勘案しての改正の作業だろうというように思っております。
安倍内閣総理大臣 要は、私どもの目的は、多重債務者を何とかこれをなくしていく、この問題を解決していくことだ、こう考えております。
 その中で、多重債務者をなくしていくためには何をすべきがいいかということで、利用者の利便ということも考えなければならないわけでありまして、他方また、貸す側も対応できるという観点もその利便性のためには必要かもしれない。そういうことも総合的に判断をしてこの法案を最終的に決めていかなければいけないとは思います。
○枝野委員 借りる方の利便と言いますが、返すことのできないことがわかっている人に貸す利便というのはむしろ害なので、返す可能性のない人に貸してはいけないんだと僕は思うんですよね。その上で、今、例えば二%や三%上がりますという話は小さな話のように見えるかもしれませんが、一般的に、百万円をいわゆるサラ金で借りました、毎月毎月二万五千円ずつ返していきます、例えばこういう例を考えた場合、現状の一五%の金利であれば、支払いの総額は百三十九万五千十四円になると弁護士会が計算をしてくれました。一八%、三%金利が上がると、これが百五十三万八千六百九十五円、つまり、十二万三千九十四円、支払い返済総額は三三%も大きくなるんですね。二%とか三%という話ではないんですよ。
 ですからこれは、明らかに今の低金利、インフレにならないという状況のときに、違法な金利を取ってはいけませんよというようなことをするに当たって、どさくさに紛れて金利を上げる、サラ金など、商工ローンなどの金利を上げる、こういう法改正であると言わざるを得ない。少なくとも、この部分のところは撤回をしていただかなければいけないと思っておりますが、もう一つ、決定的にこの法律には問題があるというふうに思っております。
 何が問題かといいますと、改正法の経過措置の期限は、改正法公布後、おおむね五年を目途とする、公布から上限金利引き下げまでの体制準備期間はおおむね三年を目途、上限金利引き下げ後、少額短期貸し付けを実施する経過期間は二年と。少なくとも三年は何もやらぬ、そしてその先二年も特例を残す。事実関係だけで結構です、理由は聞きません。事実関係は間違いないですね、金融大臣。
○山本国務大臣 多重債務者を一掃するという物の考え方の中で、問題性は、枝野委員がおっしゃるとおり、返済能力を度外視した貸し付けある実態、これを一掃しようじゃないか。お金がないことは心細いんです。お金を貸してもらえないことは惨めなんです。そこの精神的な弱さをついた、マイナス心理状況をついた契約というのは任意性がない。そこを我々は一掃したい。さらに、やみ金融は犯罪であり、そこを我々は一掃したいというようなことでございますので……(発言する者あり)
○金子委員長 静粛に願います。
○山本国務大臣 私どもとしましては、この経過措置というのは、それに合わせた十分な、万全な措置を考えてのことでございまして、私ども、その経過措置があることはお認めするところでございます。
○枝野委員 事実関係をお尋ねしているので、事実関係は今の御答弁だとお認めになったんだというふうに思います。
 現状でも、この赤い線を超える金利を契約していても、金を貸している側はその金利を取ってはいけないんです。そして、出るところに出れば払わなくていいということになるんです。支払い義務がないんです。支払い義務のない契約をこれから三年間も少なくとも続けさせるんです。支払い義務のない支払いを、世の中のことを、新聞とかテレビをごらんになっていればおわかりになるかもしれませんけれども、気づいていない人はこれからも払い続けるんです、この三年間というのは。
 〔略〕現行法でも、利息制限法ではこの赤い線を超えてはいけない、違法行為なんですね。ただし、先ほど失礼しました、貸金業法と言いましたが、出資法で刑罰を受けるのは二九・二だから、刑罰は受けないけれども、違法であるのは間違いないわけです。違法であることをやめさせるために三年間準備期間をください、今は泥棒やっているんだけれども、正業に戻るために三年間準備させてください、その間は泥棒させてください、こんな理屈が通るわけないじゃないですか。
○山本国務大臣 多重債務の問題性を考えましたときには、貸す方、借りる方、そして金利政策、三つの万全の措置が要ろうというように思います。その意味におきましては、まず名寄せをさせてもらう。名寄せをさせていただくとどうなるかというと、全体の年収の三分の一、それまでしかこれは貸すことができない、そういうような情報をしっかり持つということを考えていきますと、大体、そのシステムをつくるのに……(発言する者あり)
○金子委員長 場外、お静かに願います。
○山本国務大臣 専用の回線をつくって、コンピューターを導入して、各貸金業者にネットを張ってというようなことも必要でございます。単に金利操作だけでこれが片づくわけではございませんので、その意味におきましては、我々は万全を期したい、この際、社会から一掃したいという考え方のもとにやっていることを御理解いただきたいと思います。
○枝野委員 いいですか、現状で二十何%だなんという例えば大手五社の、固有名詞挙げましょうか、アコム武富士アイフル、プロミス、三洋信販、大手五社のトータルによると、二五%以上で貸しているのが全体の七一・五%なんです。しかし、利息制限法違反なんです、民事ですが。刑罰がないけれども、違法な行為をやっているんです。違法な行為をこれから三年間も、彼らが体制を整備するために待たせてください、これは泥棒に追い銭ではないですかと私は申し上げているんですが、さらに申し上げますと、これは総理にお尋ねしたいんです、いいですか。
 総理は、美しい国美しい国、結構なことです。美しい国であるならば、例えば、今現にサラ金などからお金を借りている皆さんがいらっしゃいます。そうした中で、たまたまいろいろな情報量に乏しい、ある意味では一番厳しい人たちだと思います。そういう人たちは、これからもこの赤い線を超えた高い金利を払い続けるんです。たまたま近くに弁護士とか司法書士とかがいたりして、たまたま近くに教えてくれる人がいたら、この赤い線以下の金利で済むんです。同じように借金をしている、もしかすると、近くに弁護士がいて赤い線以下になる人は、ギャンブルのための借金かもしれない。本当に生活が苦しくて金を借りた人が、近くに情報がなかったがために、赤い線を超えた高い金利を払い続ける。こういう人が出てくるんです。このアンフェアはどう考えるんですか。こんな不公正な社会はないですよね。総理、どうですか。
安倍内閣総理大臣 多重債務者問題については、この問題を解決することは、私の内閣においても大きなこれは責任であり使命である、こう考えております。先ほど山本大臣から答弁をいたしましたように、さまざまな観点を踏まえて、与党において、一定の準備期間や経過措置としての少額短期貸付制度を導入するということを決定したもの、このように思います。
○枝野委員 これは現に、その多重債務のためにみずから命を絶つ、これはきょうは追及しませんけれども、生命保険をサラ金の側が掛けさせて、そして、自殺でもしてくれたらそこで金が入ってくるわなと受けとめられても仕方がない仕組みの中で、命を担保にして貸しているみたいな話もたくさん報道されています。まさに国民一人一人の、特に厳しい状況にある人たちの命にかかわる問題です。これは、三年間は自殺者が出ても仕方がないという政治は、私は政治のあり方として間違っていると思う。一日も早くこれを防ぐということのためにできることをどうするのかと考えるのが私は政治だと思う。
