迷惑をかけることを恐れるな
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私は嫁に対して、つい、「騙し討ちのように結婚して御免」としばしば言ってしまう。
私と老母の関係の悪さに嫁の人生を巻き込んでしまったことには、「申し訳ない」という気持ちがある。
ただ、これは俺がメタレベルでものを見過ぎる悪癖で、そこまでメタレベルで見なければ、俺は今の嫁を嫁としてほしかった。嫁は聡明な人だということは会った瞬間に判った。私と老母の関係の悪さにおいて嫁に迷惑をかけることになっても嫁は聡明さでどうにか処理できる人だろうと期待した。その期待は今も継続している。
なので冒頭の言葉はむしろ嫁に対し発すべきではない。うん、そこまで一応頭の中で筋道はつけられるんだけど、それでもムダにここぞというところでムダに謝罪してしまうんだよね、いやその謝罪自体がむしろ罪悪なのだろう。
我が友人たちで結婚を躊躇している人たちは多数いるようだけど、自分の人生にのしかかっているカルマに人を巻き込むことを、恐れないでほしいと思う。
私は運よく、嫁を得た翌年に子を授かった。私は運がいいが、自分の人生に嫁を巻き込ませる決断をしなければ、この子を授かることができなかった。だから、人を自分の人生に巻き込ませることを恐れない方がいいと思う。サイコロの目がどう出るかはつまるところ私たちには判らない。