カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの燻る日記

表現規制反対活動を昔していた。元エロマンガ家。元塾講師。現在は田舎で引きこもりに似た何か。

『ご臨終メディア』

森達也森巣博『ご臨終メディア』から以下抜粋。

 三菱自動車で不祥事があったとき、毎日のように日本各地で三菱の車が炎上したとの報道が続きました。なぜこれほど急激に事態が進展するのかと、不思議に思った人は少なくないと思います。要するに、これまでも頻繁にこの手のトラブルはあったけれど、報道されてこなかったということなんです。三菱の不祥事という前提となる事件が起動した瞬間に、事象に報道価値が付随する。
〔略〕ならばメディアは社会にとって有益なものを供給するためにあるどころか、社会の深い思考を抑制するために存在することになります。(44p)
森巣 メディアというのは、世論誘導をするものなのではないですか。桜田門霞ヶ関、永田町、あるいは大企業が何かをしでかすと「不祥事」です。他の人がすると「犯罪」。これは、明らかに言葉の置き換えによる世論誘導です。(64p)
世論調査といっても、誘導されたことを答えるだけ。(65p)
森巣 たとえば現在、日本全国に7000も国所管の公益法人がある。公益法人って、天下りの官僚を受け入れる機関のことです。〔略〕7000というのは、霞ヶ関所管のものだけですよ。これに地方自治体のものまで加えれば、目が回る数字です。〔略〕
日本というのは先進国で唯一、ゲーム賭博の場、すなわちカシノが公認されていない国です。なぜなのか、その理由ははっきりしている。自動車産業より大きい」年間30兆円産業のパチンコ業界があるからです。
〔略〕現在では〔パチンコは〕大っぴらに換金できます。
なぜなのか? それは景品を買い上げるシステムを警察が立ち上げたからです。パチンコの「景品買い」を警察がやっている。もちろん、誰も取り締まれません。〔略〕
森巣 ジャーナリズムはそういった権力の癒着と腐敗を監視する装置です。それにもかかわらず、ジャーナリズムは、権力にべったりとぶら下がり、大本営発表を広報している。(76-77p)
森巣 唯一の希望は、フリーランスのジャーナリストたちが主流から外れたメディアで発表するものですね。それらを繋ぎ合わせて、やっと大きな画が見えてくる。(79-80p)
森巣 本気で金正日体制をつぶすのなら、それほど難しくないはずです。日本で、法律通りにパチンコの換金を取り締まればよろしい。これでかなり、あの体制はダメージを受けます。何も新しい法律を作れと言っているわけではない。現在ある法律を、その文面通り適用してくださいというだけです。でもそこには警察利権が絡むから、誰も何も言わない。(95p)
森巣 法治国家という概念の基本は、「法のもとで万人が平等である」というものです。ところが現実は、法の運用はきわめて恣意的になっている。
好例は、一連の警察裏ガネ疑惑のときでした。〔略〕
日本全国津々浦々の警察署で裏ガネが作られていたのは、すでに明らかになった。そのうち公的にそれを認めたのが、北海道警、高知県警、福岡県警などの13都道府県で、これだけは飲み食いした金だから、と横領した公金を返済した。
ちょっと待てよ。警察の裏ガネが作られる過程で、どれだけの犯罪が重ねられたか?
〔略〕署員は偽造領収書に署名捺印させられたわけです。これが虚偽有印私文書作成、同行使。これだけで五年以下の青べべ(懲役刑)です。書かせた奴には強要罪を貼り付けられる。〔略〕会計課では、虚偽有印公文書作成、同行使、詐欺、公金横領が行なわれた。これでできた裏ガネは、一部は警察庁に上納、その残りは、所轄でいえば課長職以上に配られた。おそらくもらった連中は、雑収入として税金申告していないと思う。すると脱税という反国家的犯罪。おまけに公務員には、不正を見つけたときには、それを告発しなければならない義務(「地方公務員法」「国家公務員法」)もある。
〔略〕合計八つの犯罪がほぼ日常的に全国の警察署で行なわれていたことを、警察は公的に認めたわけです。〔略〕
しかし、一人でもパクられましたか? まだ誰もパクられていない。みんなお巡りさんを続けている。一方、〔略〕立川の反戦ビラ入れ事件では、郵便受けにビラを入れただけなのに、七五日間、檻の中にしゃがまされた。これが「法のもとで万人が平等である」ことなのでしょうか。なんでやねん、おかしいやんけ(笑)、と北海道新聞高知新聞も続けるべきだった。
権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する。
その権力の腐敗を、国民の代わりに監視するのが、〔本来の〕ジャーナリズムの役割なのです。(156-157P)

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