 簡単な話で、現行法でも利息制限法を超えたものは違法なんですから、利息制限法を超えたものは、今すぐにでも、本当は貸していちゃいけないはずなんですから、今、サラ金業者は、刑罰がないんだから違法だけれどもやってもいいやといってやってきている話ですから、あしたからやめさせたとしても全然問題はない話である。あしたからでもやめさせるべき法案を我々としては今準備をしておりますので、対案としてお示しをしたい、提出をしたいと思います。ぜひ、国民の皆さん、どちらが正しいのか。お金を借りていらっしゃらない方にとってもこれは大事な話なんです。なぜかというと、多重債務で返せない人がたくさんいる、自己破産をする人がたくさんいる、その分は貸し倒れになるんです。その分の金利を、ちゃんと返している人たちが支払っているんです。金利というのはそういう世界です。つまり、多重債務で自己破産する人がたくさんいるような貸し方をしているということは、ちゃんとまじめに払っている人は、今度は逆にその人の分までたくさん金利を払わされているという問題なのであって、皆さんにかかわる問題だということをぜひ御理解いただければというふうに思います。
 次に、さらに厳しい皆さんのお話をさせていただきたいと思います。障害者自立支援法の話をしたいと思うんですが、その前に、総理、ビッグイシュー、私一つサンプルを持ってきていますが、御存じでしょうか、こういう雑誌を。
安倍内閣総理大臣 いわゆるホームレスと言われる人たちのみが売ることができる雑誌ではないかと思います。たまたま私も、数寄屋橋で演説をしたときに、それを売っている人から話しかけられたことがございます。
○枝野委員 これは、報道、あるいは私にこれを教えてくださった方によると、九〇年代初めにロンドンで始まった運動のようでございまして、ですから、この日本版の表紙も、ベッカムですかね、こういう著名人が記事に載っておりまして、ボランタリーに、この日本版では、市民パトロンという言い方でいろいろな方が参加をされておられます。これを、日本の場合、二百円で駅前などでホームレスの皆さんに売っていただく。ホームレスの皆さんに売っていただくと、二百円で売ると、うち百十円が販売員の方の手元に残る。しかし、この雑誌、例えばベッカムの本来の取材の場合の一般的な相場を考えれば、それだけ考えても大赤字だと思いますね、経済的コストを考えたら。だけれども、そういったことを考えずに、とにかくホームレスの皆さんが自分で労働して、そのことによって収入を得た、そのお金で、さあ次どうしようかということを考えていただく。まさに自立というのはこういうことだ。経済的なコストを考えたら多分赤字なんだろうと思いますが、それをボランタリーの皆さんが支えている。
 私は、自立というのは、自分の力で稼いだんだという自己満足と、そのことによって、その手元に残ったお金で、さあ自分でどうしようか、これが自立だと思うんですけれども、どうでしょう、総理、こういった考え方は大変すばらしいと思うんですが。
安倍内閣総理大臣 私も、再チャレンジの触れ合いトークにおきまして、大阪におきまして何人かのホームレス経験者の方々とお話をいたしました。
 彼らが一度ホームレスを経験したときに、また普通の生活に戻る際に何が一番困難だったかといえば、規則正しい生活と、いわば自分で何かを稼いでそれを使う、そういう規律が自分のリズムの中に戻ることが大変困難であったという話を聞いたことがあります。その中のある方は、それはビッグイシューではなかったのでありますが、やはり支援事業の一環として、空き缶等々を回収してそれを買ってもらうということから、自分で稼ぐ、そして、その達成感を認識することによってまた普通の常用の雇用に移っていった、こういう話を聞きました。
 つまり、そういう方々に対して、ただ給付を出すということではなくて、いかに普通の生活に、また納税者に戻ってもらえるかということが私は重要ではないかと思います。
○枝野委員 障害者自立支援法という法律が、昨年、我々の猛烈な反対を押し切って成立をしてしまいました。四月から一部施行で、この十月から本施行をされております。いろいろなところの報道で悲鳴の声が聞こえてきます。もちろん、私のところを含めて、我々の仲間のところにはたくさん障害者の皆さんから悲鳴が届いております。
 例えば、七月三日にNHKが放送した「クローズアップ現代」、幾つかの例が出ておりますが、沖縄県浦添市の男性、右半身麻痺の中、印刷製本などの授産施設で作業し、法改正前は、一生懸命右半身麻痺の中で働いて毎月四万六千円工賃を受け取り、その中から応能負担による利用料三万四千円を支払っておりました。今回、応益負担による利用料一割負担ということになりまして、工賃は基本的には変わらない中で、毎月六万二千円の負担が求められることになったということであります。四万六千円を稼ぐために六万二千円を支払わなければならないということで、とてもそこで働くことができないという状況になっておられます。既にこの作業所、百三十人の施設で十人が退所をし、引きこもり状態になっていると言われております。
 同じく、NHKの「福祉ネットワーク」、七月四日ですと、都内の視覚障害者、三十五歳の方、改正前は、毎月頑張って工賃四万二千円、障害者年金八万三千円でぎりぎりの生活を行っておりましたが、これまでその作業所の利用料がゼロだったところが、利用料と昼食代を合わせて一万七千五百円の負担をしなければならなくなったというような事例も出ております。
 実は、この二つの例、工賃四万円からもらえているこうした障害者の授産施設は非常に恵まれている方でございまして、私の地元の大宮などでも伺うと、一人一万円稼げるところは大変恵まれている方で、だけれども、月数千円のお金を障害者の方がそれぞれのハンディキャップを抱えながら自分の努力で稼いでいるんだ、そういう実感を持ちながら頑張っているにもかかわらず、そういったところに通うための利用料が、そうして手に入る工賃を大きく上回る状況にこの四月からなり、この十月から本格スタートをするという状況になっておられます。現実に、多くの作業所などから退所せざるを得なくなった方が出ているということになっています。
 これは、障害者自立支援法で、今までは、応能負担といって、障害者の皆さんの自己負担はそれぞれの収入、支払う能力に応じて負担をしてくださいという制度であったものを、応益負担、つまり、受けるサービスの量に応じて支払ってくださいという制度に変えたわけです、法改正で。この結果として、実は収入がない、収入が少ない、にもかかわらずたくさんの負担を余儀なくされて、今までの生活でさえ障害者の多くの方はぎりぎりでございましたから、これ以上負担がふえるのではとてもやっていけないという方がふえております。こうした現実についてまず総理が認識をされているのかどうか、お尋ねしたい。
安倍内閣総理大臣 いわゆる授産施設等で仕事をしている障害者の方々の工賃が安いということも、これは現実として私も承知をしております。その中で、この工賃倍増計画を我々政府としても支援をしていきたい、また、就労支援もしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○枝野委員 これから本当に倍増をいつかしていただきたいと思いますし、倍増されるなら大変いいことだと思いますが、例えば、先ほどのNHKで報道された例は大変恵まれた方の例です、月四万円から稼いでおられるというのは。私の地元などを見ても、数千円、七千円とか六千円とかというところがほとんどでございます。倍増しても一万二千円です。こうした作業所の利用料、一般的には二万円から取られておりまして、つまり、働きに行ってむしろお金を負担する。働きに行って、自分の力で稼いだんだというその実感を得ていただいてということとは全くあべこべの状況になっている。こういう人が今現に生じているわけですね。この生じている人たちに対して総理は、日本の行政権の責任者としてどういうメッセージをお出しになるんでしょうか。
 総理のメッセージです。制度の中身を聞いていません。現に退所をされている方に対して総理のメッセージ、どういうメッセージを発信されるのかということを聞いていて、制度の中身、頭でっかちの理屈をやるつもりはありません。総理のメッセージをお聞かせください。(発言する者あり)
○金子委員長 柳澤厚生大臣の話を聞いてから総理のメッセージをもらいます。
○柳澤国務大臣 枝野先生は、応能でやってきたものを応益にしたというのがこの障害者自立支援法のあり方だ、こういうお話でありましたけれども、今までの障害者支援というものがそれでは本当に満足すべき状態だったと思っていらっしゃるんでしょうか。我々はそうは思っていない。そこで私どもは、どちらかというと、施設に入ったらもう入りっ放し、実際はそういう状況であったということであります。(発言する者あり)
○金子委員長 委員外発言は静かにしてください。
○柳澤国務大臣 それを我々は一歩一歩今改善しているわけでありまして、それを、措置費じゃなくて支援措置にする、それから、この支援措置を今度応益負担にして、むしろそういう施設の利用者がはっきり自分たちが利用者であるという意識を持って、契約の相手方に対していろいろ物を言う、こういうようなシステムにして、施設のサービスそのものを向上していこう、障害者の実態に合ったサービスをしてもらおう、こういうようなことで今度の改正をいたしたわけであります。そして、応能負担を応益負担に変えたと言っていらっしゃいますけれども、これについては、非常にきめの細かい、所得に応じた、いわば上限の利用料を設定しておりまして、そういったことに十分配慮している、我々はそのように確信をいたしております。したがいまして、この応益負担を導入することによって施設の利用をやめられた方、これは我々は神経質なまでに今追いかけているんです。追いかけていますけれども、〇・五%以下というのが現状だということを我々は認識しておりまして、その厚生省の情報は総理にもお届けしてある、こういうことを今お答え申し上げる次第です。
安倍内閣総理大臣 今、詳細については厚労大臣からお答えをしたとおりであります。
 この障害者自立支援法については、まさに、障害者の方々が自立していく、それを支援していく、障害者の方々も一定の負担を利用料として払い、負担をし、そしてまた、それと同時に自立をしていくというそれを支援していく形、今までのように、ただ単に障害者は障害者として扱うということではなくて、しっかりと社会にも参加をしていただいて、経済的にも自立をしていただくようなそういう思いでこの法律をつくったわけであります。その中で、ただいま大臣が答弁をいたしましたように、例えば月額の上限を設けたり、あるいは、収入の低い方については光熱水費に対する配慮等々も行っているわけであります。ただ、先ほど申し上げましたように、労賃が低い水準にある、それと利用料の関係についてはこれから我々も努力をしてまいりたい、このように思っています。
○枝野委員 その負担上限なんですが、例えば年収八十万円以下の場合、障害基礎年金二級に相当する方がこういうぐらいではないかと言われていますが、一カ月の負担上限が一万五千円なんですよ。一カ月の負担一万五千円ということは、十二カ月になるとどうなりますか。十八万円ですね。八十万円以下の所得の人が年間十八万円からの負担をする、それが適正な負担だというふうに皆さん思われますでしょうか。障害者の方ですよ。ほかに収入があるわけではない。それから、作業所などに通われるほかに、例えば自宅についても、いろいろな、普通の健常者の皆さんとは違った配慮が生活の上でたくさん必要になります。
 そうした方が、八十万からこうした自己負担金十八万円を引いて、残り六十二万円で一年間暮らせ、月五万円で暮らせということを小泉内閣安倍内閣はおっしゃっておられる。これが低所得者に対する配慮と言えるのかどうかと私は思っています。
 総理ばっかり聞くなと委員長がおっしゃっていますので大臣にお尋ねしますが、今現場の声を調べていると言いましたが、我が党の仲間が実態調査をしろと言ったら、お断りに厚生労働省はずっとしてきたと聞いています。
 確認をいたしたいと思います。幾つかこれは確認していただきたいと思います。
 実際にこの負担に耐えられず退所をされている方がどれぐらいの数おられるのか。それから逆に、事業所などを運営されている方、特に小規模でボランタリーにやっているところは、工賃も下げられていたりして大変経営が困難になっている。そういうところの経営実態がどうなっているのか。それから、何とか助かっているところがあるんです。助かっているところがあるというのは、これではだめだということで、一番現場の声を聞いている地方自治体が、その悲鳴に応じて、厳しい財政状況の中で支援をしている自治体が出てきています。ところが、支援をしているところとしていないところの差が物すごくでかくなっています。ですから、この各市町村による支援の実態、この三つを早急に調査していただきたいと思いますが、いつまでに調査して発表していただけるのか、お聞かせをください。
○柳澤国務大臣 現在、今枝野議員が御指摘になられたように、この法律は、四月に施行され十月に完全施行ということの中で推進をされているわけです。
 そういう中で、各市町村等の、あるいは都道府県等の事務もかなり錯綜しているということが現実にありますので、そういうときに本省がいろいろ新しいロードをかけて調査に乗り出すというのは、これは法律の円滑な施行に逆行することになりかねない、このように考えまして、私どもとしては、そういうものとうまく調和がとれるような情報収集に努めている、こういうのが実態でございます。(発言する者あり)
○金子委員長 お静かに願います。
○柳澤国務大臣 したがいまして、現在、利用者負担を理由に利用を中止したものにつきましても、十三都道府県を情報収集しておりまして、もうちょっと細かい数字も実は持っていますけれども、私どもとしては、〇・五%を下回るという程度である、そういう情報を得ているということです。
 今後の実態調査については、私どもとしては、今議員の指摘したものの中で、地方自治体の措置についてどういう状況にあるかということについて、私どもが調査をするのが本当に適当かどうかという思いはありますが、他の問題については、私どもも、今言った事務の円滑な運営というものに支障のない限り、できるだけ早期に情報収集したい、このように考えております。
○枝野委員 障害者の皆さん、生活なんです。そして、まさに障害者の皆さんあるいはその方を家族で抱えている皆さんというのは、本当にぎりぎりの生活、もちろん、たまたま親が大金持ちで、資産があって遊んで暮らせる、そういう御家庭の障害者の方も一部はいるかもしれませんが、ほとんど大部分の方は、お子さんが例えば障害児であられると、親御さんの収入自体も実はなかなか稼げないという中で、全体苦しい中にあるんです。
 例えば、一カ月、二カ月、三カ月、半年という状況が続けば続くほど、先ほどのサラ金の話ではありませんけれども、現に、みずから命を絶つというのは、なかなかその因果関係を正確には証明することはできませんが、障害者の方の家族が将来を悲観して命を絶ったなどという事件も、実はもう既に報道をされています。
 まさに、行政の事務とかなんとかという話じゃなくて、本当に自信を持っておられるならば堂々と調査をされるべきであると思いますし、それから、まさに障害者自立支援法の基本的な考え方は、もともと地域間の格差をなくそうという話だったんじゃないですか。それなのに、実態としては、これは新聞報道などの方が先行して調査して、やっているところとやっていないところの差が物すごくでかくなっている話はもう報道されているんですよ。これはまさに、障害者自立支援法のいい部分についてすらだめにしているという話なのであって、本末転倒なわけですね。ですから、当然のことながら、調査ぐらいはしっかりとお約束をしていただけるのかなと思ったのに、やはりこういうところには残念ながら冷たいんだなと言わざるを得ません。
 私はあえて申し上げます。総理、これは考え方の問題です。障害者福祉の世界に応益負担というのは、私はよほどの所得保障がない限り間違っていると思います。基本的な行政サービス、例えば、公共料金で鉄道の料金など、長い距離を乗るほどたくさんサービスを受けるんだから高い料金を払ってください、普通席よりもグリーン席はいいサービスなんだからたくさんお金を払ってください、こういったように、普通は応益負担、受けるサービス、利益に応じてたくさん払ってくださいというのは一般論としては間違っていないだろうと思います。しかし、障害者福祉の世界では明らかに間違いです。
 なぜならば、障害が重い人ほどより多くのサービスを受けなければ生きていけない人たちです。そして、より多くのサービスを受けなければ生きていけない障害の重い人ほど、自分の力で収入を得る可能性は閉ざされているんです。その人たちにより高い負担をしろというのは、明らかに本末転倒、あべこべだ、物の考え方が間違っていると思いますが、これは制度論ではありません、物の考え方です。総理、そう思いませんか。
安倍内閣総理大臣 先に私がお答えいたしまして、詳しくは大臣からお答えをいたします。この障害者自立支援法を作成するに当たりまして、私どもも、障害者団体の方々あるいは障害者の方々とずっと対話を重ねてまいりました。その中で、障害者の方々のやはり自立ということをまず中心の柱に据え、その中で自立できる仕組みをつくっていこう、また、いわば今までの中において対象とならなかった方々もちゃんと全部その輪の中に入れるようなそういう仕組みをつくったのであります。
 そこで、応能、応益という問題であります。確かに、サービスを多く受ける方は障害の重い方々であるのも事実でございます。しかし、例えば介護保険も、いわば介護度は高い方々の方が当然厳しい状況であるわけでありますが、当然利用料も一割負担の中では高くなる、こういう仕組みになっているわけであります。ですから、その中で応益負担を負うという中においては、先ほど申し上げましたように、月額の上限を設ける等いろいろなきめ細かな配慮を行った上で、障害者の自立という観点からこの応益負担という仕組みを取り入れたわけであります。
○枝野委員 今、介護保険のお話もされました。ある意味ではむしろそうなんだと思います。介護保険の世界も、つまり障害を負っておられるという場合については、障害が重いほどサービスがたくさん必要で、そういう人ほどみずからの力で収入を得る可能性は全体としては低い。これは間違いないわけであります。ですから、実は介護保険の世界についても、果たして単純な応益負担でいいのかどうか。
 ただ、介護保険の場合について、高齢者に限定をすれば、むしろ、年金という所得保障の部分のところをしっかりとやればまだ話はわかるという部分があります。(発言する者あり)しかし、障害者年金の水準で本当に皆さん食べていけるとお思いでしょうか、今、後ろからやじがありましたけれども。
 障害者年金一級でも、月八万円とか六万円とかそういうレベルの年金でございます。親が稼いでくれて、障害児である皆さんのところは、まだそれでも親の収入でという救いはあるかもしれませんが、成人障害者で、そして親も亡くなられた後、特に親御さんが今回の法改正で泣いておられるんです。自分が生きている間はまだいい、自分が命をなくしたとき、子供が残ったとき、とてもこんな制度になっていく中では子供を残して死ねない、こういう思いをどうにかするのが政治の仕事じゃないですか、安倍さん。こういう一人一人のところに目を向けるのが美しい国ではないですか。どうですか。
安倍内閣総理大臣 私どもも、障害者の方々また団体の方々と話をしたときに、いろいろな悩みを伺いました。それは私たちも同じです。その同じ思いの中で、しかし、そこで自立を支援していく、つまり、障害者が自立を目指していけることのできる仕組みをつくっていこう、そしてまた、今までこの範囲の外にいた方々もみんなこの仕組みの中に入っていただくようなそういう仕組みをつくったのでありまして、そしてまた、先ほど申し上げましたように、我々はいろいろな月額の上限等々の軽減措置もつくっております。グループホーム、入所施設で暮らす方で、資産が少ないなど負担能力が少ない方については、月額六万六千円までの収入の方は定率負担をゼロとするということにしているわけであります。
 また、新たな食費等……(発言する者あり)済みません、答えておりますから、少し冷静になっていただけますでしょうか。新たに食費等の負担をいただくこととなる入所施設の方については、食費等の負担をしても、少なくとも手元に二万五千円が残るよう、負担を軽減いたしております。また、通所施設や訪問ヘルプサービスを利用して在宅で暮らす方については、社会福祉法人減免により、定率負担の月額負担上限額が半額となるよう、負担を軽減しているわけでございます。
 こうしたきめ細かな対応をしながら、しかし、それと同時に、障害者が自立を目指すという中においてこの法律を整備した、このことは御理解をいただきたいと思います。
○枝野委員 現実の現場の声というものと今の総理の御答弁が一致をしていないということは、特に当事者の皆さん、一番御理解をいただいていると思います。私どもは、障害者自立支援法の全体の枠組み全部だめだと言っているつもりじゃありません。この負担の部分のところが問題だと申し上げています。
 私ども、この国会に、この一割の応益負担を、従来、四月以前の仕組みに戻すという法改正案を提出することを決めました。法制局の手続が済みましたら国会に出したいと思っていますので、ぜひ、たなざらしにすることなく、厚生労働委員会でしっかりと審議をしていただきたい、その中できちっと説明をしていただきたいと思います。
 私どもの計算では、そのことによってふえる財政負担というのは、あえて言いますが、わずか三百億から四百億程度と思っています。ダムを一年当たり一つつくるのをやめれば、それぐらいの金は浮いてきます。どちらの方が大事なのか、どちらの方が優先順位が高いのか、国民の皆さんに御判断をいただきたいというふうに思っております。次に、岡田さんなども……
○金子委員長 ちょっと柳澤厚生大臣に、事実関係の整理がありますので、答弁させてください。
○柳澤国務大臣 別段あれなんですけれども、今までの枝野委員のおっしゃり方は、全部が全部否定されるわけではないということで、私も若干の救いの気持ちを覚えたんですけれども、この法律は、障害者のソサエティーというか、そういうものがやや閉じられた感じが今まであったというのは否めないんです。これをもっと外に出そう、そしてその方法としては、生活の場と就労の場というようなものを引き離そうということ等を今盛り込んでいるわけです。何かこう小さなところへ閉じ込められて、ずっと同じような生活をされていくというようなことを何とか打破したい、それにはどうしたらいいかといえば、もっと障害の区分なんかをきちっと分けて、それにふさわしいサービスが与えられるようにし、そうして……(発言する者あり)いえ、そういうことなんです。そういうことでありまして、今度の法律、よくよく……。それでまた、それでは応能負担にしたらどうなるかというと、利用者の目がもうそれ以上働かなくなるんです。そういうことを枝野委員はどうお考えになるか。これに対しても答えを与えないと、我々は、にわかに皆さんの声に従って旧に復するというわけにはまいらないということであります。
○枝野委員 机の上の金勘定で人間は生きていないと私は思っております。理屈を言えば、例えば応益負担であれば、自分でこのサービスを受けるか受けないかという選択をする。しかし、障害者の皆さんが現に受けている障害者福祉サービスというのは、これはお金がかかるから要らないなとか、これは安いからやろうかなとかという選択ができるような水準なのでしょうか、日本の障害者福祉は。生きていくために、あるいは社会参加するために必要最小限のぎりぎりのところであると私は思っています。
 そうしたところについての負担というのは、やはり基本的には支払い能力に応じてで、それが、例えば障害者の方が、特別、それ以外の方よりもより大きな、あるいはより快適な生活を受けるためのプラスアルファのような部分は応益でもいいのかもしれませんが、生きていくための最低限の部分だというふうに私は思っておりますので、やはりそれは、応益負担、もしするならば、相当な所得保障をしっかりとされるということが前提だ。私も、実は所得保障こそが軸であって、しっかりとした所得保障がされるのであるならば応益負担というのはある意味で正しいことではないかと思いますが、そのための方が恐らく財政負担は大きくかかるのではないでしょうか。
 年金について、先ほど岡田さんも聞いておりましたが、ちょっと違った切り口でお尋ねを申し上げます。数字の話のところの確認だけは厚生労働大臣でも結構ですが、総理の認識、印象をお聞きしたいと思っていますので、机の上の理屈の話をしようとは思いません。実感としてどう考えられるのかということです。
 現状の国民年金保険料は月額一万三千八百六十円となっております。ほぼ同じ金額を給料から天引きされている厚生年金の方の所得というのは、月額報酬というのは、標準報酬月額で十九万円。つまり、給与が十八万五千円から十九万五千円の方が厚生年金の場合、月額一万三千九百九円を給料から天引きされてお支払いになっている、これは、事実関係、間違いございませんね。
○柳澤国務大臣 そのとおりでございます。
○枝野委員 国民年金の保険料を納めておられる方の今や半分が事業主ではない。そして、最近、ワーキングプアという言葉が言われておりますけれども、月十万円いくかいかないかなどという給料でもやむなくそうした働き方をしておられる、こういう方が世の中にどんどんふえておられます。こうした方は当然厚生年金には入れません。国民年金ということになって、一万三千八百六十円を負担しないと、それに対応する将来の年金給付は受けられない。免除をされた場合には、その月の対応する分は将来の給付には対応されませんので、国民年金の免除の場合は。
 十九万円という給料よりもずっと所得の低い人がより高い国民年金の保険料を支払っている、支払い義務がある、こういう実態にあるということは、まず、客観的事実としてお認めになりますね。
○柳澤国務大臣 枝野議員の、同じ年金をもらうのに倍ぐらいの保険料を納めなきゃならない、あるいは、同じ保険料を納めていたら半分の年金しか受けとめられない、こういう事実があるのではないかという御質問でございます。
 計数の真偽について私が今ここで正否を申し述べるだけの材料を持っていませんが、いずれにしてもそういうポイントだと思いますが、これは事業主負担の問題であるということは、枝野議員ももう既に、つとにお気づきのとおりであります。
○枝野委員 理屈はよくわかっておりますので、理屈の話をするつもりはありません。こういう話なんです。つまり、同じ職場、例えば、スーパーのレジを打って同じ仕事をされているお二人の方がいらっしゃる。一人は正社員であって、十九万円の給料を毎月もらっています。この方は、厚生年金で毎月一万三千九百九円お支払いになります。一方で、例えばお隣でレジを打っている、本当は正社員になりたいんだけれども、正社員になれないパートやアルバイトの方、例えば十九万円の半分、九万五千円の月収であったとしてもこの方は、国民年金で一万三千八百六十円、所得は半分なのに払わなければならない、こういう仕組みに現状はなっている。このことは、うなずいておられて、お認めになっておられます。
 では、将来どれぐらいを受け取れるのかということになりますが、国民年金で一生を通じた方、ずっと払い続けた場合で月額六万六千八円というのが現状の国民年金の制度であります。現在価格で厚生年金について毎月毎月給料から一万三千九百九円をお支払いになられていた方が基礎年金と合わせて将来受け取る年金額は、月額十一万九千九十一円。二倍とまではいきませんが、二倍弱の将来受け取る差が生じてまいります。
 給料から支払っている保険料額がほぼ同じである。片方は、収入が半分なのに同じ保険料をお支払いになっている。そして、同じ保険料を支払っているのに、将来受け取る金額は逆に所得の多い正社員の方の方が約倍もらえる。これは、現状、その理屈がいい悪いと言っていません、その理屈はよくわかっていますが、こういう実態、総理、美しいですか。
安倍内閣総理大臣 先ほど大臣からもお触れになったように、いわば保険料については、厚生年金については本人と事業主が払っているわけでありますから、つまり、これを足せばいわば倍になるわけであります。そして、それぞれのこれは制度の設計上そうなっているということではないかと思います。
○枝野委員 質問に答えてください。その理屈はよくわかっているんです。美しいですか。
安倍内閣総理大臣 いわゆるこの厚生年金と国民年金のいわば成り立ちの問題もあると思います。そしてそれと同時に、私が申し上げておりますように、正規と非正規の方々について社会保険の拡大をぜひ実施していきたいと思っております。
○枝野委員 つまり、改める必要はある、そういう認識はお認めになるんですね。現状のままでは、ない方がいいということはお認めになるんですね。
安倍内閣総理大臣 今、負担の、年金の保険料と受給ということからということではなくて、つまり、同一労働であれば同一賃金でなければならない、あるいはまた非正規から正規社員になる道ももちろん開いていくと同時に、非正規雇用の方々に対して社会保険を拡大していくというのが、我々が今進めている再チャレンジの推進策の中にも入っているところであります。
○枝野委員 確かに、こういう差がつくのは、事業主負担がついているかどうかということですね。厚生年金になれば、給料から自分が支払っている分と同額を会社が払ってくれている。だから、それが全体としての保険料になりますから、将来受け取るのが多くなる。これは当然のことだということで、その理屈は理屈としてその限りとしてわかります。
 だから、パートやアルバイトの人も厚生年金と同じ仕組みにしたらいいんですよね。違いますか。パートやアルバイトの人も同じように会社が雇っているんですから、会社がその社会保険料についての半額を負担する、こういう制度にすべきではありませんか。違いますか。
○柳澤国務大臣 これはもう私がちょうちょう言うまでもないことですけれども、要するに、事業主負担をなぜするかといったら、事業主の側にもいろいろな見方があって、その労働者が本当に自分らのチームの一員として同じチームワークを遂行してくれるかどうか、こういうこともあろうかと思います。他方また、今度はアルバイトの側で、例えば、勤務時間は非常に長いけれども期間としては非常に短い、そういう労働の仕方を選択するというようなこともあろうと思います。
 したがいまして、そういったものを総合勘案して、今総理が申されるように、全くほとんど同じように働きながら、片方は正社員で厚生年金、片方は非正常な勤労者でそれは国民年金だというようなことは、これはできるだけ改善をしていかなきゃいけない、その考え方をこれからどうやって具体化していくかという問題だ、こういう認識です。
○枝野委員 幸か不幸か厚生省と労働省が一緒になって、労働政策も柳澤大臣は所管をされておられます。後で時間があれば、経済全体、マクロの話をしたいと思いますが、日本の経済の回復の多くの部分がコストカットです。コストをカットして、労働分配率を下げることによって企業収益を高めています。そのコストカットの手段としてこの間進んできているのは、正規社員を抑制して、できるだけ非典型、例えばパートやアルバイト、あるいは派遣などの形態にどんどん切りかえていく、そのことによって労働コストを下げていこうという努力を企業はしてきました。企業としては当然の努力だろうと思います。
 そして、同じような労働をしていても、正規雇用であれば社会保険料の負担が物すごく大きい、パートやアルバイトにすれば社会保険料の負担をしなくていい、労働コストを切り下げるためにはできるだけ正社員を少なくしてパートやアルバイトに切りかえようというのが、この五、六年間進んできた結果ではないですか。つまり、鶏と卵が私はあべこべなんだと思います。
 もちろん、世の中にはたくさんいろいろな方がいらっしゃって、自分はパートやアルバイトで、縛られずにいろいろな職を転々としたい、そういう方も一部はいらっしゃいます。しかし、今問われているパートやアルバイトの多くの方は、残念ながら正規雇用の道がふさがれていて、パートやアルバイトにやむなくなっている。それを会社側の都合で、この人は長く勤めてくれそうだから、だから社会保険に入れて社会保険料の負担を会社がします、だけれども、この人はすぐ切るから社会保険料の負担はしません。では、いろいろと細切れにして正規雇用を抱えないようにするという方向をどんどん加速するだけではないですか。
 どんな働き方、就業形態にかかわらず、企業として人を雇って、そしてそこに対して人件費を払っているならば、その人件費に対応しての何%かを社会保険料の負担として負担していただく、こういう仕組みにすればいいだけじゃないですか。
○柳澤国務大臣 枝野先生、もうすべてわかっておっしゃっていらっしゃるだろうと思いますけれども、労働者の労働の態度あるいは生産性等々が、単純に時間だけに規定されるというものではない。やはり、日本の労働者がよく言われましたように、マニュアルを与えられなくても、しっかり全体を見て、自分の労働がいかにあるべきかということを自己規定してしっかりやる、そういう全体への参加者、こういうようなメンタリティーを持っていない方々もいらっしゃるんだろうと思うんです。
 ですから、そのあたりのことをこれからどういう切り口でもってそこのところをしっかり峻別できるかというようなこともよく考えて、できるだけ多くの方を、全く同じメンタリティーで同じ仕事、同じ時間を働きながら違った処遇になるということだけは避けなきゃいけない、こういう考え方で我々は取り組んでいこうと考えております。
○枝野委員 メンタリティー、大事ですけれども、それは外部から客観的に評価、判断しようがないんですよね。この人はパートやアルバイトを希望してパート、アルバイトをしているのか、正社員になりたいんだけれども、口がなくて、しようがなくてパート、アルバイトをしているのか。匿名で聞けば、それは本音を話してくれるでしょうけれども、あなたは半年間だけだよ、半年間だけで次は別のところに行くんだよという約束だったら雇ってあげるよと言われたら、雇われる方としては、本当は正規雇用してほしいと思ったって、私は半年限りでいいんですという答え方を表向きはせざるを得ないというのが、雇用の雇い主と雇われる側との関係だと私は思っております。
 まさにこの部分のところが、年金制度をどうするのかということの私は根本的な問題だと思っていまして、私は、そういったことを考えると、別に案が変わっているわけじゃありません、全部一元化すべきだと思いますが、百歩譲って個人事業主は別だとおっしゃるんだとしても、確かにわかります。私も弁護士でありますので、個人事業主です。弁護士のような個人事業主は会社から給料をもらって働いている方とはちょっと違う扱いというのは、それはわからないではないけれども、しかし、現実に国民年金の半分ぐらいの方が、同じように会社で働いて給料をもらっている、そして、むしろ厚生年金に入っていらっしゃる方よりも少ない所得でありながら高い保険料を少なくとも実感としては負担をしているという実感になり、なおかつ将来受け取る年金額は大幅に低い、こういう実態は変える努力はしなきゃいけないんじゃないですか。
 理屈はいいです。いろいろな理屈をつければいいです。私たちは全部一元化してしまえという理屈を言っています。少なくとも改善をすべき努力をしなきゃいけないと思うんですが、総理の思いをお聞かせください。理屈はいいです。
安倍内閣総理大臣 この非正規雇用の方々、いわゆるパートの方々に対して、厚生年金の適用、社会保険の拡大ということにつきましては、私はそれを進めていきたいと思っておりますし、経団連を初め財界の団体の方々にも、この方針については御説明をしているところでございます。
 もちろん、その中で、例えば勤務の実態等ということについて、ある程度の勤続の期間、また、一週間にどれぐらいの仕事をしているかということは、これは基本的に実態としてなければならないのは当然でございますが、そういう要件等々を勘案した上で、拡大について検討をしてまいりたいと思います。
○枝野委員 今の適用を拡大するという話はいい話のように一見聞こえるんですが、私は間違いだと思っています。
 現状は、正規雇用の四分の三以上の勤務があると厚生年金に加入をさせなければいけないという制度になっていますね。ですから、四分の三を下回るような細切れで雇用をしているんですよ。皆さん、いろいろなところの雇用の求人広告を見てください。私も最近あるところで見つけました。週の勤務日数、月の勤務日数など、何日以内ということを意識的に最初から絞っている。この四分の三を超えないように分割して仕事を発注するんですよ。だから、これが例えば正規雇用の二分の一とすれば二分の一以下に細切れにして、ますますいわゆるワーキングプアの問題が拡大をするんですよ。三分の一にすれば三分の一以下に細切れにして、拡大をするんですよ。一律に、どういう雇用形態をしようが、会社として雇って給料を払っているならば、どういう働き方をしようが、細切れにしようが、一人の人でまとめて働いてもらおうが、同じ人件費を払ったら同じ社会保険料負担をするという仕組みにしないと、拡大の適用ではますますワーキングプアをふやすことになる、これが実態である。
 だから我々は一元化を言っているんだということを申し上げておいて、今の話ともつながりますが、一件だけ、経済政策に入る前に、実は、きょうの新聞あるいはニュースでちょっと気になるものがありましたので、法務大臣にお尋ねをしておきたいと思います。
 日本で初めて海外の女性に代理出産をしていただいた御夫妻の出生届が日本では不受理になって、これが裁判になりました。みずからも記者会見されているので名前を隠さなくていいと思いますが、タレントの向井亜紀さんと元プロレスラーの高田延彦さんの御夫妻。これは、東京高裁で、出生届を受理するようにという至極真っ当な決定が出たと私は思っていますが、報道によると、法務省は抗告をするという方向で検討に入ったという報道がなされております。現行法の、法のある意味ではエアポケットだと思います。代理出産ということは現行法は想定をしていなかった。
 ただ、実は私も不妊治療で、私がというより私の妻が大分苦労をいたしまして、幸いことしの七月に、うちは体外受精でありますが、出産ができましたが、それでも生まれなくて、それでもわらにもすがる思いで代理出産という方法をとられたというこのお二人の思いというものは大変重いものだというふうに思っています。
 現場の行政窓口が受理しなかったというところまでは理解できないことはありませんが、東京高等裁判所というそれなりに権威のある司法機関で、これは受理しなさいという決定をしたのでありますから、これは司法の判断に従いますということで法務省として処理をして、あとは立法的に、今後もこういうケースが出てくる可能性はたくさんありますので、どうするのかということを検討する。
 現に今、出生届が出されていない、一種無国籍で宙ぶらりんの状態でお子さんはあられるということでありますので、これは上告すべきではないと思いますが、法務大臣の見解をお願いいたします。
○長勢国務大臣 今委員お話しのとおりの事実関係でございます。抗告期限が十日というふうに伺っております。
 この判決は、議論の中身が、基本的に決定の中身は、アメリカの裁判所で確定をした裁判の効力を我が国において認めるということを中心にした決定というふうに承知をいたしております。従来、実子として認めるかどうかということについての判例、学説のほとんどは、分娩という事実によって発生をするという考え方で来ておりましたので、それとの関係が非常に不明確になっております。
 そういうこともありますので、現在、今委員おっしゃるようなああいうお気持ちの方もおられることもありますし、また、高裁の決定でもございます。一方、これを抗告しないということになった場合に、今後の行政その他の取り扱いについての影響をどういうふうに考えるかという問題もあります。
 そういうことを含めて、今、どうするかを検討中でございます。
○枝野委員 今後の立法政策論、これはできるだけ早く法務委員会の場で議論をされる必要があるかと思います。そういう問題は残ると思います。
 しかし、現に、双子のお子さん、うちも双子なんですが、こちらも双子らしくて、双子のお子さんが出生届が出せない状態で宙ぶらりんでおられる。だれにとってもこれは受理をして問題はない。つまり、机の上の話以外は何の問題もない話だと思います。
 しかも、東京高等裁判所の決定という、司法の一定の権威ある決定がなされているわけでありますから、やはりこれは、こうした場合の当事者の福祉というのを、別にこの件が特にではありません、一般的にこういった場合については、当事者の福祉というのを、法務省としては余り建前としての法律論のところに縛られずに進められることを期待したいというふうに思っています。
 経済政策についてお尋ねを申し上げます。
 まず、総理の御認識を伺いたいと思うんですが、日本経済新聞などとか政府の発表を聞いておりますと、景気はいいそうでございます。
 ことしの夏、私も、十三年、ああそうですね、安倍総理とは初当選同期でございまして、十三年国会議員をやらせていただいてきまして、選挙もなく国会もなく、こんなに長い期間があいたというのは十三年間で初めてでございまして、自民党の場合は総裁選挙があったのでお忙しかったんだろうと思いますが、地元の大宮と与野をかなりゆっくりと、ミニ集会を開いたり、個別にいろいろな方からお話を伺ったりとかする機会をつくることができました。約三カ月、地元を歩いていまして、景気いいよというお話をされたのは三人でございまして、どこが景気いいんですか、枝野さんという声ばかり聞かれました。
 さて、今の経済状況は、こういう聞き方をしましょう、国民の多くの皆さんは今景気がいいと……(発言する者あり)確かに、今後ろからやじが飛びましたが、やはり、もうかってまっせと余り人に向かって言う人はいないだろうと思いますが、しかし、枝野さん、どこが景気いいんですかという声、皆さんもお聞きになっていませんか。皆さんの周り、景気いいんでしょうか。
 総理、今の日本の経済実感、国民の皆さんが今日本は景気がいいと受けとめられている方が多数であると思っておられますでしょうか。
安倍内閣総理大臣 二〇〇二年から始まりましたこの景気回復は、割と息の長い景気回復であると思います。またこれは、いわば企業の活動、また家計部門等々においても、また輸出、バランスよく景気は回復をしているという全体の認識はそうではないか、このように思います。
 他方しかし、産業界個々においてはばらつきがありますし、地域間においてはそれぞれ違いもあるのも現実だろう、このように思います。しかし、例えば私の地元におきましても、山陰側はなかなかまだ感じとしては厳しいのは現実でございますが、山陽側においては、実際に仕事が多いという会社も大分ふえてきたのも現実ではないか。
 個々によって当然ばらつきはあるわけでありますが、全体的には、長いトンネルを抜け、力強い景気の回復軌道に乗っていると認識をしています。
○枝野委員 例えば、全世帯の消費支出というのを見てみますと、平成十三年マイナス一・七、平成十四年プラス〇・一、十五年マイナス一・〇、十六年プラス〇・四、十七年マイナス〇・四、ほとんど伸びておりません。平成十八年に入ってからの月単位で見ていきましても、一月のマイナス二・四を先頭にして、直近の七月でもマイナス一・三、個人消費、消費支出はずっとマイナスであります。
 勤労世帯の実収入、これは平成十六年だけプラス一・三でございましたが、平成十三年からすべてマイナスでありまして、ことし平成十八年に入ってからも、これは七月だけプラス五・九になっておりますが、六月はマイナス五・六でございまして、それまで全部マイナスです。
 よく分析をしてみますと、七月は世帯主の臨時収入・賞与のところだけプラス二五・九となっていまして、ボーナスは少しよかったんだなということがデータで実証されておりますが、昨年、平成十七年の十月と十一月、これもやはりボーナスなんでしょう、同じような世帯主の臨時収入・賞与のところがプラス四四・七とか六一・一と大きく伸びたんですが、そのときでも全体は〇・〇とかマイナス一・二程度。今回も賞与は二五・九伸びておりますが、全体としては、トータルすると五・九しか伸びていない。
 やはりこれも、これ以降果たしてプラスになっていくのかということは、かなり悲観的ではないかと見るのが一般的ではないだろうか。勤労世帯に限った消費支出は、七月で若干所得がふえたことになっているにもかかわらず、マイナス二・〇でございます。つまり、家計消費は全然伸びていない。
 この家計消費は伸びていないということについて、これは経済財政担当大臣でも結構ですが、この事実はお認めになりますか。
○大田国務大臣 今回の景気回復は、企業が厳しいリストラをする中での回復でしたので、企業から家計への波及はおくれております。しかし、昨年前半から少し雇用の潮目も変わってまいりまして、だんだん求人がふえ、正社員も次第に求人がふえてきております。所得も一時期よりは下げどまってきていると感じます。
 消費につきましては、少し夏も天候不順で足元が落ちておりますけれども、まだ堅調な状態を示していると思います。
○枝野委員 今私は客観的な、これは日銀でしたかの数字をお示ししてマイナスですねと申し上げているんですが、マイナスで堅調なんですね、この国の消費というのは。よくわからないんですが。
 今、リストラ効果ということを事実上お認めになったんですが、その前に、今、日本の景気は何がいいのかとちゃんと我々は認識しなきゃいけないと思います。私は、ある部分で小泉改革の、副作用もあったけれども、効果の部分も後で認めますが、一番最初にあるのは、実は円安ではないのかということを申し上げたいんです。
 日本のGDP全体に占める輸出の比率というのを例えば名目ベースでとってみますと、二〇〇六年の第二・四半期は一五・六となっております。これが、実は八〇年代前半の水準とほぼ同じ水準です。つまり、八四年第四・四半期が一五・三、現状が一五・六、GDP全体に占める輸出の割合ですね。逆に、これはずっとこの間U字カーブを打っていまして、一番低かったときが九五年第二・四半期で八・八、輸出がGDPに占める割合。
 これは、実は相関関係のある数字がございまして、円の実効為替相場円高か円安か。便宜上、一九七三年三月を一〇〇とした数字で見てみますと、今は一〇三・九、六年第二・四半期。その前の一番低かったときというのは、八五年第一・四半期の九〇・四でございます。そこからどんどん円の実効相場は上昇を続けて、九五年二月、一六三・三でピークを打って、徐々に下がってきて現状です。
 つまり、この間、円の実効相場が高くなるにつれて輸出が減っていって、円安が進むにつれて輸出が伸びていった。つまり、為替によって日本の輸出入が増減をしたことが、日本の経済が悪くなり、そしてよくなってきたことの大きな、一番とはお認めにならないでしょうが、大きな要因だと思いますが、総理、そう思いませんか。
○大田国務大臣 景気判断を担当している者としてお答えいたします。
 実質実効為替レートは、確かに八〇年代の水準に下がってきております。これが景気を支えているのは事実です。しかし、今回の景気回復過程の最大の要因は二つございます。一つは、企業が過剰設備、過剰雇用、過剰債務を解消して体質を強化したということ、それから二番目に、アメリカ、アジアの経済の好調です。
 一つ目の、日本企業が体質を強化したからこそ、アジアとアメリカの好況を生かすことができたというふうに考えております。
○枝野委員 大企業、製造業がリストラをすることによってコストを引き下げた、それは統計上もよく出てきております。労働分配率で見てまいりますと、この五年ぐらいで一五ポイントぐらい大企業、製造業の労働分配率は下がっております。当然、それに応じて従業員一人当たりの付加価値というものは大きく伸びておりまして、これが景気回復の一つの要因であるということは私も認めます。
 ですから、それを加速させたのが小泉改革であるんだとすれば、それはプラスの側面かもしれませんが、そのかわり副作用も大きいとは思います。大企業、製造業はリストラすることによって、つまり、給料を下げたり納入価格を下げさせたりすることによって利益を上げている、これはそのとおりでありますが、では、そうやって伸びた大企業、製造業のところからどうやって国内の本格的な景気回復につなげていくんでしょうか。
 つまり、今、輸出の競争力もつきましたということを大田さんはおっしゃいました。それもそのとおりでしょう。コストを下げた、労働分配率を下げて、給料をカットして、下請いじめをして、それで利益が上がった、輸出でもうけた。問題は、それをでは、どうやったら内需につなげていけるのかという問題なんです。
 輸出はたまたま好調でした。それは円安の効果もあった。今おっしゃられたとおり、この間たまたまアメリカやイギリスが景気よかった。でも、アメリカやイギリスが未来永劫景気いいわけではありません、中国が未来永劫景気いいわけじゃありません。日本の本格的な景気回復のためには、内需をしっかりと回復させなければならない。この間やってきたのは、労働分配率を下げて、コストを下げて、給料を下げて、下請をたたいて、その結果としてですから、国内にはお金が流通しない、お金がめぐらない、こういう構造になっているわけですね。
 総理、どうやってこれを回復しようとしているんですか。
○大田国務大臣 労働分配率の高さは、九〇年代、日本企業の構造問題だと言われてきました。それが今、大企業、製造業だけではなくて、非製造業、中小企業、次第に広がりつつ労働分配率が下がってきております。これが家計への波及をおくらせた大きな要因ではありますけれども、最近になりまして人手不足感も出ておりまして、雇用環境は改善しております。実際に失業率も下がってまいりました。
 これから先、企業と家計の好循環が生まれていくものと見ております。
○枝野委員 まさに、ここの認識が自民党民主党の一つの対立軸かなと思います。
 高度経済成長の時代は、強い企業を強くすることによって、そこが利益を上げてくれる、国際競争力を持ってどんどん強くなってくれる。そのことが国内にいろいろな形で波及をしてきました。例えば財政が豊かになります。利益を上げてたくさん法人税を払ってくれて、そのお金を当てにして、例えば借金をしてでも公共投資をしてそれが波及をしていくとか、そういう効果がありました。あるいは、リーディング産業がもうかる、その人たちが会社で、工場での給料が上がる、その人たちが地域で消費をする、そのことによって経済に波及をしていくということは、右肩上がり経済で日本がどんどん成長していく時代には、こうやってもうかっているところをもうけさせる、強いものをより強くするという政策で日本経済全体がよくなっていきました。
 しかし、日本がトップランナーに立ってから、きのうの菅さんの話でしょうか、四十年周期で、戦後の四十年を過ぎたぐらいのところから、世界の経済的なトップランナーになって以降は、従来のようにリーディング産業といっても、ばあんと伸びていくわけではないんですよね。リストラ努力などをすることによって、まさに安倍さんの言葉を転用すれば、筋肉質になることによって、つまり、労働コストなどを下げたり下請の納入価格などを下げたり抑えたり、こういう努力、価格を抑えるということによって、そのことによってもうかる、国際競争力を持つ。したがって、それが波及をしない構造がこの二十年間続いてきているから、時々バブルになったりバブルが崩壊したりということはあるけれども、日本全体の本格的な経済の回復になってきていないんではないか、私はそう思っています。
 まさに構造改革というのは、右肩上がり、高度経済成長の時代は、リーディング産業が頑張ればそれで全体が豊かになる。もちろん、リーディング産業は頑張ってもらわなきゃいけません。輸出で稼いでくれる企業は頑張ってもらわなきゃいけません。でもこれは、いろいろな自助努力で、まさに国際競争の中で頑張っておられます。
 問題は、そうやって稼いだお金が日本の国内できちっと流通する、一番言えば、消費にきちっとつながる、消費につながるためには国民一人一人の可処分所得が大きくなる、こういう政策をどうやってつくっていくのか、このことが重要であるというふうに思うんですが、大田さんはうなずいています。これは、基本的な経済の大きな方向についての考え方なので総理の御認識を伺いたいんですが、今の私の考え、見方に対して。
安倍内閣総理大臣 まず、輸出産業というか、今や、まさに世界の多くのグローバルな市場の中で勝ち残ることができなければ日本の中で勝ち残ることができないという中において、各企業において大変な努力をしてきた、こういうことであろう、こう思います。そしてまた企業においても、新たな設備投資を図り、また技術開発、またイノベーションに向けた開発を行い、まさに、新しい波に乗るべく努力をしているわけであります。そうして利益を上げている中で、雇用者に対してもこの利益が均てんされていくことが望ましいわけであります。
 そしてまたさらに言えば、新しい成長分野にもっともっと人が集中をしていく必要があります。成長分野は、例えばITの分野もそうでしょうし、医療分野もあるでしょうし、介護の分野もあります。こうした新しい成長分野にしっかりと人もさらに集中をし、またその中で、イノベーションによって生産性が向上していくことによって一人当たりの生産性が向上し、そして一人当たりの所得もふえていく、つまり、縮小均衡的な方向ではなくて、しっかりと成長し拡大していくことによって日本全体の経済を底上げしていくことが大切であろうと考えております。
○枝野委員 従業員の三分の二は中小零細なんですね。日本の消費を拡大させて国内消費を拡大させていくためには、ここの所得がふえない限りどうにもならないんです。しかも、半分は非製造業なんですよ。非製造業というのは、技術革新などによって、急にイノベーションでもうけがばっと出るというふうな世界ではないと私は思っています。
 そうした中で、むしろこの間、消費税や住民税、国民の消費を冷え込ませる政策を打ってきたのは間違いではないか、こうしたことを今後議論していきたいということを申し上げて、時間ですので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

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